第50話 登山
ランベルはテントを出ていくと一人でリリアンはお茶を飲んでいる。しばらくすると会議を終わらせた
「本来なら、もう少し進むはずだったのに…」
「兄様、文句を言っても仕方がありません。彼らの動きは私たちが予測できるわけではありません」
「そうだな、申し訳ありません公女様。テントはボクと一緒に使いましょう」
「はい」
「では、私はテントを張る手伝いをしてきます」
「わかった」
水華はテントから出ていくと朱炎はリリアンの反対側に座る。すると
会議では、どのようにして邪龍を空に飛び立たせないかを議題にして話し合ったという。多少弱らせなければならないため、多少の犠牲がでることを予測する。
「公女様は我々がお守りしますので、後方に下がっていてくださいね」
「そんなに前に出ませんよ。私だって死にたくありませんし」
リリアンは朱炎を見つめると朱炎も少しだけ表情が緩くなる。外が暗くなり、リリアンと朱炎は一緒に食事を取る事にする。テントの前には護衛として爽呪が立っていてくれているらしい。
二人は食事を終え、ベッドに入り眠りにつくことにする。しかしリリアンはあの桜の木のことが気になってしまい、寝れなくなる。
朱炎はあの桜の木が好きではないというのに、あの木を切るどころがそのままにしている。なにかあの木には思入れがあるのかもしれないと考えてしまう。
「あの、朱炎様」
「何でしょうか、眠れませんか??」
眠っていたはずの朱炎は体を起こし、目を擦りながらリリアンの声に耳を傾けてくれる。リリアンは落ち着かない様子であの桜の木のことを訊く。
「そうではなく、ただ…あの桜の木が気になって」
「あの木のことですか…。公女様が気になってしまったのなら仕方がありません。お話ししましょう」
朱炎は静かに話してくれる。あの桜の木は、相棒と呼べる人と約束をした木でもあるらしい。その相棒は、前国王の時代に騎士王とも呼べるほどの剣豪の男。彼は邪龍討伐の出撃の際、朱炎と約束をしたらしい。呪いが解けたら、手加減無しで戦ってほしいと、あの桜の木の下で約束をしたらしい。
しかし、その男はいつまで経っても帰ってこない。帰ってきたのはボロボロになった前国王と数名の兵士のみ。朱炎は前国王に聞く。彼はどこにと。前国王は自分たちを逃がすためにと、一人山に残ったという。それは前国王の嘘だったということに、朱炎は気が付かずにいた。朱炎は彼の帰りを待ち続けた。戻ってきたら何を話すのかを考えながら、来る日も来る日も桜の木の下で。しかし朱炎がどれだけ待っても彼は姿を見せることはなかった。
「最終的に、ボクもあきらめて待つことを止めたんです。彼は、山で死んだんだって。彼とは相棒のようで、師匠のような存在だったために、父は言えなかったのでしょう。だから、あの桜の木に向かうと彼のことを思い出してしまうのです」
「それで、嫌いなのですか?」
「確かに嫌いです。あの桜を見ると、いつもあいつがいるような気がして…あっ!すみませんしんみりさせてしまいましたね!もう寝ましょうか!」
朱炎は紛らわすように布団を被ると微かに震えているのが見える。相棒である彼があの邪龍によって殺されたことにリリアンも心苦しくなる。
翌朝、リリアンたちは馬に乗って山を登っていく。まだ頂上までかなり時間がかかるような気がする。馬に乗っているだけだというのに、疲れてきてしまったリリアンは、朱炎に休みたいと伝えると全軍に止まるように指示を出す。ここまで体力がないとは思っていなかったリリアンは全ての人に申し訳なく思う。
「すみません…体力が無くて」
「ご安心を、そんなの気にする必要ありませんよ」
「すぐに体力を戻しますので」
「無理をなさらぬよう、お願いしますね」
リリアンはテントで息を整えていると隣に気配を感じてランベルがいることに気がつく。
「ランベルさん、また来たのですか?」
「もちろんですよ。公女様、お話ししましょう」
嬉しそうにするランベルにリリアン笑顔で談笑をする。ランベルは世界の素晴らしさを知らないと言い、世界を知りたいらしい。そう言われたリリアンは自分がいる帝国のことを話す。面白いこと、楽しかったこと、そして残念なことを話す。真剣に聞いてくれるランベルに聞き上手だと感じる。紺色の髪は風によって揺れ動いており、どこか懐かしそうな顔をもする。
「じゃあさ、朱炎って…元気なの??兵士の寮に中々来てくれないからさ!」
「元気ですよ、今回の邪龍討伐も、率先してくれています」
「そうか、死なないと…いいんだけどな」
そういうとランベルは帰るといって霧のように消えてしまう。前はテントから出て行ったが、今日は消えるようにいなくなるとは思わなかった。
するとテントの入り口から朱炎が入ってきて出発をするということを伝えにきてくれる。リリアンは頷いて立ち上がるとランベルの言葉を思い出す。ランベルは兵士だと言っていたが、朱炎はそんなに兵士たちの元へ行っていないのだろうかと考える。
出発したリリアンたちはまた山を登っていく。足元に岩が向き出ているため歩きにくい状態になってくる。朱炎はこのままでは危険だと感じ、リリアンたちは馬から降りて歩くことにする。
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