第48話 攫った理由
「兄様は…現在、毒により命が短いのです」
「毒⁈」
水華は
その命令が朱炎に毒を盛ること。メイドは初めはバレないようにしていたが、毒の量を増やしてしまい朱炎に毒を盛っていたことが
そのメイドは処刑したが王妃がやらせたという証拠がどこにもないため、彼女には監視が付く形で監視することになった。しかし毒を飲んだことには変わりないため身体にはまだ毒素が残ったまま、医師でも対処できないらしい。朱炎は毒耐性が男の姿だと発動させることができるが、女の姿では毒耐性が発動しない。
「めんどくさい体ですね…」
「それを言わないでください…」
「とにかく、朱炎様は毒によって弱体化していて、早く邪龍を祓わないと死んでしまう…と」
「はい、なので誘拐という形になってしまいました」
「理由は分かりました。でしたら早くに対処しましょう。明日にでも邪龍が住んでいる場所に向かった方がよろしいですね。私も早く帰りたいので」
「では、姉様と明日相談しましょう」
二人は眠りに付き、夜明けと共に目を覚ます。水華は身支度を整えて食堂に早くに向かっていく。リリアンはメイドたちによって着替えさせてもらい、食事をしに食堂に向かう。
「おはようございます、公女様」
「おはようございます朱炎様」
「水華から聞きました、ボクのことを気遣ってもらいありがとうございます」
「いいえ、私も早くに帰りたいので。お互い様です」
「水華と相談しましたが、昼食を取り次第出発いたしましょう。それと、公女様は馬に乗ることができますでしょうか?不安でしたらボクと一緒に乗っていきましょう」
「ありがとうございます。私は少し前まで乗馬をしていました。ですがとある理由で乗れていなかったので感覚を取り戻しがてら、一度馬に乗せてください」
「わかりました。後で一緒に乗馬場に向かいましょう」
「私はだめですか????」
「なら水華も一緒に来い。どうせ暇なんだろう…」
「やった~~~~~!」
リリアンは食事を取ると朱炎と一緒に乗馬用の服に着替え、乗馬場に向かう。一足先に向かっていた水華は華麗に馬に乗りこなしている。
「乗馬楽しい!!!!!!!!」
水華の馬はどことなくほかの馬より体が大きく感じる。連れてきた馬をリリアンの前に整列させて朱炎はリリアンに馬を選ぶように言ってくる。
「公女様、ここにいる馬たちは全て乗馬慣れしている名馬です。お好きな馬をお選びください」
多種多様な馬たちにリリアンはどうするかを考える。その中に居る少しだけ怯えた反応をしている灰色の馬に目に入る。リリアンはその馬に触れると突然震えが収まりリリアンに頭を寄せてくる。
「ふふっ、かわいいね」
「その馬でよろしいですか??」
「はい、この子にします。お名前は…」
「フェルンです。雄馬です」
「フェルン…よろしくね」
リリアンはフェルンに触れるとフェルンもうれしそうな反応を見せる。馬と会話をすることができるのであれば、どれほどうれしいのかが分かるはずだというのに。
馬具を付けられたフェルンはリリアンの前で止まりいつでも乗れるようになっている。リリアンはフェルンに跨り、軽く歩かせる。隣に朱炎が馬に乗って、いつでも助けを呼べるようになっている。
「お上手ですね」
「ありがとうございます。記憶が無いのに、なんか身体が覚えているって感じで…」
「そうなのですか???」
「公女様うまいですね~」
「水華様」
水華はリリアンと並行するよう並ぶ。挟まれたリリアンは真ん中でド緊張してしまう。リリアンはフェルンを走らせると二人を置いていく。リリアンは馬を走らせるのは初めてのはずなのに、なぜだか慣れている。
確かリリアンは乗馬を趣味の一つにしていた。そのためなのか、馬に乗ることに慣れている。もしくはこの馬が乗りやすいのかもしれない。
「乗りなれていますね!これなら大丈夫そうです」
「そうですね」
リリアンと朱炎は一緒に走り、巨大な大樹が見えてくる。一本だけ生える大きな木にリリアンは見つめ続ける。
「あれは千年桜です。もしよろしければ、行ってみますか?」
「はい!!」
リリアンと朱炎、水華はその千年桜の元へ向かうと一度休憩することにする。まだ桜が咲いていないところを見るとまだ時期ではないのだと感じる。
「これは、一度咲いてしまうと枯れてしまう木だと言われています。東国ができてから植えられたものだと分かりましたが、どのような桜なのかは存じ上げません」
「私も知りませんが、もしかしたら永遠に咲いてくれないかなって思ったりします」
水華は嬉しそうに笑うが、朱炎はあまりうれしそうな表情をしない。この桜に嫌な思い入れがあるのだろうかと思ってしまう。
「朱炎様は、この桜のことが嫌いなのですか??」
「いえ、そういうわけでは…」
少し気まずそうな表情をする朱炎は一足先に馬に乗って戻って行ってしまう。なぜあの表情をしたのか理解できないリリアンは走り去っていく朱炎を見つめ続ける。
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