第47話 水華の部屋

 リリアンは持ってきてくれたおにぎりをゆっくり食べて腹を満腹にしていく。


「ありがとうございます水華すいか様」


「いいえ、かなり集中しておりましたので、お声をお掛けするか悩んでしまいましたが、夕食になってもなかなかいらっしゃらないので、おにぎりをお持ちしました」


「ありがとうございます」


「ところで、公女様はを知っているのですね」


「ど、どういう意味ですか???」


「いえ、自分が何も言っていないのに、普通に食べられるので…なんだか食べ慣れているような気がしまして」


 にっこり笑う水華にリリアンは思わず頭をフル回転させる。前世で遅くまで勉強していた自分におにぎりを持ってきてくれていたので、思わず普通に食べてしまった。リリアンはどう返答するかを考えるとあることが浮かぶ。


「そ、それは…!私が東国のことを調べていたからです!!!!」


「え?」


「たまたま調べていた書籍に書いてあったのです!!!!おにぎりという食べ物と食べ方を!!!もしも東国に訪れることとなってしまった時に、恥をかきたくないので!!!」


 慌てて答えたリリアンは、バレないことを祈る。水華は少しキョトンとした顔をしたが、すぐに笑顔に変わる。


「そうでしたか、これは失礼いたしました。公女様は勉強熱心なのですね」


「い、いえ。それほどでも…」


「では、残りは私の部屋で見ましょう」


 水華は指を鳴らすと本を浮かせてそのまま持って行ってくれる。リリアンはその後を追いかけると水華の部屋に入る。中に入ると水華はしっかり鍵をかける。外からこじ開けない限り開かないようにする。


「公女様、よろしければこのベッド使って下さい。私はソファーで寝るので」


「水華様!!!!この部屋は水華様の部屋です!!!ソファーに寝るのは私が!!!!」


「ご心配なく、私の部屋のソファーはベッドのように広いですから」


 水華は奥にあるソファーに寝転ぶと本当にそこで眠る。リリアンは窓から外を見つめると裏庭の庭園が目に入ってくる。鏡のように澄んだ大きな池には月が反射して映っている。


「あんな感じの庭、いいな」


 リリアンは見つめていると池に黒い何かが一瞬だけ映りこむ。顔を上げると一本角が生えたカラスが飛び回っている。その姿にリリアンはすぐにカリウルだと気がつく。カリウルもリリアンに気がつくとリリアンの前に姿を見せる。リリアンは少しだけ窓を開けるとカリウルはその隙間から中に入る。


「カリウル!!」


「お久しぶりっすね公女はん!元気そうすっね!!」


「あなた、海を渡ってきたの????」


「当たり前っすよ、ですが中に入るのに苦労しましたよ〜強力な結界がありやしたから」


「それ…多分この国の盟主さんの結界よ…」


 リリアンはカリウルを撫でるとその結界を抜けて、やってきたくれたことにホッとしてしまう。リリアンはカリウルを撫でるとそっと目を閉じる。目を開けると緑色の光を出した、カリウルがリリアンを見つめる。


『えっと…公女様、オレの声聞こえますか????』


「ダンゲルさん!!!」


『あんたがいなくなったと公爵家大騒ぎだ!!帰って来れないのか???でも帰れないよな…東国だし遠いもんな』


「私が東国にいるってどうしてわかったのですか⁈」


 ダンゲルはリリアンにギルが教えてくれた事を話す。そのことを聞いてリリアンは東国の呪いを解放するまで帰れないことを話す。


『マジですか…本当に帰れないんですか???』


「ごめんなさい、でもお父様とお兄様に伝えてください。私は少ししたら帰ると。この国の盟主との約束があると、お伝えしてください!!」


 リリアンはダンゲルに伝えるとダンゲルは承諾してくれる。すると背後から気配が感じて振り返ると水華はカリウルを撫でる。


「我が姉…いいえ兄様の罪をお許しください」


『誰だ????!!!!』


「東国盟主の妹、水華と申します」


『妹…にしても男っぽい声だな…』


「東国の呪いにより、男なっておりますが正真正銘、女です」


『そうなんだ…』


 声からしてダンゲルは動揺しているのがわかる。しかし水華が起きていることに気が付かなかったリリアンは水華のことを見つめる。


「少しだけ、公女様をお借りします。明確な日時は私もわかりませんが、必ず帰すことをお伝えください」


『まあ、あんたらにも事情があるのはわかったよ。一応伝えておくよ、だから無事に帰ってきてくれよ???ギルも公女様にお礼が言いたいみたいだからさ』


「もちろんです。では、ダンゲルさん…よろしくお願いします」


『はいよ』


 ダンゲルとの連絡が消えて、カリウルは元に戻る。カリウルは空に飛び出し、帝国に帰っていくのがわかる。リリアンは窓を閉めると水華は床に正座をして座り、申し訳なさそうにする。


「公女様、申し訳ございませんでした…」


「水華様!!面をお上げください」


「いいえ、今回の件は我々が悪いのです」


 土下座を見せる水華にリリアンは水華に理由を聞く。ずっとこの国に来てから気になっていたこと。


「では、お聞かせください。どうして誘拐という形で連れ去った理由を。返答次第では、許します」


「私たち兄妹には、時間が無いのです」

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