第46話 祓いの女神

 リリアンは少し恥ずかしく思いながら、二人に伝えると朱炎しゅうえん水華すいかはお互いに顔を見合わせながら頷く。


「公女様がそれでよろしいのでしたら、構いませんよ。いいですよね?姉様」


「うん、公女様がよろしいのならば」


「よかったです!」


「では、まずは自分の部屋からでよろしいですよね?姉様」


 水華はリリアンに抱きついていうと朱炎は少しだけ不服そうな表情をするが、仕方がないと思いながら朱炎は頷く。水華は嬉しそうな顔をするとリリアンも少しだけ笑顔を見せる。

 最初は朱炎からだと思っていたリリアンからして、驚きを感じる展開となる。しかしよく考えると最初に目を覚ました時は朱炎の部屋だったような気がして水華の部屋でもよかったような気がする。


「そういえば、明日はお祭りがありますね。よろしければ私と…」


「それはダメです!!」


「姉様⁈いいじゃ無いですか!!!!」


「明日は、このボクと一緒に行くのです!!!!」


「公女様〜〜〜〜〜!!!!」


 寂しそうな顔をする水華に心を許してしまいそうな気がするリリアンだが、なんとか我慢をする。いくら元々女性だからと言っても、この国では男の姿をしている水華と一緒にいることだけはしたくない。

 振られたことに水華はショックを受けた顔をするが、背後で勝ち取ったかのような反応をする朱炎。その姿が見えていたかのように二人はまた喧嘩を始める。そっと爽呪に連れて行かれたリリアンは昼食を取れるように支度をしてくれる。

 昼食が終わるとリリアンはこの国のことを調べたく思い、爽呪に頼んで図書室に連れて行ってもらう。


「では公女様。何かありましたらいつでもお呼びください」


「ありがとうございます」


 部屋の中で一人でいるとなんだか落ち着いてしまう。それと同時に家が恋しく感じ、いつもいるメリーもウルファもいないことにも寂しさも感じる。


「みんな、元気かな…?」


 リリアンは朱炎が言っていた祓いの女神について気になってしまい、それを探しに図書室に入った。この国のことが書かれている書物を片っ端から探し回り、たくさんの本を読みまくる。その中に祓いの女神、精霊についての伝書を見つける。その伝書はある聖女と魔王のことが書かれている。

 大昔にこの世界に闇を落とした悪逆非道な魔王は世界を破壊し尽くした。人々は死に、世界は血で染められた。しかしあるところに女神の加護を授かった聖女が姿を見せる。聖女は神聖な力を使い、魔王の攻撃を食い止め続けた。

 しかし破壊をし続ける魔王の力は強大で、聖女のみの力では魔王を食い止めることができずにいた。その時、聖女の命が尽きかけた時、光の精霊が姿を見せたという。その精霊は聖女に力を与え、見事魔王を打ち倒した。魔王から闇が討ち払われ、魔王は聖なる心を取り戻したという。

 聖女と魔王はお互いの手を取り合い、共に生きる道を選んだという話。その話を読んでリリアンは思わずその書物を引きちぎりたくなる。

 この話は前世で親友に薦められたR18の小説の物語。このあと聖女と魔王は体を重ねることに頭が真っ白になる。


「なんで、こんな世界にこれがあるのよ…!」


 リリアンは祓いの女神のことがわかったが、なぜ魔王の存在があるのだろうと考える。確かに魔王は存在するはず。魔王のことはまだほとんど考えていないためどんな存在なのかはわからない。少しだけ作ったが、魔王はリリアンと魂の契約をしてヘリンを殺そうとしたが、アーサーの光の魔法によって、魔王との契約が消滅した。そして、リリアンは拘束され、貴族の墓場と呼ばれるーパルウェルーへ送られることとなった。


「いずれ、魔王とも出会うことになるんだよね…」


 リリアンは考えているとアルディンに聞きたいことがあり、リリアンはアルディンを呼び出す。


「ねぇ、アルディン。ずっと気になっていたけど、アルディンは祓いの女神で間違いないの???」


「そうですね…半分正解で半分違います」


「どういうこと???」


「その物語自体は嘘ではないと言えます」


「そうなの??」


「しかし、生まれ方が私と違いますけど。その伝書によれば、その精霊は女神が創ったとなっています。そこは私と違いがあります。私は精霊王が生み出した精霊で、伝書では女神が生み出した精霊となります」


「それじゃあ!!祓いの女神とは違うじゃん!!!」


「ですが、私にも祓いの力は備わっていますので、邪龍を祓うことはできます」


「できるんだ…」


「ですが、その伝書通りの祓い方はできませんが」


「それって、ちゃんとできるんだよね???盟主の朱炎さん、すごい期待しているみたいだからさ…」


「それはご安心ください。ちゃんとやりますので…多分」


「多分って言っちゃってるじゃん!」


 先が不安になって、邪龍のことを理解できるようにリリアンはあるだけの書物を読み漁るようにする。いつしか時間が過ぎてしまい、リリアンは夕食の時間になっているのを、知らずにいた。

 すると横からアルディンが突っつき、時間がかなり進んでいる事を知らせてくれる。


「嘘!!!もうこんな時間!!!!夕食に間に合わない…」


 すると扉をノックする音が聞こえ、返事をすると水華がリリアン用の軽く食べれる食事を持ってきてくれる。


「公女様、お食事持ってきましたよ」

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