第45話 影の部隊

 朱炎しゅうえん水華すいかは二人で何かを話しているがリリアンには聞き取れ無い。


「あの…」


「おっと、失礼しましたね。兄…いや姉様、もう少しですね、俺らの解放は!」


「だが、母上には何も言うなよ?ボクが公女様を誘拐してきたのがバレてしまうから」


「もちろんです。あ、だとしたら、公女様どこで寝るの??夜になったら母上は点検に来るよ??」


「そんなの、ボクの部屋でいいじゃないか」


 自信満々に言い放つ朱炎に水華はゴミを見るような目線を朱炎に向ける。


「は????ふざけてんの??姉様、これから男に戻るんだよね???男の寝床に入れるなんてどうかしてるよ…!!!」


「…じゃあ、まだ男のお前の部屋に入れる訳にはいかないぞ。何するかわかんないもんな〜〜〜〜(怒)」


「いや、あれは…母上が仕組んだやつですよ…」


 慌てる水華だが、朱炎は怒りを見せている。その様子をリリアンは慌てながら見つめる。


「いやいいんだよ〜〜〜ボクだってそんなに怒っていないんだからよ???」


「ブチギレてるやん!!!!!!!!!!!」


 水華は大急ぎで走って行くとその後を朱炎が追いかけていく。置いて行かれたリリアンはどうすればいいのかわからずにいると、後ろに爽呪そうじゅが待機している。


「公女様、あの状態になった朱炎様はなかなか帰ってこないので、この館を案内しましょう」


「ありがとうございます」


 リリアンは爽呪の後を歩いていくと遠くから朱炎の怒鳴り声が聞こえてくるが、無視をしておく。爽呪に案内され、中庭、食堂、会議室など色々な部屋を案内される。

 最後には離れた場所から離れにある宮を紹介してくれる。離れにある宮はどことなく古く感じ、昔からあるような面影も感じさせられる。


「公女様、あの離れには決して近づかないでください」


「どうしてですか????」


「あの離れには、朱炎様と水華様のお母様が住んでおります」


「どうして離れに暮らすようになったのですか?」


「彼女を閉じ込めたのは、お二人のお父様…前国王様です」


「えっ?????」


 爽呪はリリアンを誰も寄り付かないような部屋に入れて、隠れるように話す。爽呪は王宮で働いている使用人のみが知っている話。前国王と王妃はこの国の外で出会い、二人はそこで朱炎、水華を産んだ。前国王は呪いのことも話し、王妃はそれを受け入れたがいざ目の前にすると戸惑った表情をしたという。

 次第に慣れてもらえると思っていたが、慣れるどころが朱炎と水華を嫌うようになり、いつしか離れにある宮に居座るようになってしまったらしい。

 長い年月が経ち、前国王は朱炎を盟主として任命し、この世を去ってしまった。それを始まりとして王宮では悪夢のようなことが起こってしまった。それが朱炎を王妃が殺害しようとしたと言う。

 王妃はいつしか王族の呪いを忘れてしまい、国王になる朱炎が女性と思ってしまい、国王に相応しくないと言うようになってしまった。朱炎は王妃を離れの宮から出ないように命令を出し、彼女を閉じ込めることができた。しかし夜な夜な彼女は抜け出し、この王宮に出入りしているらしい。


「では、あの宮には…」


「もしかしたら、公女様を襲ってしまうかもしれません。では、最後の場所に行きましょう。我が部隊を紹介しましょう」


「部隊…?????」


 リリアンは爽呪について行くとある訓練場に到着する。そこには忍者のような姿をした男女が訓練をしている。一人の女性が爽呪の存在に気が付くと、全員に声をかける。


「全員!!!!手を止めろ!!!!団長のお越しだ!!!!!」


 全員は敬礼をするとそっと微笑み、敬礼を辞めさせる。


「全員、訓練ご苦労、今日は紹介したい人がいる。リリアン・ネルベレーテ公女様だ。我らが主君の呪縛を解き放つために来てもらっている!!」


 そのことに全員の歓声が上がり、拍手をしてくれる。リリアンは少しだけ頭を下げると爽呪は彼らのことを紹介してくれる。


「公女様、彼らはこの東国の極秘戦闘部隊ー影の部隊ーです」


「影の部隊?詳しく言うとどういう人たちなのですか??」


「彼らは普通に言ってしまったら騎士団とよく似ております。ですが、彼らは暗殺や情報収集を主にやります」


「暗殺…ですか???」


「はい、ですが戦争となれば我々は有利です。ここに居る者全てが人を殺すのに慣れているのです」


「え??!!」


「その説明、ボクがするつもりだったのに」


 リリアンは上の方から声が聞こえ、顔を上げると朱炎が戻ってきたようで二階ぐらいの高さから降りて来る。彼女の登場は目の前に天使が姿を見せたのようにも感じる。


「それで、どちらのお部屋になさるか決まったのでしょうか???」


「いや、どうするか決まらないからさ。公女様自身が決めてもらってもよろしいでしょうか???」


「私が、ですか???」


 そのあとに水華がやってくると二人は怪我をしているところがない。ただの口喧嘩だったのか、殴り合いの喧嘩をしたがお互い殴れずになったのかはわからない。

 だが、どちらの部屋に寝るなんて考えていないリリアンはどうするか考えるが、何と答えていいのか分からず、戸惑ってしまう。ここでどちらでもと答えてしまうとまた喧嘩になってしまう。

 どう答えても喧嘩が起こりそうになり、頭を悩ませるが耳打ちをするようにイフの声が耳に響く。


『だったら、最初は盟主様と寝て、次は水華様と寝ればいいじゃないですか。それで、どっちが心地よかったらこれからそっちで寝ればいいじゃん!』


「ーイフ…あんた意外といいこと言うじゃん!!ー」


「あの…!!すぐに決めることができないので…一度お互いの部屋で寝てもいいですか⁈」

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