第41話 調査

 ハンスに呼ばれたガクドはハンスの執務室に訪れる。


「失礼します、父上」


「呼び出してすまないな、ガクド…お前あのオークション会場にいたな??」


「なんのことですか??」


「とぼけても無駄だ。お前の魔力の跡が裏口にあった。お前、あの獣人の子供とあの令嬢に、なにか関係があるのだろう?」


 ガクドは中でのことはわからないが、その令嬢がリリアンだと言うことは理解している。だが、ここでリリアンだと言えば、リリアンも処罰されてしまう。ガクドは処罰されるのは自分だけで構わないと思い、リリアンのことを伏せてあの出来事のことを話す。


「父上に嘘はつけませんね…。確かに自分はその場所にいました。あの獣人の子供はギルドマスターの甥です。彼が甥を取り返すためにと協力しました」


「あの令嬢は??」


「彼女はギルドマスターの協力者の娘です。彼女も言っていました。『ネルベレーテ公爵がいるとは思わなかった』と」


「俺を知っているのなら、この国の娘だな…。だが、あのような娘を見たことないな…誰なんだ??」


「どこの家紋の娘なのかは、自分も知りません」


「ガクド…」


 ハンスは追求するようにガクドを睨む。このままリリアンのことを話せば、このまま解放されるかもしれないが、兄として守りたい思いがある。


「ガクド…あの娘は、リリアンだろ???俺が娘を見間違えるはずがない」


「なら、どうして父上があの場所にいた理由を話してください」


「わかった…実はな…」


 ハンスはリリアンが旅立って、屋敷に結婚の申し込みが届き、ガクドも屋敷に向かった時、屋敷が慌ただしい時に皇宮から…グレン本人から手紙が届いた。それは闇のオークションに幻獣種が商品として出される情報を獲得したという話。

 ハンスはそれに頭を痛めることとなった。これはハンスも協力することを意味する。手紙が届いた後にグレンは屋敷を訪れていた。


「公爵、突然の訪問失礼します」


「第二皇太子様にご挨拶申し上げます。どうぞ中へ」


「失礼する」


 ハンスの執務室に入り、グレンはソファーに座るとお茶を出される。ハンスも座るとグレンはお茶を一口飲む。


「公爵、手紙を見てくれた通り、協力をしてもらいます」


「わかっています。しかし、皇太子自ら動くとは、驚きました」


「今回の件…どうやら家が関わっています」


 そのことにハンスは動揺を見せる。思わず扉の方を見つめるが誰にも聞かれていないことにホッとしてしまう。

 ヴェノローム伯爵はカザリーンの家族の家紋。彼らが関係しているとしたら、彼女も同じように関係している可能性もある。彼らには黒い噂があるため、気にしない訳にはいかない。だが、彼女は長いこと家族とも連絡を取っていない可能性が高いため、今回は関係していないと思いたい。


「ここで、話して大丈夫でしょうか??」


「案ずるな、あらかじめに防音魔法をかけている。今回の話は外部に漏れたら大変なことになる。それに、我が母も…」


 グレンの母親、確かに彼女もヴェノローム伯爵との繋がりがある。カザリーンのことを知ったのも、皇妃様からの紹介である。なぜあのような異常者の伯爵家と繋がっているのかは誰も知らないが、どこかに繋がりの糸があることを確信している。


「話を戻すが、あのオークション会場の所有者はイルディン男爵だと言うことは上がっている。爵位がなかった男が突然爵位を手にして、金持ちになっているのだ。自分も気にはしていたが、調査をなかなかできなかった」


「皇太子であろうお方が、調べられないとは…。理由は分かっているのでしょうか?」


「皇帝だ」


 その答えにハンスは恐怖を感じる。皇帝が今回の奴隷オークションに関係しているとしたら、皇帝が法律を無視していると推測できる。


「そのため、調査ができずにいた。だが、今回幸運がこちらに回って来た。皇帝が、病によって倒られた…!」


「そんな!!!よろしいのですか????」


「父上が病で倒られているのなら、父上の許可を求めずに調査ができる」


 グレンは手を握りしめて今回の奴隷オークションを捌くことが出来る。そして、行方不明になった子供たちを助け出すことも出来る。


「皇太子殿下…」


「そのために、ネルベレーテ公爵。力を貸してほしい」


ーーーーーーーーーー


 ハンスは話し終わるとガクドもあの令嬢のことを話す。今回はリリアンが協力をしない限り、ギルを助けることができなかったと話す。


「それで、そのギルという獣人の子供はどこに…」


「彼は、ギルドマスターの甥です。どこにいるのかをいう訳にはいきません」


「あの少年の母親が皇宮に来ていると言っても??」


「少年の母親は、もう死んでいます」


「証明はできるのか???」


「私が証明します!!!!」


 二人の部屋にリリアンがやってくる。ボーマンはリリアンを止めようとしていたが、止められなかったよう。


「リリアン!!!!」


「リリアンちゃん⁈証明ができるとは、どういうことだ????」


「あの子の記憶を見ました。あの子の母親は…あの子の目の前で…死んでいます」


「なんだとッ⁈」


「リリアン!!それは本当なのか⁈」

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