第26話 母の残した精霊

 リリアンは大量のマナを使い、呼び出した精霊は金色に輝き、まさしく光の精霊らしい姿をしている。


「それは…!!!ネイレーンの!!!!!」


 ハンスは声を上げるとネイレーンのことを思う。彼女がリリアンの救世主になってくれたことに感謝をする。


「えっと、名前ないと不便だよね?」


「いいえ、主人様あるじさま…私には名前がございます。私はアルディンと申します」


「アルディン、それじゃあこれからよろしくね」


「はい、主人あるじ様。私があの魔人を倒してご覧に入れましょう」


「う、うん。よろしく…」


 アルディンはどこかやる気に満ち溢れており、リリアンは焦りを感じる。学長を殺さないことを祈るばかりである。


「イフリート、力を貸しなさい」


「言われなくても、お力をお貸ししますよ。王の付き人さん」


 アルディンは鼻で笑うと二人は戦闘モードに入る。イフはネクロマンサーを学長から距離を取らせるために炎で学長とネクロマンサーの間に炎の柱を生み出す。二人は慌てて離れるとネクロマンサーの周りに炎の円陣を生み出す。

 ネクロマンサーは暑さでふらつくが、イフは構わず炎魔法を放つ。


「黒魔法に、敵うと思っているのか⁈」


「ただの炎ならな…だが、これは業火の炎。黒魔法なんて相手じゃねーよ!!!!」


「業火の炎だと…⁈死者を焼く炎じゃないか!!!!」


「業火に焼かれて死ね!!!!!業火の黒炎スピリッツ・フレア!!!!!」


 黒炎に包まれるネクロマンサーの姿にリリアンは手を合わせる。それにしても、極大魔法に匹敵するあの威力だと言うのに、マナが少なくなった感覚が少しも感じない。


「さっさと燃え上がれ!!!」


「さすがと言わざる負えないね…炎の上級精霊だ…」


「かなり力強いですが、建物まで燃えないといいのですが…」


 アルディンは学長を見つめると光の精霊魔法を発動させる。学長は魔法で応戦するが、彼女の方が力が上のため効果は無い。


「くそっ!!!!鬼人炎オーガフレイム!!!!」


女神の祈りシャイニンングベル!!!」


「このアマっ!!!!!!」


「口の悪い人ですね、ですが…がいなくなれば元に戻りますよね??」


 にっこり笑うアルディンは学長のアーティファクトを見つめる。学長はアーティファクトを隠すが、光の光線をアルディンは放つと学長のアーティファクトは破壊される。

 学長は悲鳴を上げると悪魔が学長から出てくる。悪魔はアルディンを見つめると襲いかかるがイフの炎で焼かれてしまう。燃えて消滅する悪魔の姿にリリアンは顔を青ざめてしまう。


「すごい、威力だな…」


「お父様!!!」


 ふらつきながらでも立ち上がるハンスにリリアンは肩を貸す。アルディンは褒めて欲しそうに顔を向けてくる。リリアンはそっと笑顔を向けて感謝を伝える。しかし、あの時現れた鎖はなんだったのだろうかと考えるが、少しもわからない。


「どうした、リリアン」


「お父様、あとで聞きたいことがあります。お母様のことも、私が狙われた理由も」


「あぁ、ちゃんと話そう。ガクドにも…」


 ハンスは空を見上げると、ネイレーンが守ってくれたような気がして仕方が無い。きっと彼女の精霊がいなければ、リリアンは学長に連れて行かれて、操り人形にされていた可能性…いいや最悪の場合、皇帝の奴隷にされていたかもしれない。


「ところで、お兄様は…」


「リリィ!!親父!!」


 建物の中から出てくるガクドはリリアンたちの元へ走ってくる。ガクドは学園内にいる学長の協力者の逮捕に力を貸していたらしい。グレンも逮捕に協力してれたみたいで、アカデミーで起こった事件は簡単に終止符を打つことができたらしい。


ーーーーーーーー


 アカデミーで起きたアーティファクトに悪魔を宿した事件は何も解決できずに闇の中に葬られることになった。

 目を覚ましたアイリス嬢は当時の記憶が無く、どこでそのアーティファクトもらったのか、誰にもらったことも覚えていないらしい。彼女の記憶には魔法によって消された可能性があり、学長に聞くつもりだったが、尋問中にその黒幕の名前を伝える直前、魔法によって殺される呪いがかけられていたため、聞き出す前に処分されてしまった。

 あのネクロマンサーは人造人間ホムンクルスのため、遠距離操作をされていた可能性があるとわかった。しかし、その操っていた者が誰なのかはわからない。調査は進展せずに闇の中に消えていった。

 自宅に戻ったリリアンは父親の世話に明け暮れていた。ハンスの怪我はかなりひどいものだったため、しばらくの間安静を医師から伝えられ、大怪我をさせてしまった責任を感じ、リリアンは自分でハンスの世話をしている。


「お嬢様!!旦那様のお世話は我々がやりますので!!!お嬢様もお休みください!!!」


「このぐらいやらせて、お父様が怪我をしたのは私のせいだから…」


 リリアンはハンスの部屋に入るとガクドもハンスの見舞いでやってきていた。ハンスは大人しく本を読んでいるとリリアンは安静していることにホッとする。


「お父様、汗かいてませんか?」


「リリアンちゃーーーーーん♡♡♡大丈夫だよ〜〜〜!!!」


「よかったです」


 ハンスがこのような人だと言うのは、兄であるガクドから聞いた。そのため、ハンスはリリアンのことを愛しているのがよくわかったため、リリアンはいい父親の態度をとらなくて良いことを伝えたら、こうなってしまっている。


「りんごのすりおろしです。食べてください」


「リリアンちゃんが、あ〜ん♡してくれるなら食べるよ〜〜〜」


「親父、いい加減にしろよ…」


「お前は黙ってろ…!俺の知らないところで、リリアンちゃんのことをリリィと呼んで…許さないからな」


「マジかよ…」

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