第25話 リリアンの両親

 不敵に笑うハンスに学長は表情を歪ませない。だが、突然疑われたら少しぐらい動揺を見せるはず。学長はその様子すら見せない。


「なにを言いますか、自分がそのようなことは致しません。それに生徒を危険に晒す学長など、いやしません」


「他の生徒なら…な。俺の娘であるリリアンは別だろ?」


「お父様…?」


「学長、お前なんだろ?リリアンの母親、ネイレーンを殺したのは!!!!」


 そのことに生徒たちはどとめいた声が溢れる。学長は少し顔を引き攣らせると、誤魔化すように咳払いをする。


「何バカなことを…証拠でもあるのですか???」


「あぁ、やっと貴様の部下であるヴェノフローテ子爵が口を割ってくれたんだよ。お前がネイレーンを殺したということな」


「あの裏切り者が…」


 学長は小さく小言を言うとハンスを見つめる。学長はリリアンを奪うことが目的。リリアンを見つめ、どうやって奪うかを考える。

 そして学長は大きく高笑いするとハンスはリリアンを自分の後ろに隠す。


「わかったのなら仕方がない…ネルベレーテ公爵、そなたはいい魔法使いだ。だが私に勝てるかな⁈」


 学長は魔法陣を作るとハンスも魔法陣を生み出す。氷の粒を生み出すハンスだが、学長は炎の球を生み出してハンスの魔法打ち消す。

 防がれたハンスは反撃と言わんばかりに水刃を生み出し、学長の炎を消す。魔法の撃ち合いに生徒はパニック状態になり、あちらこちらに逃げ惑う。

 教員たちは生徒を避難させようとするが、全員パニックになっているため、教員の声が届かない。


「答えろ!!!!なぜリリアンを狙う??!!」


「お前はそいつの価値を知らない!!!俺がそいつをあるべき場所に送ってやる!!!本来なら、そいつは俺のモノになるはずだったのを…!!!あの女が貴様に託した!!!!」


「リリアンは俺の娘だ!!!!」


「本当にそう思っているのか⁈ならなぜ、が使えないんだ???!!!」


 そのことにリリアンは胸を撃ち抜かれる感覚を感じる。ハンスはリリアンが魔法が使えると確信しているはず。それなのに、魔法が使えないとなると、昔のように放置される。

 恐る恐るハンスを見ると彼からは優しい目が向けられている。安心しろと言わんばかりのその瞳にリリアンは落ち着きを取り戻す。


「それがどうしたと言うんだ!!!魔法が使えなくても、俺の娘には変わりない!!!!」


「お父様…!」


「リリアン!!お前は俺の娘だ!!!一緒に帰るんだ!!!」


 リリアンは泣きそうになるのを必死に堪えながら、背後にいる人たちに警戒する。姿を見せる彼らは操り人形のように動く。その人たちはアカデミーの服を着ている者や教員の服を着ている。

 リリアンはそのことに彼らは学長に操られているのだと感じる。ハンスは学長の相手に忙しい、彼らの相手はリリアンがやるしかない。


『ーイフ!!お願い、力を貸して!!!ー』


『仰せのままに!!!我が主人あるじよ!!!!』


 イフは姿を見せると彼らの炎を当てる。操りの糸が見えるとその糸を燃やすように命令をする。その姿にハンスは安心するが、学長の背後にネクロマンサーがいることがわかると自身の体が危険信号を出す。

 ネクロマンサーは黒魔術を使い、鎧を付けた騎士を動かす。


「これは…まずいね〜」


 リリアンたちを囲む騎士たちにハンスは苦笑いをしてどうするかを考える。


「どれだけ強い魔法使いでもネクロマンサーの黒魔術には勝てないもんな!!」


 高笑いをする学長だが、瞬時に光の閃方が騎士たちを切断をする。騎士たちは倒れ込むとハンスの前にウルファが姿を見せる。


「ウルファ⁈」


「どうやって…だが彼らは死者だ!!!いくら強い君でも!!!」


「ご安心を、この剣はソウルイーターですので」


「「ソウルイーター⁈」」


「ソウルイーターだと⁈バカな!!!」


「公女様を守るため、剣を強くしました」


 ウルファは剣を構えるとネクロマンサーは黒魔術で悪霊たちを生み出していく。ウルファは彼らを切断して行き、剣の扱いを見せつけていく。涼しい顔をしているが、あれほどの剣技を習得するのはかなりの努力を必要とする。

 リリアンはウルファを専属騎士にしたことに正解だと感じる。学長はハンスに向かって魔法を放ち、ハンスはリリアンを庇うように防護魔法を発動させるが、すぐに破壊されてしまう。


「お父様!!!」


「リリアン…逃げろ!!!」


 リリアンはイフを呼び出し、ハンスを守る。爆炎の炎を生み出し、学長に放つが効果は無い。


「私も炎属性でね…炎は効かないんだ」


 イフの炎を学長は消し去ると彼の腕にアーティファクトが付けられているのが見える。それから黒い魔法陣が発生するとリリアンの胸と学長を繋ぐ鎖が見える。

 リリアンは驚くとハンスは学長を氷漬けにする。しかしそれは簡単に解かれ、リリアンは意識が遠退く感覚が襲いかかる。


「さぁ、リリアン。こっちにおいで」


 リリアンは自分の意思で抗えずに歩き出すが、突如リリアンと繋がっている方から鎖が崩壊する。リリアンは意識が戻り、地面に精霊召喚の魔法陣が発生する。


「これは…⁈」


「一体どう言うことだ!!!!なぜ崩壊したんだ!!!」


 慌てふためく学長にはリリアンの足元にある魔法陣が見えていないように感じる。すると頭に知らない女の声が聞こえてくる。それは優しく、リリアンに語りかけてくる。


『新たに生まれし精霊師よ、私と契約しませんか???』


「ー精霊…まさか向こうから誘ってくるなんて…どう言うつもり?ー」


『私は光の精霊、あなた様のお母様、ネイレーンよりあなた様に危機が来た場合に、契約するように申しつかりました』


「ー光の精霊、あなたなら…この危機から私たちを助けれる????ー」


『イフリート共にでしたら、可能です』


「じゃあ、よろしく!!!我が名はリリアン・ネルベレーテ!汝の問いに応え、ここに契約の契りを交わそう。姿を見せよ、光の精霊よ!!!!!」

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