第24話 アーティファクト
別室に連れて行かれたリリアンとヘルミーナはお互いに別々の部屋で事情を聴かれ、リリアンはありのままのことを話す。
「えっと、ようするにアイリス令嬢が公女様を殺そうとしたという解釈でいいですか?」
「はい、そういう形になります」
「では、これはアイリス嬢がいつも付けている、ブレスレットでいいですか?」
女性教員の手にはアイリスが手首に付けていたブレスレットを見せてくる。しかしどことなく嫌な感じがする。宝石は黒く変色をしているようなもので、気持ち悪くも感じる。
「先生、それは一体なんですか…?」
「これはアーティファクト。今では使用を禁じているものです。いったいどこでこれを…」
「アーティファクト???」
「あ、公女様はご存じではなさそうですね。説明しましょう」
アーティファクトとは人工で作られた魔力を増幅させる代物。昔の魔導師はこれらを使って強力な魔法を使っていたが、複数の魔導師を犠牲にして魔力を増幅させているということが分かり、使用を禁じている。
しかし、隠れてそれを作り売りさばいている者が後を絶たない。調べていくうちにそのアーティファクトを悪魔を呼び出す儀式に使い、悪魔を宝石の中に閉じ込め負の感情持つ者に悪魔を乗っ取らせるものがあるらしい。
「それでは…まさかアイリス嬢は!!!」
「公女様の想像通り、こちらには悪魔が宿っています。幸いヘルミーナ令嬢の光魔法で悪魔の動きを制限してくれたおかげで、簡単に解除できました」
女性教員はほっとしたような顔をするとアイリスにこのアーティファクトをどこで入手したのかを聞き出さなければならない。リリアンもアーティファクト自体、よくは知らない。
すると女性教員である彼女はリリアンに頭を下げてお願いをする。突然のことにリリアンは戸惑いを見せる。
「ど、どうしましたか???頭をお上げください」
「公女様、お願いがあります。どうか、私に力を貸してください」
「どういうことですか⁈」
「公女様の強力な力を驚かされました。きっと公女様は女神さまが齎した《もたらした》奇跡の人だと感じます。どうか、我々にお力をお貸しください」
「どうして、私なのですか?他にも私以上に強い人はいます」
「いいえ、公女様以上の人はいません。お願いします」
リリアンに頭を下げる女性教員はヘルミーナの面影がある。ヘルミーナと似た茶色に近いクリーム色の髪と顔つきが彼女を連想させる。
「あなたは、いったい何者なのですか?」
「私は、このアカデミーの卒業生で、帝国に住むギルドマスターの補佐をしております、アルメーレン・ボナファルト…エンブリラ伯爵の血族です」
「ではヘルミーナ嬢の…親戚に当たると言うことですか」
「左様です、どうか我々にお力を…」
「少し、考えさせてください。今回の件で、頭を整理したので」
「わかりました、私は東館の5階にある研究室にいますので、その時に返事を聞かせてください」
リリアンは解放されると廊下にいる生徒たちは慌てた様子で行き来している。会話を聞く限り鷹の紋章の馬車がアカデミーに来ているらしい。
リリアンはその馬車がネルベレーテ公爵の紋章だと思い、馬車がある場所へ向かうと確かにそれはネルベレーテ公爵家の馬車だとわかる。
人混みをかき分けて向かうと馬車から正装のハンスが出てくる。ハンスが正装する時は皇宮に出向く時のみ。そのため皇宮の帰りだとわかる。
このまま真っ直ぐ屋敷に帰るはずのを、手間を取らせてしまったことに、リリアンは反省をする。リリアンはハンスの元へ走っていく。
「お、お父様…も、…」
いつもなら簡単に出るはずの謝罪の言葉がうまく出ないリリアンは目が泳ぐ。ハンスがリリアンを見つめると、彼女を突然抱きしめる。そのことにリリアンは目を見開かせる。
「怖かっただろう、不安だっただろう…」
「お、お父様、みんなが見ています…!」
「気にするな、誰もお前に指図することはできない」
「お父様…!」
リリアンは不安で押しつぶされそうな状況だったことに、酷く安心する。するとハンスを見た職員はハンスに頭を下げて中に誘導しようとする。しかし、ハンスはそれを断る。ハンスの目には怒りが込み上げている。
「中に入る気は無い!!こんな腐ったアカデミーに入りたくも無い!!」
「お、お父様⁈」
「ここに学長を呼べ!!!」
ハンスを声を上げると炎でできた転送魔法で学長が姿を見せる。学長はハンスに挨拶をする。
「お呼びですかな?ネルベレーテ公爵」
「学長!!」
生徒たちは学長の姿を見てどよめきを見せる。学長は滅多に姿を見せることがない。そのため学長の姿を見るものは問題児か高貴な人、学校の行事に参加した者のみ。
「学長、これはどう言うことかな???」
「どう言う意味ですか?」
「とぼけるな!!!!なぜ悪魔がこの学園の中に入れた!!!貴様の結界は無能なのか!!!」
怒りを露わにしているハンスにリリアンは戸惑いを見せる。これほどまで怒りを見せているハンスにリリアンは動揺してしまう。
「公爵のように魔力にかけているわけではございません。こんなに簡単に入られると思っていませんでした」
「そう思っていないだろ…?お前が手引きして、入らせたんだろ!!魔法の実験という名目で」
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