第23話 公女の親衛隊

 ドレス選びから戻ったリリアンはベンゼルにお願いしてノートを写させてもらう。ここまで頼れる人ができるだけで、リリアンの学園生活は楽しく感じる。


「ありがとうございます、ベンゼル様」


「いいえ、いつでも公女様のお力になりますので、頼ってくださいね~」


 ベンゼルは教室を出ていくとすぐにグレンの元へ走る。誰もいなくなった教室にリリアンはベンゼルに感謝する。

 授業の時間はとっくに終わっていたはずだというのに、リリアンのことを待ってくれていたのだから。リリアンも荷物をまとめて教室を出ると外にはヘルミーナが立って待っている。

 リリアンは目を鋭くさせ、ヘルミーナに何をされるかが分からない。いつでもイフを呼べるようにしておく。


「何の用ですか…?特に用が無いでしたら、失礼します」


 リリアンはヘルミーナから離れようとすると彼女は大きく息を吸い込む。


「公女様、先日は申し訳ございませんでした!!」


 リリアンに謝罪をするヘルミーナにリリアンは目が丸くなる。貴族は謝罪をすることはほとんどない。それだというのに、リリアンと面と向かって謝罪するヘルミーナに警戒心が湧く。


「急に何ですか…?」


「すぐに受け入れてもらえないのは分かっています。ですが、私は自分の身分を理解せずに公女様を笑いました。これは貴族の令嬢に相応しくないことだと理解しました!どうか私…いいえ、私たちを公女様を護る親衛隊にさせてください!」


「そう言って…また私をいじめるつもりなのですか?親衛隊をやりたいなら私の知らないところでやってください!!失礼します!!!」


 リリアンは怒りを見せてヘルミーナを置いていく。一人残されたヘルミーナ気にすることもなく、去っていくリリアンは彼女の態度の変化に戸惑いを見せる。


「ーいったい何⁈今更、絆を戻そうとしているの⁈そんなんで、私の心が動くとでも思っていたのかしら⁈理解できない!!!ー」


 部屋に戻ったリリアンは荷物を置くと、ヘルミーナの心変わりに不安に感じる。だが、リリアンがグレンとよく一緒に居ることで、グレンに気に入られようとしていると考えると、リリアンと仲良くなっておけば、グレンと会えるチャンスが巡ってくると思っているのだろうか。


ーーーーーーーーーーー


 翌日、リリアンは目を覚まし、ハンスから手紙が来ている。内容はリリアンに会いたいとか寂しいとかの内容で、リリアンは思わず笑ってしまう。

 どうやらリリアンがガクドと会っていたことを知らない様子。そのことにほっとしているとメリーが身支度のために入ってくる。

 リリアンからもらった髪留めをえらく気に入ってくれているため、リリアン自身もうれしく感じる。


「お嬢様、もしよろしければ、授業が終わった後…ウルファの様子を見に行ってはいかかでしょうか?」


「ウルファも会いたがっているの???」


「そのようですよ~お嬢様のためにもっと鍛える!っと言っているぐらいですから」


 くすくす笑うメリーにリリアンも微笑むと身支度を終える。朝食を食べてアカデミーに向かうとアイリス一行がリリアンの通り道を塞ぐ。


「どいてください」


 鋭く言うリリアンにアイリスは静かに怒りを見せている。その瞬間、アイリスはリリアンの胸倉を掴む。


「お前の…お前のせいだ…!!お前のせいで!!!!!」


 アイリスは声を上げるとアイリスの仲間はリリアンを取り押させる。口までも塞がれたリリアンはイフを呼ぶことが出来ない。異様な光景だと言うのに誰一人として危険だと感じ取らない。

 それより、リリアンたち自体見えていないような感じがする。助けを求めても全員がリリアンに見返りを求めて来るものばかり。

 アイリスはナイフを持つと、リリアンはあの時襲われた光景がフラッシュバックしてくる。死を感じリリアンは目を強く閉じる。

 助けなんて来ない、ガクドとハンスのことが頭を過ぎるとアイリスから悲鳴が聞こえる。目を開けるとアイリスをヘルミーナが取り押さえている。リリアンから引き剥がずと光魔法を唱え、アイリスを攻撃する。


「あと…少しで…!!!!」


 アイリスは力無く倒れ込むとアイリスの仲間も同じように倒れ込む。その時に魔法が解けてリリアンたちの姿は生徒の目に映る。ナイフを持っているアイリスを見て悲鳴を上げる生徒たちにリリアンはヘルミーナを見つめる。


「どうして…」


「公女様、私は公女様の親衛隊です。守るのは当然です」


「私が、見えていたの?」


「いいえ、ただこの場所から魔力を感じたので、飛び込んでみたのです。そうしたら公女様たちがいらしたのです」


 ヘルミーナはどこかで見たことあるような顔をしている。それはウルファの目つきと少し似ている感じがする。騎士が命がけでお姫様を護るように。

 そのあとすぐに教員がやってきてヘルミーナはリリアンが襲われていたことを説明する。ナイフを持っていたアイリスを見て教員たちは理解してくれる。このアカデミーで刃物を持っていていいのは護衛として連れてきている騎士のみ。

 眠っている彼女らを連れて行く教員とリリアンに事情が聞きたいため、リリアンとヘルミーナは連れて行かれる。この問題はすぐにハンスの元へ届くことになった。

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