第19話 戦闘授業

 昼食を終えたリリアンはグレンと別れて競技場へ向かう。今日は使い魔を使った攻撃の授業。しかしリリアンはグレンとのパーティーのことで考えて、頭がパンク思想になっている。いくらなんでもリリアンを誘うなんてありえない話。

 それに、グレンの存在自体、この物語ではありえない話。リリアンに優しく接してくれているのも、物語の内容と離れてしまっているためなのかもしれない。


「ーグレン様と、パーティー…。構わないよね?私が参加しても…ー」


 リリアンは顔を上げ、競技服に着替えて競技場に到着するとベンゼルがリリアンに手を振る。リリアンも周りを気にしながらだが、小さく手を振る。周りの令嬢や人たちはかかわらないようにするために離れた場所でこそこそしている。


「それでは、授業を始めるにあたって、二人一組を作れ!!」


 教員の指示でベンゼルはリリアンと組もうとするがベンゼルが男のため男子グループの教員に連れて行かれる。完全に孤立したリリアンはグループが作れないと感じる。


「あの…」


 そのため、教員に相手がいないことを伝えようと手を上げると、一人の令嬢が近づいてくる。


「公女様、もしよろしければ私と組んでくださいませんでしょうか?」


「えっ…」


 リリアンの元にやってくるのは美しい水色の長髪美女の娘。風格からして貴族出身だということが分かる。美しい彼女は優しい瞳でリリアンを見つめる。リリアンは優しく了承すると、彼女は嬉しそうに笑顔になる。そしてリリアンに自身のことをカーラと名乗る。


「全員作れたみたいだし、これからの使い魔を使った授業をする。そしてこれからは二人で行動するように!」


『はーい!』


「これからよろしくお願いしますわ」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 教員は使い魔を召喚するように伝えるとリリアンはイフを召喚をすると、カーラも自分の使い魔を召喚する。虎のような姿に微かに電気を帯びている。見た目が水のような人だったため、電気属性の使い魔は以外だと感じる。


「あら、どうかしましたか?」


「いいえ、特に何も…その使い魔には名前があるのですか?」


「もちろんです、この子はライトニングです。ライトとお呼びください」


「ライト、わかりました。よろしくお願いします、ライト」


 ライトは少し喉を鳴らすとリリアンに頭を出して撫でさせてくれる。


「公女様の使い魔の名前は…」


「あ、イフです!そうお呼びください」


「イフ、何になぞられているのかはわかりませんが、よろしくお願いします」


 カーラはお辞儀をするとイフも頭を下げて挨拶をする。いくらなんでも言えるはずがない。彼が精霊のイフリートなんて言えるはずがない。今この人たちが精霊なんてわかるはずがないだろうが、念には念を。


「では、競技場にある的当てで魔法弾を打たせろ!使い魔が魔法を使うたび契約者の魔力が使われていくため、注意するように!!疲れが出たらすぐに休憩するように!以上!!」


 リリアンとカーラは移動をして的当て場所に向かう。カーラは先にやりたいと言い出し、ライトニングに魔法弾を打たせて、的を破壊する。何度も打ち込みを続けているカーラを背後からリリアンは見つめている。連続攻撃と言わんばかりに放ち続けるカーラの姿にリリアンは疲れないのだろうかと思ってしまう。


「ふぅ、お先貰ってしまって申し訳ありません」


「構いませんよ、それよりすごいですね。それだけ放っているのに、疲れを見せないなんて」


「そんなことありませんよ。使い方を把握すれば長時間魔法を使うこともできます」


「なるほど、素晴らしい才能ですね」


 リリアンは褒めたたえるとカーラは驚いたように笑顔を見せ、照れている反応をする。何に対して笑っているのかわからないリリアンはキョトンとした顔を見せる。


「公女様、ご冗談はよしてください。公女様の方が才能にあふれております」


「私なんて…うまく魔法が使えずに、馬鹿にされてきたのですから…」


「いいえ、私の目に狂いはありません。公女様は魔法の才能が有ります。公女様から出るオーラ。今まで私が経験した中でトップレベルの力です」


「私が…ですか?」


「はい!ライトは今までどんな人にも懐かなかったのに、公女様だけです」


「私…だけ」


 リリアンはライトを見つめる。ライトの目には宝物を見るように目が輝いている。ここまで動物に懐かれたことが無かったリリアンはどのように接していいのかわからずにいる。


「さぁ、公女様。どうぞ」


 リリアンはイフと念話を使って話しかけて魔法弾を打つように命令をする。イフからは普通に命令してほしいと念話で言われるが、魔法とは違う精霊の力をむやみに使って周りから疑われたくない。


「イフ、お願い!」


「了解!!主人あるじ!!」


 イフは魔法弾を放つとカーラの物とは桁違いの魔法弾が放たれる。とんでもない威力で的は粉々。焼き焦げた的だったものは地面に崩れ落ちる。


「あ、あれ?」


「な、なんという威力!!さすが公女様です!!」


 リリアンはカーラを見つめると今の状況に理解ができない。しかし身体が疲れた様子がない。マナ呼吸をした時から思っていたが、リリアンの持つ精霊の力が基準値を大幅に超えている。

 今回の騒動に多くの学生が慌てた様子でリリアンたちの元へやってくる。多くの生徒はリリアンが暴走をして壊したのだと、リリアンの実力を認めようとしない。


「リリアン様、これを壊すなんて…何を考えているのですか?」


「も、申し訳ありません。力を抑えたつもりだったのですが…」


「全く…これでは授業になりませんよ」


 呆れている教員はリリアンがわざと壊したような言い方にカーラは怒りを見せる。


「貴様!!!!公女様はわざと壊していません!!彼女の才能は素晴らしいものです!!」


「カーラ様は黙っていてください!どうせ庇うように言われているのでしょう」


 リリアンを嘲笑うように見てくる人たちにイフは怒りが溢れてくる。するとカーラはライトに命令を出し落雷を起こす。その音に驚いているとライトは唸り声をあげる。


「人の才能を認めようとしないあなた方に嫌気が指してきました!このことは父上に報告させていただきます!!」

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