第16話 存在しない皇太子
リリアンはヘリンが転んだということを説明してもきっと信じたりしないだろう。静かに過ごそうとしてもこのように問題がやってきてしまう。
「謝罪をしろ!今すぐにだ!」
「私は何もしておりません、これは紛れもない事実です。ヘリンさんあなたも何か…」
リリアンはヘリンを見ると彼女に話すことを許さないようにアーサーは彼女をマントで隠す。人からの信頼がないのか、ただ単にリリアンのことが嫌いなのかわからなくなってくる。
「いいから…!=謝罪しろ=!!!!!」
リリアンの脳内に語り掛けてくる威圧に立っているのが苦しくなる。膝を付いて耐えるが顔すら上げるのも辛い。袋に包み持っていたサンドイッチを、地面に落としてしまう。呼吸すら苦しくなるリリアンはアーサーに目線を向けると彼が何かしらの力を使っているのが瞳を見ればわかる。
どうにかしてこの呪縛を解きたいが、体が言うことを聞かない。アーサーは睨みを聞かせたその目でリリアンに言う。
「さあ、=謝罪しろ=!=頭を地面につけて今行ったことに反省しろ=!!!!」
「ッ!!!!」
その瞬間、リリアンに掛けられた能力がはじかれる感覚がある。アーサー自身にもその反発が来たのか後方にふらつき尻もちをつく。リリアンは大量の汗があふれながら顔を上げるとそこにはアーサーと少し似た顔をした男が立っている。
「その技は、この学園で使うのを禁止しているのを忘れたのか?」
「グレン…!!邪魔をするな!!!!」
声を荒げてグレンに向かうアーサーだが、グレンは背負い投げをして投げ飛ばす。投げ飛ばされたアーサーはグレンに向かって睨むがグレンはそれを気にしていない様子。
「公女と遊んでいる暇があるのなら、婚約者を医務室に連れて行く方がいいんじゃないか?膝から血が出ているのに、それすら無視とは…皇帝になる気はあるのか??」
「言われなくてもわかってる!!!!」
アーサーはヘリンをお姫様抱っこしてそそくさと連れていく。リリアンはやっとのことで立てるようになりその場から離れようとする。
「待て、レディー・リリアン。その足でどこに行くんだ?」
「私のことはお構いなく。大丈夫ですので…」
足元がふらついているリリアンだが人の手は借りたくない。悪女と呼ばれるリリアンが誰かの手を借りるなんて彼まで悪い噂を流されるかもしれない。せっかく助けてくれたというのに、申し訳なく感じる。
リリアンはふらつく足で歩くが、足元にある木の根につまずいてしまう。きっと派手に転んで笑われるに決まっていると思う。そう思うだけで、心の中が苦しくなる。
しかしリリアンに来たのは腹部を抱えられる感覚だけ。目を開けるとグレンがリリアンがこけないように抱えてくれている。
「だから待てと言ったんだ」
グレンはリリアンのことをお姫様抱っこをしてリリアンを寮へ連れて行ってくれる。人に抱えられることもなかったリリアンにとって、こんなに緊張することはない。
「公女様、このようなことをされるのは嫌かもしれませんが、ご了承ください。アーサーが使っていたのは皇族のみが使える力でして、帝国に住む全ての人に効果があり、
「あなたは誰なの、どうして悪女である私を助けてくださるのですか?」
「…。自分は、グレンと申します。第二皇太子です。それと助けたのは深い意味はありません。それに、あなたが悪女だというのは噂にすぎません。公女様は、とてもやさしい心を持っていますので」
グレンはリリアンを寮に連れて行くと専属騎士のウルファに託す。
「それでは公女様、またどこかで」
グレンはそれだけ言い残してアカデミーに戻っていく。王子様のような行動にリリアンは焦る思いが感じる。しかしあることを思い出す。この世界に、第二皇太子なんて存在しないはず。
「彼は…いったい何者???」
リリアンは体調不良で午後の授業を休み、寮の部屋で足の痛みに苦しんでいた。アーサーの能力で足の力がうまく入らないリリアンは手紙を書くことさえ苦しく感じる。
「パパに手紙を出そうと思ったのに…、これじゃあ無理だね」
「お嬢様、本日はゆっくりお休みください。夕食は軽いものをお持ちいたします」
「ありがとうメリー、お願いするね」
「はい!お任せください」
メリーに退出してもらいリリアンはグレンのことを考える。存在するはずのない第二皇太子。物語が変わっていることにこれからのことが危険な方向に向かっているのが誰かに言われなくてもわかっている。
「第二皇太子、彼は危険人物の可能性がある。それに、ヘリンのことも気がかり。このような接触は一度もなかった。それなのに、接触しようとしてきた。何か裏がありそうだね…」
リリアンはこのまま何もしないわけにはいかないと思う。
その後、メリーが聞いた噂でアーサーが足を怪我したヘリンを連れて医務室に向かったという話。リリアンが怪我をさせたやらヘリンをわざと転ばせて怪我をさせたと根拠のない噂が広まっている。
「ーだからやっていないって!!!!ー」
リリアンはそう叫びたく感じた。
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