第二章 アカデミー編

第14話 アカデミーでの生活

 リリアンとメリー、ウルファを乗せた馬車は国道を通ってアカデミーに向かう。整備されている道とはいえ、馬車に乗り慣れていないリリアンは馬車酔いをしそうになっている。


「お嬢様!大丈夫ですか⁈」


「だ、大丈夫…たぶん…」


 顔が真っ青になっているリリアンを見てウルファは少しだけ馬車を止めるように業者に言う。馬車が止まりリリアンは馬車から降りて、少しだけ外の空気を吸う。屋敷から遠く離れた場所だが、王宮がすぐ近くにあることにリリアンは驚いた表情をする。そして多くの貴族の馬車が通って行き、アカデミーが近いことを実感する。


「アカデミーってどんな感じなんだろう…?」


「アカデミーですか?私もよくは知りませんが、勉強ができる場所だと言うことはわかります」


「アカデミーは三つの科目に分かれていますよ」


「ウルファ!知ってるの?」


「はい!護衛として一度だけ。少しだけ説明いたしましょうか?」


「お願い!!」


「かしこまりました」


 ウルファは快くリリアンに説明をしていく。アカデミーには三つの科目が分かれており、魔法科、戦闘科、普通科に分かれており、リリアンは魔法科に属している。アカデミーは寮で生活するのが当たり前で多くの貴族が通っている。しかし貴族ではない市民も混ざっており、多くの貴族の的にされている。それでもその貴族より成績が高く貴族より上の立場になることもできる平民もいるらしい。

 リリアンが魔法が使えないのに魔法科に居るのはきっと皇太子が魔法科にいるためだろうと解釈する。どれだけ皇太子が好きなんだろうとリリアンは思ってしまう。


「ざっとこんな感じです。ご理解できましたでしょうか?」


「うん!ありがとうウルファ」


「そんな…!お礼を言われることなんてありませんよ!」


「お嬢様、あまり使用人にお礼を言わない方がよろしいと思います。下に見られてしまうので」


「あ、そうだね。ごめんねメリー、でも感謝だけは言わせてね」


「それはいいですけど…」


 リリアンは今自分が公爵家の娘だと言うことを忘れかけていた。落ち着いてきたリリアンは馬車に乗り込み、その後にメリーたちも乗り込むとアカデミーに向けて走り出す。

 アカデミーに到着すると多くの貴族の馬車が止まっている。そのためアカデミーは馬車の渋滞が起こってしまっている。


「進みそうに無いかしら?」


「そうですね…ここで降りた方がよろしいかもしれませんね」


 するとスーツ姿の男性が走ってきて業者と何かを話し始める。業者は理解したように頷くとリリアンに座っているように伝えてくる。

 するとリリアンの馬車は裏道を通りVIP専用の扉から中に入る。下ろされたリリアンはそこから中に入ると先ほど業者と話していたスーツ姿の男がリリアンに向かって走ってくる。


「公女様、お迎え遅れてしまい申し訳ありません」


「大丈夫です。私は記憶が無いので、道を案内してもらえませんでしょうか?」


「か、かしこまりました!まずは学長の元へ案内します」


「お願いします」


 リリアンは長い廊下を歩き、学長の元へ歩く。ほとんど生徒と会わない場所を歩き、学長と顔を合わせる。


「学長、ネルベレーテ公爵令嬢をお連れしました」


『入りなさい』


 彼は扉を開けるとリリアンに中に入るように言う。リリアンは中に入ると学長と顔を合わせる。そして貴族の挨拶をして学長にお辞儀をする。


「まさか、公女から挨拶をされる時が来るなんて、思ってもいなかったよ」


「アカデミーにいる間、たくさん学長様にご迷惑をおかけしましたので、ここで謝罪と戻してもらったことへの忠義でございます」


 リリアンがそういうと学長は大笑いを見せる。一気に空気が軽くなり、学長は試験と言わんばかりにリリアンに伝える。


「手紙に書いた通り、アカデミーに戻る条件として使い魔を召喚できなければならない。できるか?」


「イフ」


 リリアンは意識を集中させてイフを呼び出す。イフは呼ばれて嬉しいのか目を輝かせている。


「お呼びですか?主人あるじ様」


「どうですか?学長様、ちゃんと使い魔を召喚できます」


「ふふふっ、合格だ。アカデミーに戻るといい。ただし、魔法科を出ることはできないからな、覚悟しなさい」


「もちろんです、全力で、取り組ませてもらいます」


 学長室から出るとリリアンは緊張と焦りで冷や汗が止まらないでいる。イフを戻して、リリアンは難を逃れる。学長の前で披露するなんて考えておらず焦りを覚えたがなんとか免れた。


「ーさてと、これからどうなるんだろう…。それより悪女として有名だから問題が多くあるのよね…ー」


「公女様、教室までご案内します」


 リリアンは先ほどの男性の後について教室に向かう。彼から学園の地図を渡され、迷わないようにと伝えられる。紙に書かれた地図はわかりやすくどこにどの教室があり、教員がいる場所も記されている。


「ーわかりやすく書かれてるわね…ありがたいけど、他の生徒に馬鹿にされること間違いなしねー」


「こちらが公女様の教室になっております。教員は公女様のことを名前で呼びますので、ご了承ください」


「学校なんだし、仕方がないでしょ?そういうの気にしませんので」


 リリアンは教室に入ると全ての生徒がリリアンのことを見つめてくる。そのことにビビってしまいそうになるが公女として見下されるのはとてもじゃないが抵抗がある。これからアカデミーの生徒としてやっていかなければならない。

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