第12話 出席停止、解除

 その後、リリアンのことを馬鹿にした司書は解雇させられた。足を引きずっていたため、むち打ちだけで済んだことに安堵する。彼にも家族がいるはず、死体で送ってしまったら記憶の無い公女は昔のままだったという噂が流れるのだけは阻止したかった。

 その後、リリアンは魔法を使おうとしたが、魔力をためる場所すらないことに防御魔法ができないことに愕然とする。あの司書の言う通りだったと思うと絶望を味わう。


「このままじゃ、どうにもできない…!!」


 愕然とするリリアンの元に、メリーが手紙を持ってやってくる。手紙の主はアカデミーからであった。内容は出席停止の解除のこと、リリアンはどうやらアカデミーで魔力を持たないことを学生に馬鹿にされたことに腹を立てて殴り合いをしたことで無期限の出席停止、離れの屋敷で暮らすことも義務付けられていたらしい。

 昔のリリアン!何てことしてくれたんだよ!と叫びたいところを抑えて泣きそうになる。これでは平凡な幸せな暮らしができないと感じる。しかし、今回のリリアンは使用人を連れて行くことができる。メリーという頼もしいメイドと強く勇敢なウルファがいる。

 しかし魔力の貯蔵庫も持っていないリリアンがアカデミーに戻ってもまたバカにされて喧嘩を起こしてしまう。


「どうしよう…」


 リリアンは悩んでいると魔法の貯蔵庫がないのなら別の貯蔵庫があるのではと思う。リリアンは部屋に誰も入れないようにして意識を身体に集中させる。リリアンが今行おうとしているのは図書館で埃が着いた本。その本には『マナ呼吸』という技の内容が書かれている。昔に存在した精霊使いが行っていた技らしい。今では精霊使いなどは存在していない分、埃を被っていたのだろう。


「ー意識を集中させるの、きっとできるはずだからー」


 リリアンは体を自然と一緒にする。大気がリリアンの中に入ってくるのを感じるとリリアンの奥底にある大きな物体を感じ取る。それがリリアンが持つマナだと感じ取る。


「ーこれが、マナ!!なんて大きさなの⁈これだけ大きいと、魔力の貯蔵庫が無いのも合点がいくー」


 リリアンはマナ呼吸を止めると大量の汗がこぼれる。アカデミーに戻るまでにこれを完璧にしなければならない。それ以外にも、精霊として護衛になるものを呼び出さなければならない。時間がかなりかかりそうだが、今できることをやらなければならない。


「絶対に…成功させてやる!!!!」


ーーーーーーー


 あれから数日が経ち、リリアンはマナ呼吸を日常で行えるほどコントロールできるようになった。もう時期アカデミーに戻らなければならない時期。その前にリリアンは精霊と契約をすることにする。


「これだけマナがあるんだもん。下級精霊ぐらい呼び出せるでしょ」


 リリアンは先ほど書いた魔法陣の上に座り、意識を集中させる。周りの空気も取り込むように意識を集中させる。


『我名はリリアン・ネルベレーテ、汝の問いに応え、ここに契約の契りを交わそう。姿を見せよ、精霊よ!!!!』


 リリアンは声を上げるとマナを勢いよく吸われてしまう。下級精霊を呼び出すだけでこれほどまで力が必要だと思っていないリリアンはどうすればいいのかわからない。だがしばらくすると真っ赤な炎の中から火の精霊が姿を見せる。


『ー新たな精霊師よ、我と契約を交わすか?ー』


 男の声で聞こえる精霊にリリアンはそれに頷く。精霊は不敵に笑いリリアンと契約をする。契約を果たしたことで姿がしっかり見える。炎が具体化したような姿にリリアンは理解ができずにいる。


「えっと…」


「お初にお目にかかる、我主人あるじよ。自分は上級精霊のイフリートと申します」


「イ、イフリート?????!!!!!」


 リリアンは上級精霊を呼び出してしまったことに頭を抱えてしまう。下級精霊を呼び出したつもりが、強力すぎる精霊を呼び出してしまったのだから。しかしあれだけマナを吸われたのだからそれにも合点がいく。


「どうしましたか?」


「えっと…お帰りください」


「なぜです!!!!!」


 リリアンは精霊界に送り返そうとするがイフリートは涙を浮かべながらそれを拒否する。精霊界に送り返されたら契約破棄となり、もう一度やらなければならない。


「いやです!!!!!帰りません!!!!捨てないでください!!!!!!」


「私は下級精霊でいいのです!!!上級だとダメなんです!!!!」


「いや!あなた様のマナの量だと下級精霊では耐えれません!!」


「なら中級でもっ!!」


「中級の奴らも無理です!!!自分で勘弁してください!!!!滅多に上級が呼ばれることないのに〜〜〜〜〜」


 リリアンは精霊界に送り返そうとイフリートを押すが、イフリートの言葉に目を丸くさせる。


「え、そうなの?」


「そうですよ〜〜〜!せっかく上級に耐えられる精霊師と出会えたのに〜〜〜!!!このまま帰るなんて嫌ですよ!」


 泣きそうになっているイフリートが可哀想になってきたリリアンは仕方がなくこのまま置いておくことにする。


「はぁーーー。わかったわ、契約しちゃったんだから私の精霊として置いておく!!」


「!!!!ありがとうございます♡」


「そんなふうに喜ばれると、嫌な感じがするね…」


 荒れ果てた室内にリリアンは頭を抱えるが扉を蹴り破るように入ってくるハンスとガクドにリリアンはまた頭を抱えてしまう。

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