第11話 魔法

 リリアンと皇太子との婚約破棄は光の速さで帝国中に知れ渡った。そして男爵令嬢のヘリンが皇太子妃候補として知れ渡ることになった。


「お嬢様!いろいろな噂が広がっております!!」


 メリーは慌ててリリアンの部屋に入ってくるが、リリアンは動じない動きで紅茶を飲んでいく。


「それもそうだろうね、あの場に居た貴族が、たくさん噂を流したのだから。だけど、意外ね…。あの女からくるなんて」


 リリアンの元には男爵令嬢ヘリンからお茶会の招待状が届いていた。ハンスと一緒に帰って来たガクドは少しばかり焦った表情をしており、ガクドを置いて行ってしまたことをリリアンは思い出す。

 ハンスとガクドは彼女からの招待に応じることはないと言っているが、未来の皇太子妃に挨拶はしておかなければならないが、今は出る気は無い。


「公女様、もし向かわれるのでしたら自分も」


 リリアンの専属騎士ウルファはついて行く気満々でいるが、行く気がないリリアンは大丈夫だと言う。リリアンはその時に魔法のことを思い出す。

 自分を守る護衛魔法。それを覚えることができれば護衛を連れていなくても安心感がある。リリアンは早速図書館に向かう。メリーとウルファを連れて公爵家の図書館に向かうとあまりにも大きな場所にリリアンは開いた口が閉じずにいる。しかし一番問題なのは文字が読めるかどうか。アカデミーを言っているとしても今のリリアンは記憶喪失。読めるかどうかが分からない。リリアンは一冊の本を取り出すと『初期魔法の書物』と書かれた本だということが分かる。


「私、読めるんだ…」


「お嬢様、もしなんでしたら探しましょうか?」


「ううん、大丈夫よ。たまには本を読まないと」


 リリアンはメリーに探そうとしてくれてたことに感謝をする。リリアンは防衛魔法を探すがどこを探しても見つけることができない。二階まであるためどこを探していいのかと分からなくなってしまう。


「あの、司書さん。少しいいかしら?」


「はい?」


「防衛魔法の書かれている書物はどこにあります?」


 リリアンは司書に聞くと彼は鼻で笑い、リリアンの質問を無視する。リリアンは思わず自分が悪女だということを思い出す。だが、悪女とはいえ見下されていると思うと嫌な気持ちになる。


「ちょっと!!聞いてるの⁈」


「お嬢様こそ、使のに、何言ってるのかね??それに、ここはお前みたいな無能が来るところじゃないんだけどww」


 生意気な口を利く司書にリリアンは怒りが出てくる。だが、彼の言うことに違和感を感じる。リリアンが魔法を使えない。設定ではリリアンは魔法が使えている。実際に魔法科のアカデミーに通っているのだから。もしかしたら、この世界は莉里亜が作った世界とは少し異なっているのかもしれない。


「それ、私を侮辱しているの???この図書館を管理している司書としてあるまじき態度ね。本がどこにあるのかすらわからないからそう答えるのね」


「そんなもん、俺に聞かないで自分で探せよ、無能さん」


「貴様!!!!」


「お嬢様に向かってなんという態度なの!!!!」


 ウルファとメリーは怒りを露わにしている。このままでは図書館で乱闘が起こってしまう。


「二人とも!!落ち着いて。探すのはやめましょう。このような人がいる図書館で本なんて読むことができないので」


「帰った帰った!二度と来るなよ~~~~」


 リリアンたちは図書館を出ると司書の態度に頭にくる。リリアンはこのままハンスの元に向かう。赤いカーペットの廊下を歩き、ハンスの書斎をノックする。


「リリアンです、パパ」


『リリアンちゃん?!ちょっと待ってね!!!』


 中から暴れているのか物音が鳴っている。片付けているのかと思うとハンスは扉を開けてリリアンを中に入れる。汗をかなりかいており服もはだけているため、いつもきっちりしていないのがわかる。使用人も連れているためすぐに何かがあったことを理解してくれる。

 外で待つことにするメリーとウルファは外に待ち、リリアンのみ中に入ると別のメイドがリリアンとハンスにお茶とケーキを持ってきてくれる。焼かれたチーズケーキにリリアンは一口食べるとハンスはリリアンにこの場所に来たことを訊いてくる。


「リリアン、どうしたんだ?」


「パパ、こんなこと言うのはなんだけど、図書館を管理している司書が本を管理する人とは思えない態度を取り処罰をお願いしたいのです」


 リリアンの言葉にハンスは紅茶のカップを割るような勢いで力が入る。公女であるリリアンに生意気な口もきいたことも伝えるとハンスはついにカップを割ってしまう。メイドたちはハンスのズボンを拭き、新しいカップと紅茶を持ってくる。


「その男が、そのようなことを…!!」


「はい、そして出る時にー無能ーとも言われました」


「そうか、そいつはどのように処罰する??獣の餌にしてやろうか??それとも✕✕にしょうか???」


「えっ???」


 ハンスから出るはずの無い言葉が飛び、リリアンは固まってしまう。リリアンはただ解雇するだけだと思っていたので、予想が外れて焦りを感じる。


「いいえ!!解雇するだけで十分です!!そんなひどいことしないでください!!」


「リリアン、そんな甘いこと言ってはダメだよ。なら処罰はこっちに任せてくれないか?」


 ハンスは静かに怒りを見せてリリアンは恐怖を感じる。今のハンスはリリアンのことを溺愛しているので、どのような処罰をされるのだろうかとリリアンは考えてしまう。


「あ、あまりいじめないで上げてくださいね…?」

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