第9話 皇太子誕生パーティー
リリアンの専属騎士が決まってから数ヶ月が経った。リリアンの専属騎士ウルファはネルベレーテ騎士団に認められるようになりリリアンも安全な生活を過ごしていた。
しかし公爵夫人とは一度も顔を合わせたことはない。体調不良だと言っていたが、きっとリリアンのことが気に入らないのだろう。
「お嬢様、もう時期皇太子の誕生パーティーが近いです」
「そうね、パーティーには前に仕立ててもらったあの水色のドレスを着ていきましょう」
リリアンはメリーにそう伝えるとメリーは嬉しそうにする。リリアンは紅茶を一口飲み、皇太子のパーティーに不安を感じる。皇太子はきっと婚約破棄を言い渡していくるだろう。そのことを考えると不安で押しつぶされそうになる。
「どうなさいました?」
「いいえ、なんでも無いわ」
リリアンは誕生パーティーに男爵令嬢も呼ばれているだろうと思う。きっとその場にいるすべての人が理解する。リリアンこそが悪役だということを。
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リリアンは男爵令嬢と仲良くなるために色々なことを考えたが、どれも上手くいく保証がない。ならば大人しくしているべきだと感じる。今のリリアンには頼りになるメイドと父親、兄がいる。幸せになるには静かに皇太子が男爵令嬢と結婚するのを静かに待つ。
「お嬢様、そろそろご準備を」
レージュとメリー、ネーシャはリリアンを美しくするためにお風呂に入れる。綺麗になったリリアンにコルセットを巻く。毎回コルセットの着付けには苦労している。
呼吸をするのでさえきつい状態にされるが綺麗に化粧をされる。ドレスを着ると、メリーは毎回髪留めをゴージャスにしたがるが、それはやめてもらっている。今回は特に着飾りたくは無い。
「さぁお嬢様!できましたよ」
美しくなったリリアンに目が眩みそうになるメイドたちは必死に耐える姿を見せる。リリアンを迎えにきたヘルスは女神が舞い降りたようなリリアンの姿に小さな声で「天女だ…!」と口にする。いつも大袈裟なことを言うが、今回はいつにも増して大袈裟になっている。
「はいはい、親父は母さんと一緒に行って。俺がリリアン連れて行くから」
「いやだ〜〜〜〜〜〜!!!!!リリアンちゃんは僕が連れて行くんだ〜〜〜〜〜!!!」
「黙れ!さっさと行け!!!」
いつものように茶番を繰り広げ、リリアンはガクドの手を取る。使用人の人たちに見送られ、皇宮へ向かう。暗い夜道を鷹の紋章がついた馬車が走る。たくさんの星が見える中、リリアンは空を眺める。
「お前が夜に外に出たのは、あの時以来だな」
「あの時…ですか?」
「そういえば、記憶が無かったな。忘れてたよ…。皇太子と婚約した日のことだよ。お前があんなに嬉しそうにしていたの、よく覚えてるよ。だけど、それがあそこまで変わってしまうなんてな…」
「ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」
「謝れって言っているわけじゃないよ。ただ、いつからか、お前は人を警戒するというか…話を聞かなくなったよな。確か、母さんとお茶をした後から…」
「お茶…」
リリアンはその時に何かを感じ取る。リリアンはあのお
「おっと、そろそろ着くぞ」
「はい、お兄様」
「いつものように、お兄ちゃんでもいいんだぞ?」
「やめてください…!!」
リリアンは恥ずかしさのあまりに顔が赤くなってしまう。ガクドはニヤニヤしているが嘲笑われていると思うと苛立ちを覚えてポカポカとガクドを殴る。馬車が止まるとガクドは先に降りてリリアンをエスコートをする。彼の手をとり、ゆっくり馬車を降りると両親が二人のことを待っていてくれる。
初めて見る義母の顔にどことなく恐怖心を感じる。リリアンの記憶は無いが、体では覚えているため、どことなく嫌な感じはする。
「ずっと会いに行けなくてごめんなさいね、私は公爵の妻、カザリーン・ネルベレーテ。あなたのお義母さんよ」
「えっと、初めまして。公爵夫人」
リリアンは丁寧に挨拶をするとカザリーンは驚いた反応し、扇子で口元を隠す。人が変わったような挨拶の仕方に動揺しているようにも感じる。だが少しだけ目元が緩んだため、何かを考えているのはわかる。
「それでは、そろそろ向かおう」
全員で向かうと門番に紹介されて中に入る。中には多くの貴族たちがまだかまだかと待ち遠しくしている。
「今回は皇帝陛下はいらっしゃらない。お前たちもパーティーを楽しみなさい」
「「はい」」
二人はハンスとカザリーンは別の公爵家に挨拶も向かう。リリアンは友達と言えるほどの人はいない。一人で立って飲み物を飲むことにする。
「おや、誰かと思えば!公女様ではありませんか!」
リリアンが振り向くと綺麗な紫色の令嬢が嘲笑うかのように近づいていくる。彼女のその態度を見ているだけで胸糞悪くなる。リリアンにとって抵抗がある人物だとわかる。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「あら!まさかお忘れですか????酷いですね〜あれほど仲良くしていたのに」
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