第二涙 生き返ったと思ったら……

 輪環りんかが目を覚ましたのは、研究所みたいな感じの部屋だった。

 壁に巨大な画面があって、操作ボタンが並んだテーブルがあって、計器盤からパイプがにょきにょきと生えていて、それが大きな機械とつながっていて……。

 薬品らしい匂いが充満した、あまり居心地のいい部屋ではなかった。

 その部屋の中央に、手術台みたいなベッドがあって、輪環はそこに裸の恰好で寝そべっていた。乳房とお腹にハート型のピンク色のアザがある。

 輪環を、食い入るように見ている異形の人物がいた。

 着ている服は、デザインは司祭風であって、色は墨で塗りつぶしたみたいに真っ黒。頭には、やはりこれも真っ黒な中折れハットを深々と被っている。

 顔には、カラスのくちばしのようなペストマスクをつけていた。

 マスクは真っ白で、動物の骨を材料にしているかのような質感で、実に不気味だ。

 輪環が目をあけると、その怪人が話かけた。

「お目覚めのようだねぇ。ようこそ生きた人間の世界へ」

 癖のある男の声だった。

 輪環は、戸惑ってしまった。

 転生前のリアル世界では、人に歓迎されることはあまりなかったから。

 息をしているだけで迷惑をかけているような、そんな重苦しい気持ちで生きていた女だ。

「私の名はセネカだ。神様から話は聞いておるな?」

「ええ」 

「じゃあさっそくミッションだ。こちらに来たまえ」 

 セネカが服を用意してくれた。

 服に袖を通すと、セネカの案内に従って、となりの部屋に移動した。

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