第40話ゼロの駆け引き

広い?

米軍の基地?

ラバウル?

 逡巡しながら走り寄る男に衝撃の事実を知らされ。

出撃前に祐次から「ワシが死んだら看護婦の須崎八代(すざきやしろ)に会いに行ってくれ!」

 祐次の遺言とも思える日常の会話を思い出し、高知県須崎市出身の須崎八代に会いに行く決意をした。ゼロから降りてポートアイランド南の神戸空港をトボトボと、歩いて三宮から元町へ、高架下商店街を歩いた時、兵庫県警の交通機動隊に保護され、祐次が言っていたシロクマ病院の須崎八代に面会する為に県警のパトカーに乗せられ護送された。

 時代は令和3年、シロクマ病院は、様子が変わり名称がポーラクリニックとなっていた。

クリニックの受け付けに佇む篠山静夫に小ぢんまりとした若い看護婦が挨拶をした。

「須崎八代さんですか?」篠山が、問う!

「いいえ私は曲がり角卯月(まがりかどうづき)です。

祖母の須崎八代は終戦後に私の母を産み、亡くなりました。

 祖母が生きていたら93歳でしたが、院長だった祖母は曲がり角祐次さんを愛し、曲がり角姓が消えるのを恐れた彼女は婿養子を取れと遺言を残したのです。

須崎の時代に曲がり角祐次と知り合い懐妊しましたが、この先子孫が女系で嫁入りして姓が変わる事を恐れたのです。」

 ここまで聴いた篠山は、ファントムに撃たれたキズがパックリ開き、鮮血を迸らせながら「願わくば花の下に春死なん如月の望月の頃。」

と、時勢の句を読み消えて逝った。おそまつ。

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