第25話失語症での吃音

そして退院後間も無く、僕の高次脳機能障害が炸裂したのは言うまでも無い。


僕は田尾寺駅近隣にある別のデイケアサービスに通所していた。


 そこのスタッフ数名が僕の家に集まり担当者会議を始めたある日の事だ。

ヘルパーやPT等々、有資格者が揃っていた。

 後はケアマネージャーだ。そして妻・・・。

「まず初めにご主人と言いますか、当事者である塩とさんの主張からお聞かせ下さい。」当事者って、なんかマズイ事をしでかした者の様な言い方をするけど、何でも言ってやる。

 人の言う事が理解できない失語症の症状が出ていた。

プチン!と自制の糸が切れた時、「りこん・・・・する・・・。」単語しか言えない?

 言いたい筈の言葉が出てこない!無理に発声すれば、吃音になる!


これから細い腕で、倒れた旦那を支えて行こうとしている妻をこてんぱんに叩きのめしてどーする? 

 高次脳機能障害の頭では言いたい事を簡潔に纏められなかった。


「どうしたのこうちゃん?」


と狼狽えている妻を横目で尚も宣う。


「りこん・・・する・・・・。」


 一点を見詰め誰かに脳が鷲掴みされている様な感覚・・・。

危ない奴の様だったに違いない。


 他の同席者の発言者は無かった・・・。


担当者会議に集まったスタッフがドン引きしていたように思えたが、構わなかった。

 僕の主張だけで。

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