第26話半側空間無視(左側が消えて見えない)

担当者会議に集まったスタッフがドン引きしていたように思えたが、構わなかった。

 僕の主張だけで。

僕はただ、蟠りを流してスカッとしたいだけで暴言 を吐いたから・・・、腹には何も残っていなかった。

 失語症と感情失禁がハイブリッドになって高次脳機能障害が出ていたので思いつきで出た離婚したい理由を上手く説明出来ず、担当者会議に参加したスタッフは、脳血管障害の良くある後遺症害と固唾けられたに違いない。

 糟糠の妻・脳をやられた夫・・・。夫婦共々孤独だった。

しかし、前後の見境なく唐突に離婚を切り出す事は、生活条件が整っていればこそ成立する案件だからまだ家中を車椅子に乗って移動する程度の僕は、偉そうに離婚と言える立場ではない事くらい分かりそうなものなのに、悲しいかな脳をやられてしまっているからそこまで判別が就かなかった。

 何はともあれ僕の打ち出した案件はフェイドアウトして行き、何事も無かったように、担当者会議後の生活が始まって行った。

 今後数年間は地獄の苦しみや痛み、葛藤がリターンされる事など知る由もなく無防備で素手で発射された弾丸を受け止めるようなもので、知らないとは恐ろしい事だ。

 でも注意障害は纏わり着いていた。トイレの灯りを良く消し忘れた。

左半側無視。

 左目は見えているものの脳がそれを認知せず、無視するから左側のトレーにある食事を食べ残した。

 右に移行する横書きの文字を読み落とすし、書き間違えた。今でも続いている。

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