第9話ノルディック
刹那、二人の間隙を包むように乾いた緑風が駆け抜ける。
彼女の前髪がサラサラと捲れ上がって白い額が清潔で何とも涼しげな顔立ちだった。
眼を見開いて彼女を観るがいつになく真剣だった。
こう言う時は彼女側に伝えたい事がある?コクりと頷き、「そうですね。」と、返事をして次の言葉を待った。二歩、三歩、前を向いて歩く・・・。
僕は左側の赤い鳥居と草むらの間から雉の雌が出てくる様な気がしてフッと鳥居と山肌を見上げたが、新緑がヒラヒラと風に靡く程度で何時もと変わらない山が堂々とそこに座っていた。
「だから麻痺側の脚は追いついて行こうと必死に健康な右足に合わせるの。」
キッパリと言い切った看護師の望月優希奈(もちづきゆきな)(仮称)さんは、真剣な丸い眼をして僕を見ていた。
が、僕は屋外歩行のアクティブな道路に脚を取られまいとして下を向き向き、彼女の顔をチラ見しながら、左・前・下・前・左の順でノルディックを持ち身体を支えていた。
外旋をしない歩き方を意識して膝頭を伸展させるように歩く。
所謂麻痺足のぶん回しをしない様に歩容を改善させる。
杖なしの方が両足はフリーなので麻痺足が楽な方へ調子を合わせられるから楽だった。
「屋外歩行の方が、麻痺側は自由だから改善が遅いんです。だからトレッドミルの方が有効なんです。」意味が分かるし、説得力がある。
衝撃的だった!子供の様にPウォークを毛嫌いするんじゃなかった・・・。
僕の持論が覆されて、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます