ガッツポーズ

@kyusaku235

気まぐれ

呆れるほどの快晴。痛いほど降りそそぐ夏の日差しと観客の視線。


マウンドに見えるあいつは、赤帽に汗を目いっぱい染めて最後の一球を投げた。


ボールは少し汚れていて、高速で回転しながら僕の目の前に来たのが分かる。


見逃した。


緊張は限界まで高まっていた。音は聞こえなかった。


これはどうだろうか。


少し躊躇した後、後ろを振り向く。


見えたのはガッツポーズだった。


「ストライク。バッターアウト」


審判は最後のサインを行う。

前を向けばあいつがガッツポーズをしていた。


特大の歓声が降りそそいだような気がしたが、その時のことをよく覚えてはいなかった。



なんて青春だ



坊主になってからの12年間、それはどんなものだっただろうか。


何回も喜んだし、何回も泣いた。


ただ、まさか高校生にもなってこんなに泣くとは思わなかった。


僕は親よりも見慣れたあいつの顔を思い出す。


良かった、勝てて。

良かった、あいつとバッテリーを組めて。


もう少し、野球を頑張れそうだ。






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