第4話

 さ~て、これからだぞ。

 次は……、浅井・朝倉攻めだ。

 一乗谷城の戦いもしくは、刀根坂の戦いだな。

 もうね、4ヶ月単位で出兵するのは止めて欲しいよね。出費が凄いことになってる。兵士も疲れが見え始めているよ。


 そうそう、大和は俺の知行になった。これは、歴史通りだな~。

 4~5年早いけど。



「確か、前に浅井軍に裏切られて撤退したんだよな~」


「金ヶ崎の時の話ですな。あの退き口は、生きた心地がしませんでした」


 光秀さん。殿しんがりだったもんね。その後、姉川で仕返ししてるし。


「今回は……、浅井・朝倉の連絡が取れないようになっているので、奇襲はないですかね?」


「そう願いたいモノですな」


 転生時期を選べるのであれば、『金ヶ崎の退き口』前を選びたいな~。お館様は、即時撤退を選んだけど、あの場面は、罠張って誘い込む場面だと思う。

 それに、姉川の戦いだ。包囲するなり、退路を断てば、浅井・朝倉の首も取れたと思う。世界大戦の知識のある俺ならば、負け戦も覆せるかもしれない。

 まあ、これから歴史改変しよう。



 配置につくけど、大きな戦いはない。

 数日後、暴風雨が襲って来た。

 お館様から、呼び出しを受ける。全員だな。


「機会を見定めるように。見逃すんじゃねぇぞ」


「「「はい?」」」


 分かってんのは、俺だけかな?





「佐久間軍、全員準備してね~。何時でも動けるようにね~」


「殿? 外は、暴風雨でしかも夜中ですぞ? 兵を休ませないのですか?」


「朝倉軍が、動きそうなのよ~」


 家臣は、渋々納得してくれる。俺は、暴風雨の中、兵を進めた。

 途中で、お館様の近衛兵と合流した。"馬廻り衆"だな。


「お館様! 手勢が少な過ぎます。うちの部下も使って~!」


「おお! 信盛! 良く来たな! 行くぞ~!」


 お館様は、砦を落としても討ち取らずに解放したんだ。情報操作だよね。そんで、側近の"馬廻り衆"だけで追撃ってなによ?

 まあ、成功するので、誰も文句を言えないんだけどね。

 それに、俺だけは叱責を受けない立場になった。

 追撃戦に移行する……。



 2万の軍勢だった朝倉軍は、もう見る影もない。この時代の兵士って逃げちゃうのよね。主君を見捨てると、自分の家や畑も失うと分からない人たち。


 戦闘開始から6~7日で、朝倉家全滅ってなによ?

 燃える一乗谷を見て思った。


「のう、佐久間殿。知っていたら教えて欲しかったんですけど?」


 光秀さん以下、皆青い顔だ。これから叱責を受けるんだしね。


「お館様の本陣が動いたので、ついて行っただけなんすよ。あれは……、予想外でしたね~」



 その後、皆を集めてお説教が始まった。


「あんだけ、強く命じたのに! 出撃しないとは何事だ! この出来損ないの集まりが!」


 扇子で、ペシペシと家臣の頭を叩いて行くお館様。

 そんで俺の前で止まった。


「信盛! そなただけは、良くついてきた……」


 肩を掴んで、褒めてくれた。

 この場での反論はしない。涙を流して、演出をするのみだ。


「はは~。ありがたき幸せ」


 後日、地行の加増があった。



「歴史って、知っていると変えられるんだな~」

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