第3話

 さて、どうするかな~。

 もう武田軍が近い。浜松城は、防衛の構えだ。

 小さな城は、次々に落とされている。今は、見捨てるしかない。


「ちょっと、小細工しておくか……」


 俺は、部下を使って三方ヶ原方面に密偵を放った。

 まあ、言い訳には使えるかな?



「武田軍が、二俣城を出ましたが、浜松城は素通りの模様!」


 徳川軍が、殺気立つ。

 武士の面目丸潰れなのは、史実通りだな~。敵は、徳川ではく織田だと言ってんだし。

 とりあえず俺は、静かに見守った。


 次の日に、家康さんが立ったよ。


「武田軍の背後を突く!」


 徳川の家臣は、反対してんだな~。

 そうだよね~。二万を超える軍に突撃はしたくないよね~。分かるよ。

 ここで、部下が来た。

 手紙を受け取る。


「家康さん。武田の動きがおかしいっす」


「んっ?」


「三方ヶ原で陣取ってるって。堀江城を落とすみたい。本陣は、まだ動いていないよ。今行くと、奇襲になんないっす。二万の軍勢に正面から当たる事になるんじゃないかな?」


「なんと? 佐久間殿は、武田の動きを掴んでおると?」


「徳川殿。佐久間どんを甘く見るなし……。織田家の古強者ばい」


 平手さんが、援護してくれて軍議が終わった。

 出撃はせずに、籠城になったんだ。


『これで、平手さんも死なせずに済む。徳川軍も壊滅的被害を出すこともない――はず』


 でも、もうちょっと動こうか。





 武田軍が、尾張に入った。

 それを見て徳川軍は、奪われた城の奪還だ。

 まず、二俣城を取り返す。守備兵がほとんどいなかったよ。その後に、東三河と遠江の城を奪い返して行く。

 特に長篠城だ。農民を味方につけないと、将来困ることになる。


「補給とかない時代なんだな~。現地調達は、農民には迷惑だよな~」


 軍糧を吐き出して、農民を救って行く。この時代にはまだない施しのはずだ。

 僅かに食べただけで、農民が動き出した。逞しい人たちだな。

 獣を狩ったり、山の幸で飢えを凌ぎ出した。本当は、飢えて死んでいた人たち……。これで、大丈夫だろう。


 武田軍は、年を越すと進軍が止まった。

 そんで、そのまま甲斐に帰ったよ。


「なんだったんですかね?」


 家康さんからだった。


「信玄さんが、死亡したのかな? そんで、帰ったんだと思います。甲斐の神社に密偵を送るとハッキリしますよ」


「「「えええ!? 佐久間殿は、どこまで情報通なんですか!?」」」


 情報戦は、大事だよね。



 のんびりしていると、将軍・足利義昭の挙兵が終わってしまう。

 平手さんだけを残して、俺は帰路についた。

 道中で、将軍の挙兵の報告を受ける。

 宇治の槙島城だ。丁度帰り道であり、タイミングもばっちりだったな。


 お館様に挨拶に行く。


「武田は、撤退いたしましたので、帰って来たっす」


「ご苦労。ちょっと、将軍を追い出すから手を貸してね」


「OKっす」



 槙島城は、その日のうちに陥落した。まあ、油断しきって兵士も少なかったしね。

 義昭さん……、刀取られているけど、元気でね。

 秀吉の時代で貴人になるんで、そこまで頑張って生きてね。


 それと、「信長を討ち取りし……」って手紙は止してね。

 未来で混乱するのよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る