第1話

 激しい火の手が上がる王都の様を眺める僕は静かに現状を分析していく……襲撃者はムンド教団の者かな。

 総動員というレベルで多くの教団関係者が攻勢を仕掛けてきている。


「……決めに来たか」

 

 僕はムンド教団の本気具合を見て


「……月が綺麗だ」

 

 満点の空に輝く満月へと視線を移した後、僕は今いる場所から降りる。


「ど、どうでしたか?」

 

 下へと降りてきた僕へとサーシャが心配そうに声をかけてくる。


「割と不味そう……少なくとも悠長に夕食を食べている余裕はなさそうだな」

 

 自分に聞いてきたサーシャの言葉に僕は首を振って答える。

 今、僕はサーシャに誘われた彼女と個室のあるお店へと夕食を食べに来ていたのだ。

 そんなとき、急に轟音と大量の魔力が膨れ上がったのを感知し、現状を確認するために僕はお店を飛び出して遥か上空へと飛び上がって確認していたのだ。


「……というか、クレアは?」


 僕とサーシャの夕食の場にはクレアもいたはずなのであるが……いつの間にか彼女がいなくなっていた。


「……ッ!?あ、あれ!?クレアちゃんは!?」

 

 僕の言葉を聞いてサーシャが焦ったような声を上げる。


「さ、さっきまでここにいたんですけど……あ、あれぇ!?」


「……やっぱりか」

 

 大慌てのサーシャを横目に僕は小さく呟く。


「とりあえずはクレアの捜索から始めるべきかな?」


「そ、そうですね……こんな時にどこ行っちゃったのでしょうか」


「まぁ、いずれ会えると思うよ」

 

 僕は心配そうにしているサーシャを安心させるように口を開く。


「ほ、本当ですか……?」


「うん。本当だよ」

 

 僕はサーシャの言葉に頷く。


「とりあえずはここを出ようか。割と急いで行動する必要があるだろうからね」


「そ、そうですね!」

 

 僕の言葉にサーシャは今の今までもっていたスプーンを置き、慌てて立ち上がる。


「……店の出入り口の方はバタバタしていると思うから、強引に出るね」


「へ?」

 

 僕はサーシャのことをお姫さまだっこで抱え、跳躍。

 先ほど開けた穴を通って外へと出る。


「きゃぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 サーシャの絶叫と共に僕は夜の街を駆け抜けるのだった。

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