第三章
プロローグ
「何を言っているの?そこに人なんかいないわよ?」
ノーネーム。
名前なき少年は生まれながらの神童であり、普通の人には見えぬものが見えていた。
「……そう」
だがしかし、誰もが出来ないことを出来るのが当たり前だったノーネームは自分にしか見えぬものがいても疑問には思わなかった。
ノーネームは自分にだけ見える存在について何も言及することはなくなり、一人で自分にだけ見える『 』たちと交流を続けていた。
時には戦って鎮め、時には看取り、時には交友を持ち。
「んっ」
それが普通であり、彼がブレノア教の異端審問官として神に仇為す者を倒すことも普通であった。
「可哀想……」
そして、ノーネーム、もといリンクは毎晩ただ一人で月に向かって手を伸ばすだった。
■■■■■
「……そう、お姉ちゃんはそうなったんだ」
幼くして家族を失い、姉が裏切ってもリンクは何も揺らがなかった。
彼は感情はあったが、それを表現する術を知らなかったから……何があろうとも心を割り切ることが得意だったから。
「墓ってどうやって作るんだっけ?」
すべてを失ってもなお、それでもリンクは殺し尽くした姉も、『 』も一切恨むことなくただただ地面に血を流して倒れる自分の家族に親戚の後処理を始めるのだった。
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