第16話

 聖騎士団到着後のレジスタンス対処は実に迅速だった。

 一瞬にして街を襲っていたならず者たちを撃破し、そのままの勢いで完全にレジスタンスの拠点まで制圧。

 今回の一件だけでかなりの数のレジスタンスを叩き潰すことが出来ただろう。


「……それで?一体貴方は何者なのかな?」

 

 無事に今回の騒動が収束しつつある中、僕はクレアを聖騎士団長に預け、裏路地の方へとやってきていた。

 明らかに普通ではない雰囲気を漂わせる男が今、裏路地へとやってきた僕の前に立っている。


「……ぁ、あ、あぁァァァァァァアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」

  

 僕に話しかけられたその男は頭を押さえて叫び声を上げて体を捩らせる。


「……」

 

 正気とは思えない狂人を前にしても一切動じず、僕は冷静に結界を貼っていく。


「なぁァァァッ!」

 

 自分の方へと突撃してきた男の頭を僕はつかみ、そのまま地面へと叩きつける。


「……ッ!?」


「ワンパターンがすぎる」

 

 僕は男の頭へと自分の腕を突っ込み、直に男の脳みそへと触れた状態で黒魔法を発動し、強引に男を僕の色に染め上げていく。

 

「……ッ!?」

 

 その途中で、明らかな異物を感じた僕は慌てて男から距離を取る。


「……神の残り香」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 男の口から滂沱のごとく大量の何かが漏れ出し、それが徐々に何かを象っていく。


「……」

 

 僕は断罪の大鎌を取り出し、最大限の警戒を込めて構える。


『──────ッ!!!』

 

 自分のもとに向かってくる『何か』。

 次元の違う存在たる神の残り香、その残滓へと僕は断罪の大鎌を振るう。


『─────ぁ』

 

 いくら相手が神とはいえ、その残り香程度には負けるつもりはない。

 一刀の元で消し飛ばした僕はその手から断罪の大鎌を離す。


「……にしても、だ。何故に神の残り香がこんなところに?」

 

 自らの体を巣食らってた神の残り香がなくなったことでその体をぐちゅぐちゅに溶かした男を前にする僕は首を傾げるのだった……一体何を考えているのだろうか?

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