第15話
想定外。
現状況を言い表すのであればその一言しか言えないだろう。
教会に目をつけられている中で動かないと思われていたレジスタンスが大々的に動きだし、しかも、王侯貴族を狙うのではなく街中を狙うというその組織の行動理念と目的から大きく逸脱しているレジスタンスの行動を予測するなど無理であろう。
「な、何なんだ……これは」
レジスタンスの面々とこの街を守る兵隊が激しくぶつかり合う街の中で、未だにレジスタンスの面々の魔の手が伸びてきていない街の中心部へと屋台のおじさんと共に逃げてきた僕は震えるおじさんの横で静かに現在の情勢を見極める。
衛兵が劣勢ではあるが、かなり耐えている。
これだけ耐えてくれれば割りと近くにいる教会勢力の援軍が到着するまでの時間くらいは稼いでくれるだろう。
「……むぅ」
問題なのは街の情勢下よりもクレアであろう。
「……うぅ、あぁぁ」
僕の手の中でうめき声を上げるクレアの頭を撫でながら彼女についての思考を巡らせる。
うめき声を上げる彼女のヴァイオレットの瞳は、その色が徐々に澄んだ青色のものへと変わっていっていた。
「だ、大丈夫なのか……?その子は」
「……わからない。こんなことになったのは、初めてだから」
屋台のおじさんの言葉に対して僕は首を振って否定する……今のクレアが大丈夫か、どうかなど。
今の僕に判別出来るはずもなかった……僕の黒魔法ですら、この子に何の影響も与える事ができなかったし。
「そ、そうか……早く、お医者さんに見せてやりたいが」
「……こんな状況じゃ」
街がレジスタンスの攻撃を受けている中で、クレアを医者に見せることは不可能に近いだろう。
僕が出たら一瞬で解決するが、僕は暗部の人間。こんな街中で戦うわけにもいかないのだ。
「だ、大丈夫だ……必ず、衛兵がなんとかしてくれるから」
未だ戦闘音が街中に響く中でも僕を安心させるべくおじさんは声をかけてくれる。
「……うん」
そんなおじさんの言葉に僕は頷く。
「……あっ」
そんなときだった。
「どうした?坊主」
「……教会。教会の人たちが来た」
「教会……?って、あれは!」
僕の視線の先。
そこには天を駆る馬、白き翼を持つ立派な馬の魔物たるペガサスに乗った白銀の鎧を纏いし男たち。
「聖騎士団!」
ブレノア教の旗を掲げ、空を走る彼らこそが人々の拠り所たるブレノアの最高戦力とされる聖騎士団たちだ。
そんな彼らが援軍としてこの街にやってきていた。
「良かった……これで解決するぞ!」
聖騎士団を見たおじさんは安堵の言葉を漏らすのだった。
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