第14話

「今日は早く仕事が終わったね!」


「うん。そうだね」


 今日の仕事はいつもより早くに終わった。

 客が少なくすぐに暇になってしまったので、店長から今日はもう上がって良いと言われたのだ。

 昨日、とあるイベントで冒険者のみんながみんなたらふく酒を飲んだせいで二日酔いとなり、家で休んでいるのだ。

 なので客が少なくなっているのだ。


 それとお小遣いを渡してくれて、夜の街で遊ぶが良いと。

 何故かそう言った店長の頭をティーンさんが叩き、その後夜の屋台は昼の屋台とは少し違うからクレアちゃんと一緒に楽しんできてね、優しく教えてもらった。

 なんか、僕結構子供扱いされてない?

 夜の街の意味くらいわかるぞ?

 まぁ、別にいいけど。


「あ!あれ美味しそう!」


 夜の街では確かに昼の時より屋台は増えていて、道具とか素材とか色々な屋台が見える。

 しかし、クレアにとって道具や素材なんて興味ない。

 食事の屋台にしか興味なんてなかった。


「お。そうだね。あれにしようか」


 僕は屋台で色々なものを買い食いしながら街を歩く。


「あ、おじさん」


「おじさんじゃねぇよ!お兄ちゃんだっつぅーの!」


「アハハハ!」


 僕とクレアはすっかりおじさんの屋台の常連さんになっていた。

 ここの串焼きは非常に美味しいのだ。

 僕がおじさんの屋台の前でクレアと一緒に串焼きを頬張っていた。

 

 そんな時。

 空気を揺らす轟音が。

 つんざくような轟音が地面を揺らすほどの振動を起こす。


「わっわっわっ!」


 その轟音。

 この音と衝撃は、爆発……ッ!!!


「……ッ」


 爆発の影響で建物が崩壊し、瓦礫が落ちてくる。

 僕とクレアに向けて。


「あっぶねぇ!」


 そんな中、おじさんが僕とクレアを突き飛ばす……ッ。僕たちを突き飛ばしたことで前のめりなったおじさんの頭上には瓦礫が……あれは無理だな。

 自分たちを助けるべく動いてくれたおじさんの命を早々と僕が見捨てる中。


「だめぇー!」


 クレアを中心として魔力が暴発。

 全ての瓦礫を消し飛ばした……何、が?


「へ?」


 おじさんもぽかんと口を開けている。

 この騒動を引き起こしたと考えられるクレアは魔力を使い果たしたのか、バッタリと気絶してしまった……さっきの。少し、本当に少しだが僕の黒魔法に似ていた。

 僕に似た容姿。僕の固有魔法である黒魔法に少し似ている魔法。


「……クレア」

 

 僕の前で倒れる少女は、一体、何者なの?

 ……もし。

 もしもの話しだ。

 本当にもしものときの話だ。

 もしなんかあったとしたら……その時僕は。

 

「何したの?」 

 

 何があろうと、敵が何であろうと、僕は僕の職務を遂行するだけだ。


「坊主!ボケっとしているなよ!何が何だがわからんが、ここはまずい!?一先ず逃げるぞ!」


「う、うん」

 

 気絶したクレアを抱きかかえるおじさんを追って僕も走り出すのだった。

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