第11話

 南方にあるとある街へとやってきた僕とクレア。

 そんな僕たちは今、街の中を散策しているのだった。


「お兄ちゃん!こっちこっち。あれ、買って!私あれが食べたい!」


「あぁ、うん。買ってあげるから少し待って!クレア!ステイ!」


 僕は楽しそうに駆ける小さな女の子、クレアを追いかける。

 はぁー、本当に手のかかる。

 聖騎士の駐屯所を後にした時、クレアが僕の腕から降り自己紹介を始めた。


 彼女が言うには名前がクレアで年齢は6歳。親の顔も知らず、ほとんどの時間を真っ暗で狭いところで過ごしてきたらしい。

 確かに酷い境遇だった。

 だがしかし、別にない話ではない。

 奴隷とかスラムのガキとかなら似たようなこともある。

 わざわざ助けることのものではない……爺ちゃんがお人好しすぎるのだ。

 それか、何かこの子だけの特別があるかだ。


「すみません。これ一つください」


「おうよ!」


 僕はクレアが欲しがった屋台の串焼きを2つ買う。


「それにしても珍しい二人だな。兄妹か?」


「うん」


「いやー、ここじゃ見ない顔で何しに来たんだい?」


「僕達が暮らしてた村が野盗に襲われて……」


 僕は悲痛気な表情を浮かべて話す……自分の見た目はお世辞抜きに素晴らしい。こうした表情を浮かべるだけで大体の人間から同情を誘える。

 

「そうか……それは大変だったな。それでここに来たってわけかい。しかしなぁ、最近ここらもきな臭い。一体何が起こるのかわかったもんじゃない。別の所行ったほうが良いじゃねぇんか?」


「でも、僕達はこれ以上移動できないから。ちゃんとここで仕事も見つけたし……それに、何かあってもおじさんたちが助けてくれるでしょ?」


「お?がっはっは!そうだな!守ってやるよ!ガキの二人くらい!それと、おじさんじゃなくてお兄さんだ。そこんところ間違えんなよ?ほら、串焼きだ。サービスだ。金はいらねぇ」


「ほんと!?」


「おうよ!こんな小さなガキ二人から金を取るような真似はしねぇよ!」


「ありがとう!おじさん!また来るね!」


 僕はおじさんにお礼を言ってクレアと一生にその場を離れた。


「お兄さんだ!って言ってんだろ!」


「頭部が寂しくなりかけててお兄さんはきついよ!おじさん!」


「う、うっせいわい!デリケートなとこに触れんな!」

 

 僕は軽くおじさんと会話をこなした後にクレアと共に道の端により、貰った串焼きを頬張る。


「「んー、美味しい!」」


 僕とクレアの言葉が重なる。


「美味しいね!」


「うん。そうだね」

 

 クレアの言葉に僕は同意する。


「次は!次は!どうする!?」


「うーん。そうだね」


 僕はその場を見渡し、怪しげな動きをしているやつの気配を、魔力をマークしてずっと追いかけていく。


「次は!あそこ行く!」


「はいはい。じゃあ行こうか」


 僕はクレアと一緒に他の屋台にも巡るのだった。

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