第5話
僕が学園に通えなどと言う狂った命令を受け取ったあの部屋で、僕は再び教皇である爺ちゃんと会っていた。
「爺ちゃん。これが調査結果」
レイン先生の実家であるミーナス侯爵家に泊まること一週間。
その成果が僕の提出した書類一枚に詰まっていた。
「なるほどのぅ」
爺ちゃんがざっと報告書に目を通す。
「完全に黒じゃのぅ。しかもほぼ全員」
「ん。ミーナス侯爵家以外は全部アウトだった」
ミーナス侯爵家以外の貴族の家からはレジスタンスに関わりがある、協力している証拠がわんさか出てきた。
それだけでなく南にいる商人、王都から税収の確認などするために派遣されている監査官、騎士までも。
その全てがレジスタンスに染まっていた。
もはや異常だろう。
謎の男……確実に強力な洗脳方法を持っているのだろう。
実に面倒な相手であると言わざるを得ないだろう。
「ふむ。ありがたい。この情報はこちらで上手く活用させてもらうことにしよう。後はこちらに任せてくれて構わない」
「え?」
僕は爺ちゃんの言葉に思わず疑問の声を上げる。
「うむ。だから後はこちらに任せてくれ」
「は?いや、なんで?」
「もうすぐ中間試験だろう。お前は中間試験に集中すると良い」
「え?いや、中間試験なんかどうでもいいんだけど……」
本件は既に看過できないほど大きな事象だ。
ここに至っても僕と言う手札を放置しておく必要などどこにあるのか。
「そんなことを言うな!お前は今、学生なのだ。誰がレジスタンスとの戦いを優先して中間試験を諦める学生がいるか!」
そもそもレジスタンスと戦うことになる学生が僕以外いないのでは?
クラスメートで人を殺したことがあるやついなかったぞ?
「だが、心配なのだが」
普通のレジスタンスなら僕がいなくてもなんとかなると思うが、相手は普通じゃない。
どうなるかわからない。
それを他の人たちに任せるのは心配がかなり残る。
「案ずるな。儂らも出る」
そんな僕の心配を他所に、爺ちゃんが自分も、自分たちの一族も出ると僕に向かって断言する。
「……わかった」
僕はしぶしぶ頷く。
確かに爺ちゃんたちが出てくれるというのならなんとかなるだろう……一応、教皇の一族もかつてはノーネームの一族と同等の力を持った一族であり、最近の力関係としては僕らの一族にかなり傾いているが、それでも教皇の一族は格別とした力を持つ一族である。
教皇の一族が出ると言うのであればある程度は安心できるだろう。
「でも、中間試験が終わったら僕もすぐにそっちに行くから」
「うむ。それならばよい」
「はぁー」
なんで中間試験なんか……まぁ、でも相手はレジスタンスだ。
僕がいなくてもなんとかなるだろう。
「じゃあね」
「うむ。それではまたな」
僕は爺ちゃんに見送られ、この場を後にするのだった。
あとがき
カクヨム甲子園作!読んでぇ!どちらとも短編ですぐ読むことが出来ます。
『一つの本から始まるラブレター』
『https://kakuyomu.jp/works/16817330663174520007』
『集中力は蜜と愛の味』
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