第6話
中間テストが近づいている中。
「あー」
「うー」
「えー」
教室中にいろんな人の苦痛の声が響く。
クラスメートたちの机にはたくさんの教材が載せられていて、皆が死んだような目で一心不乱に手を動かしている。
「な、なにこれ」
サーシャが引き気味に話す。
僕でもわかる。
別に割と見慣れている光景なのだが、普通の人間の生活においてのこの光景はなかなかないということくらい理解できてきた。
「はい!すみません!すみません!すみません!やります!やります!やらせてください!やりたいです!」
一瞬手の動きを止めたクラスメートの一人がいきなり席を立ち手を上げて叫んだ。
「ひぃぃ!」
それを受け、サーシャがとうとう悲鳴を上げる。
完全に洗脳だな……あの当主一週間で何をしたのだ。
僕たちがミーナス侯爵家の領地に滞在していたのはたった一週間である。
僕とサーシャと二人で遊んでたり、勉強会していたのでみんなと接していなかったのだが、こんなことになっているとは。
謎の男はあの当主なんじゃないか?
かなりの洗脳力だぞ。
「ははは、父さんは変わってないなー」
教室に入ってきたレイン先生がみんなの様子をも見て苦笑する……前からなのか。
なるほど、あんな親だったらレイン先生が王族、公爵を押しのけてこの学園で主席を取れたのが理解できる。
「おい!授業を始める!終わらせろ!」
レイン先生がよく通る声で叫ぶ。
「「「はい!」」」
レイン先生が挙げた声にクラスメートのみんなが声を揃えて返事をする。
そして、そのままきびきびとした動きで勉強道具を片付け、ビシッと姿勢を正して
座る。
「おう。いいな。便利で楽だ。おい、お前らも席につけ」
「はーい」
僕たちもみんなに習い、席に座る
「よし。とうとう中間試験も明日だ。各々が勉強を熱心に取り組んでいることはまぁ、見ればわかる。元々これらの試験はお前たちが不利なのように作られている。まぁその中でも頑張れ。応援はしている」
ふむ。
レイン先生からのメッセージって珍しいのではないか?
若干適当感はあったが、普段事務的な話しかしないので新鮮さを感じる。
「それでは授業を始める。教科書38ページを開け」
先生の言葉と共に授業が始まるのだった。
■■■■■
午前の授業が終わり、お昼の時間となった。
「今日もたくさん並んでいるですわ」
「うん、そうだね」
「そうですね」
「まぁ、こんなもんやろ」
「……」
僕たち五人は昼食を食べるため、へとやってきていた。
食堂にはすでに長蛇の列が形成されている。
ちなみに、食堂のシステムとしては食堂のおばあちゃんに頼みたいものを頼み、出来上がるのを待つのだ。
おばあちゃんの数も料理人の数も以上なまでに多い。
なのだが、生徒の数も多いのだ、結局のところ毎日食堂は人手不足で悲鳴を上げている。
「うーん。多くて迷っちゃいますねー」
「だね」
バースとアリスとリリスはガッツリ食べるので食堂の中で最も量の多い丼物の売り場に向かっている。
僕とサーシャはそんなに食べる方ではないので、そのどれもが巨大で揚げ物が大量に乗せられていることの多い丼物なんて食べられない。
なので、僕とサーシャは毎日ぶらぶら歩いて、何食べるのか探すのだ。
「うどんにでもしようかな?」
僕は東洋の島国の名産物であるうどんを頼んでいる人を見て思う。
「うどん……いいいいね」
以前うどんを頼んだ時、かなり美味しかったのだ。
「何のうどんにしようかな?」
「うーん、そうですね。きつねうどんにでもしませんか?」
「んー。きつねうどんか。前食べたから、カレーうどんにしようかな」
「あー、カレーうどんですか、それも良いですね。じゃあ各々頼みましょうか」
「だね」
僕とサーシャは共にうどん売り場へと向かうのだった。
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