第17話
ブレノア教の頂点に立つ教皇。
その人に会うため、僕は教皇庁のあるブレノア市国へとやってきた。
「やぁ爺ちゃん。バンバラの行方はわかった?」
教皇庁へと忍び込んだ僕は私室でくつろいでいた爺ちゃんに話しかける。
バンバラの行方。
国立国教騎士学園を退学になったバンバラの行方は現在、わからなくなっているのだ。
「お?ノーネーム、いや今はノーンじゃったな。いや、まだわかっておらんの。かなり狡猾らしくてのう」
「そっか」
教会もわかっていないのか。
僕の方でも調べているのだがどこに行ったのか未だわかっていない。
最も可能性が高いのはレジスタンスか教団であろう……ちらにせよ面倒な相手であることには変わりないだろう。
「じゃあ何かわかったら教えて」
「うむ。それで、学園は楽しいかのう?」
「うん、友達も出来たし」
僕は爺ちゃんの言葉に頷く。
「……フォフォフォ、そうかそうか。そうか……であるのならばよかった。それで?恋人は出来そうか?」
「むり。そもそも恋だとか、愛だとかがわからない……いつ死ぬかもわからない存在に対して特別な感情なんてどう、抱けと言うのか」
人は簡単に死ぬ。
いつ自分の目の前からいなくなるのかもわからないような相手に僕は特別な感情を抱ける気がしない。
少なくとも僕レベルで生まれから特別な人間か……神様くらいでないと。
「……そうか。もうしばらく学園で生活し、平和な時を過ごすと良い。今のところ業務の滞りはない」
「わかった」
僕は爺ちゃんの言葉に頷く。
「じゃあ……僕はもう行くよ、明日も学校があるし」
「フォフォフォ、うむ。そうか。いってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
僕は転移を使い自分の部屋に戻った。
■■■■■
実に平和ないつもの学園生活。
「ちっ。平民が」
「ひぅ」
「ひっ」
僕は自分とサーシャに向かって毒づいた生徒を睨みつけ、追っ払う。
ちょっと殺気を込めて睨んでやるだけで逃げていくから楽だ。
僕たちはイプシロンクラスからデルタクラスに上がったわけだが、他クラスより身分的に劣るものが多いうちのクラスが他の生徒に馬鹿にされていることには変わりない。
むしろ、周りの生徒からは僕たちが何かずるい方法を使ったと思われているのでイプシロンクラスだったときより毒づかれることが多いような気がする。
「あ、その、ありがとうございます」
僕の隣に歩いていたサーシャが僕へと感謝の言葉を告げる。
「ん?何が?」
だがしかし、お礼されることをした覚えのなかった僕はサーシャの言葉に首をかしげる。
「いや、何でもないです」
「それなら良いけど……あ、そうだ。今日一緒に昼ごはん食べに行かない?時間あるよね?」
今日の時間割は変則的。
学園の外へとご飯を食べに行っても時間に余裕はあった。
「ふえ!?」
「ん?」
「あ、はい!是非!」
「じゃあバースたちも誘おっか」
「……」
「ん?」
僕は一瞬で表情が抜け落ちたサーシャを見て首をかしげる。
「ううん。なんでもないです。そうですね。みんなも誘いましょう」
「ん」
ふむ?
サーシャはいったいどうしたんだろうか?
まぁ、良いか。
■■■■■
みんなで昼食を取った後。
学園の外で昼食を取ってもなお時間の余っていた僕たちは王都にある大きな武器屋へとやってきていた。
「バース。見てみて」
「おん?」
僕は武器屋でよくある大剣の大きさよりもよりも更に一回り大きなあまりにも巨大すぎる大剣を見せる。
「なんだ?それは……」
「こんなの使ってみない?バースなら行ける気がするんだけど」
「いや、そんなもん使ったら機動力が落ちるだろ」
「何を言っているのさ。これを使っても機動力を落とさないように頑張るんでしょ」
質量こそパワー。
質量こそ正義。
重ければ重いほどに強いのだ。
急成長しているバースならばいけるだろう。
「お、たしかにそうかもしれねぇな」
僕の言葉にバースが速攻で乗ってくる。
「ノ、ノーン君。私はどんなのが良いでしょう?」
そんな最中、
「うーん。そうだな」
僕はサーシャに合いそうな武器を探す……サーシャに合いそうなのかぁ。結構難問かも
「ん?あぁ、ごめん。こんなのがいいんじゃないかな」
僕が見せたのはスタンダードな長剣。
「サーシャは何でもできる万能型だからね。王道を進むのが一番いいと思うよ」
「……なる、ほど……ふふふ。そうですか。それではこれを買いましょう!」
僕の言葉と長剣を受け取ったサーシャは笑みを浮かべ、即刻で買うと宣言する。
喜んでくれたようで何よりである。
「ノーンの武器ってなんですの?色んなものを使っているイメージがあるんですが、これが一番!って武器があったりするんですの?」
「……」
「ん?僕?僕はね……大鎌だよ」
アリスからの質問を受けた僕は彼女の質問に答える。
そして、武器屋の壁にかけられていた僕の背丈を超えるほどの大鎌を手に取り、それを軽く振り回す。
「うん……結構いい感じかも。普段使い用の持っていなかったし、買おうかな?」
「こ、こんなゴツイ装備だったのな、お前……」
自分の背丈よりも長い鎌を構える僕を見て、バースが少しばかり引き気味に呟くのだった。
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