第13話

 どんなイレギュラーがあろうとも一先ずは無事に終わった実践演習。

 演習を終えた僕たちは各々手にした魔石を持って最初のスタート地点に戻ってきて魔石を先生方に提出していた。

 

「な、なんだ、これ。不具合、か?」


「いやいや、機械は正常だぞ?」


「不正だ!不正に決まっている!」


 結果発表のための魔石の測定をしている先生たちはEクラスが持ってきた魔石の総魔力に慌てふためいている。

 その理由は単純。

 総魔力量がバグっているとしか言えないような数値であったからだ。

 

 魔石の総魔力量を図る機械で測定された魔力量は限界の999999。ゴブリンの魔石は平均で一個10くらいなので最低10000体は狩らなくていけない。

 そんなのは到底無理な話である。


「お前!何をした!」


 バンバラたちのクラス、Dクラスの担任が僕らへと突っかかってくる。


「いや、変な魔物に会っただけですよ?」


「何だと!?くだらん嘘を!あれを倒せ」


「ね?」


 僕は自分が異端審問官であることを教えられているレイン先生に向かって告げる。

 爺ちゃんから学園長と僕の担任には僕の正体を教えてあると入学してから一週間くらい経ったときに教えてくれたのだ。


「っ!やめろ!わかった!」


 レイン先生が切羽詰まった様子で叫ぶ。 

 そのあまりの必死さに全員が気圧される。


「今日の実戦演習は終わりする!成績は後日発表させてもらう。では解散!」


「はぁ!?お前!何を勝手に!」


「黙れ!いいから!解散!おい、後で訳は話す!いいから今日は解散だ!」


「だからなんでお前が!」


「わかった。何かわけがあるのだろう」


 二人の怒鳴り合いに、学年主任の先生が割って入る。


「すまないがアクシデントにより今日は解散だ。成績は後日発表する。では、各自自分の寮に戻ってくれ」


 学年主任の先生の言葉により今日は解散になることが決定した。


 


「……あぁ、レイン先生。ちなみに自分の正体は門外不出です。貴方が教皇猊下より特別な許可を下りているなら構いませんが、あまり話されても困りますから、ね?」


「ひっ!?」


 それにしてもあの爺ちゃんが僕の正体を明かすことを認めるとは。

 随分とまぁ、レイン先生も訳アリと見える……ワンチャン、こいつか?


 ■■■■■


 実践演習は結局、一位がEクラス、二位がAクラス、三位がBクラス、四位がCクラス、五位がDクラスと言う結果となった。

 

 そして、僕が倒したあのアンゲロスはバンバラが人工の森に持ち込んだということになったらしい。

 理由はムカつくEクラスの奴にぶつけて試験を台無しにしてやるため、だそうだ。

 

 今回の一件の罰としてバンバラは学園を退学させられることになった。

 バンバラの家は侯爵でかなり高かった。

 この学園の長い歴史の中で侯爵という爵位の高い者が退学になったのは初めてのことらしい。

 

 それにしても、アンゲロスを運んでこれる人なんて限られている。

 バンバラだけではなくデルタクラスの担任では確実に不可能だ。


 だが、これでこの学園内にどこかの勢力の手が伸びていることがわかった。

 ムンドゥス教団か、はたまたレジスタンスか。

 どの勢力が相手であったにせよ調査が必要だ……それも、早急に。


「よかったですわ!これでDクラスですの!あのボロい寮とはおさらばですの!」


 レイン先生から一通りの説明を聞いたアリスが喜びの声を上げた。

 この試験を受けて、アルファクラスのポイントが332pt、ベータクラスのポイントが273pt、ガンマクラスのポイントが236pt、デルタクラスのポイントが186pt、そして僕たちイプシロンクラスが203pt。

 

 僕たちのクラスポイントがデルタクラスポイントを越え、僕たちがイプシロンクラスとなったのだ。

 これで寮も変化だ……初っ端のイベントでクラスが入れ替わるなんて誰も予想していなかっただろう。


「普通こういうのはちょっとずつちょっとずつ積み重ねていって達成するものではないんですか?なんというか、あまりにもあっさりとしすぎていてちょっと実感が湧きにくいです」


 ふむ?別に上がれたのだからいいのではないか?

 それに任務を、目標を達成するのは早ければ早いほどいいだろう。


「まぁな。だが、この機会を逃せば上がるのは困難になるぜ?もともとEクラスがDクラスになれるように試験が設定されてねぇんだよ。試験を重ねれば重ねるほどに上がるのは難しくなるだろうね


「そ、そうなんですの」


「いや、お前はなんで知らねぇんだよ。親から聞かされていねぇのか」


「いやぁ、ちょっとですの」


「お前は本当に貴族なのかよ」


 バースは呆れたようにつぶやく。

 それに対しアリスは苦笑気味だ……そういえばアリスの家に双子の女の子が生まれたという記録をみたことがないな。

 アリスの家の当主とは会ったこともあるが、その人からご子息の話は聞いたが、双子の子の話は聞いてない。

 うーん、後で調べておくか。

 まずはこの学園内に手を伸ばしてきた異教徒共をあぶり出すのが先だが。

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