第11話
その翌日のこと。
僕たち一年生の全員が国立国教騎士学園内に存在する人工の森に集まっていた。
一年生が全員集められて、各クラスごとに集まって各担任の先生から説明を受けていた。
何の説明か。
それは一年生に最初に訪れる大型演習。
国立国教騎士学園の先生たちが用意した人工の森で実際の先頭に身を落とす演習についての説明である。
「今回の実践演習は、五人班を作って行ってもらう。君たちに与えられる課題はゴブリンの魔石を持って帰ってくること」
ゴブリン。
それはいつからか現れたこの世界のバグである魔物が一種である。
この世界には魔物と呼ばれる異端の存在がいる。魔物には生命を動かす臓器などは一切存在せず、死んだら魔石と呼ばれる魔力の結晶を落として消滅する。
人間の生存圏に存在する魔物は駆逐されているが、未開拓の地には未だに数多くの魔物が存在している。
そして、その魔物は人間の生存圏にやってきて人へと牙を剥いたり、駆除の追いつていない道を塞いだり、人々にとって看過できない脅威の一つなのだ。
そんな魔物の脅威から人々を守るのも騎士の仕事の一つだ。
レイン先生は説明を続ける。
「以前見せたptのことをおぼえているだろうか?この演習での成績はそのptに反映される。一番持ち帰った魔石の総魔力量が多かったクラスから順に、一位が50pt、二位が45pt、三位が40pt、四位が35pt、最下位が0ptとなっている」
ふむ?今まで5ptづつしか下がっていなかったというのに最下位になった途端、一気に下がり過ぎではないだろうか?
僕はレイン先生の説明に首をかしげる。
「ちっ、そういうことか」
僕が首をかしげていると、自分の隣にいるバースが忌々しそうにつぶやく……何かわかったの?
「説明は以上だ。それでは五人組を作り始めてくれ」
うちのクラスは15人なので、三組に分かれることになる。
「俺と組むよなぁ?ノーン」
「ん。いつもの五人でいいよね?」
僕はバースの言葉に頷き、自分の近くにいたサーシャたちにも声をかける。
「いいですわ」
「……」
「はい」
サーシャたち三人は僕の言葉に同意してくれる。
これで僕たちは何も苦労することなくサクッとチームを作ることができた。
「それにしてもひどいルールですわね!そもそも私達Eクラスだけ人数が少ないと言うのに、取ってきた魔石の総魔力量で順位をつけるだなんてひどいですわ!それに最下位だけ0ptなのも露骨すぎますわ!」
あぁ、なるほど。そういうことか。
確かにこのルールだと人数多いほうが有利か。
学生レベルであれば数を容易に凌駕出来る個は少ないものね。
「ふむふむ。なるほどねぇ」
僕たちが雑談しながら時間が経つのを待っていると、ほどなくして全クラスの準備が完了する。
「おい、よく見ておけよ!」
そして、各クラスの生徒たちの準備が終わったことを先生たちも確認し、今より実践演習が開始される。
そのようなタイミングでバンバラたちが僕たちの前に現れ、それだけを言うと、すぐにどこかへと走り去っていってしまう。
「あの野郎……!」
バースが去っていくバンバラたちをにらみつける。
他の三人もバンバラたちを睨んでいた。
「まぁ、彼らのことを気にする必要はないよ。僕たちは僕たちで好きにやろうよ」
僕は荒れ狂うバースたちへと声をかけ、みんなを宥める。
「それでは実戦演習を開始する。健闘を祈る」
そして、そんなことをしている間に、後に波乱を迎える迎えることとなる実戦演習が開始された。
■■■■■
高い木々は生え並び、太陽の光を遮っているせいで視界が狭まる森の中。
「第二位階魔法『
僕は魔物に向かって一つの雷属性の高位の魔法を発動する。
「は!?」
僕の発動した魔法によって現れるは小さな雷を纏った鳥。
「行ってきな」
「『ピュイ』」
雷を纏った鳥はどこか遠くに飛んでいった。
「な、なんだ!?今のは!?」
僕が発動したいきなり発動した魔法を
「ちゃんと言ったじゃん。第二位階魔法『
儀式級魔法である『
ちなみに魔法の威力、規模は位階という区切りで事細かに分けられている。
位階は全部で第十二位階〜第一位階。その上に儀式級、天災級、超位級、神威級と別れる。
個人で使えるのは第一位階までとされていて、人間の限界は天災級まで。
超位級と神威級は、伝説上の存在とされている。
「いやいや!おかしいだろ!」
「そうですわ!」
ふむ?なぜそこまで驚く必要があるのだ?
この魔法ならば神殿騎士団団員なら誰でも使える魔法だぞ。
「第二位階魔法が使えるなんてありえませんわ!」
「いや、そっちもやべぇが、なんで雷属性の魔法を使えるんだよ!」
「ん?あぁ……」
そういうことか。
確かにそうだわ……基本的には固有属性持ちは、というか誰であっても一つの属性しか使えないことが当たり前である。
二重魔力持ちのサーシャが驚かれる世界である。
固有属性に加えて全属性使えるなんて僕はもう人扱いですらなくなってしまう。
「……」
いい感じの言い訳を浮かべることも出来なかった僕はただただ押し黙ることしか出来ない。
「なんとかいえや!」
「……」
僕はリリスのように頑として動かず、押し黙り続ける。
「いやー、ノーンくんに関しては驚いても無駄ですよ」
そんな僕を見てサーシャが呆れながら呟き、周りのみんなもそれに同調する……そんな呆れなくとも良いじゃないか。
「『ズドン』」
不満を覚える僕は自分の視界にちらりと映ったゴブリンを雷で貫く。
「よっと」
ゴブリンの落とした魔石の方へと足元に落ちている石を蹴り、魔石へとぶつける。
完璧な力加減と角度で石からの力を受けたゴブリンの魔石は宙へと浮き、僕のすぐ目の前へと向かってくる。
「……第二位階は駄目みたいだから第五位階魔法で我慢しておくよ」
各位階のレベルとしては。
第十二位階が何の役にもたちそうにない魔法。
第十一位階が少しは役にたちそうな魔法。
第十位階が日常生活で使えそうな魔法。
第九位階が日常生活で使える魔法。
第八位階が戦闘にも応用できる魔法。
第七位階が戦闘に使える魔法。
第六位階が戦闘を優位に進められる魔法。
第五位階が殺傷力を優に持った魔法。
第四位階が一人で複数人を倒せる魔法。
第三位階が一人で敵部隊を壊滅させられる魔法。
第二位階が一人で戦場を変えられる魔法。
第一位階が一人で戦術を変えられる魔法。
儀式級以上が一人で戦略を変えられる魔法だ。
と、このようにかなり細かく詳しく位階のレベルは区分されており、第五位階は戦闘に専業として従事する者であれば誰でも使える魔法。
この魔法であれば問題ないだろう。
「おい、少し待ってくれ。ノーン」
サクサクと第五位階魔法を活用してゴブリンを叩きのめして進んでいく僕をバースが慌てて止める。
「ん?何?」
「お前しか働いてない。俺らにも少しは戦わせてくれ」
「ん?あぁ……確かにそうだね。うん、いいよ。ごめんね」
僕はゴブリンを倒すことをやめ、他のみんなに任せる。
そういえばこういうのって全部ひとりでやるもんじゃないものね。
「よし来た!行くぞ!」
「はいです!」
「そうですわ!」
「……」
サーシャたちは僕を隅へと追いやって意気揚々と戦い始めた。
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