第43話 さらばオルスタインの街
朝起きると、横にはいつもの黒猫がいなかった。その代わりに猫の耳が生えた少女がスヤスヤと寝ていた。
「起きろラック。朝だぞ。」
「まだ眠いにゃ~。後5分にゃ。」
「今日は色々忙しいんだから、早く起きろ!朝ご飯抜きにするぞ。」
「それは困るにゃ。朝のミルクがないとアタシは死んでしまうにゃ。」
「なら早く起きろ。ラックは今人型なんだ。ミルクはコップに入れて俺と同じ食事を用意するから準備してテーブルで待ってろよ。」
「わかったにゃ。」
ラックの分の料理も準備して、二人で朝ご飯を一緒に食べた。ラックはナイフもフォークもスプーンも今までも持ったことがないので、使い方から教えた。といっても朝はパンとスープなんで使うのはスプーンだけだ。パンは手で取って食べるので特に問題はなかった。
「とりあえず服を買いに行くけどラックはどうする?着る服がないから猫型になるか?それとも自分で着る服は自分で選びたいか?」
「カインが選んでくれた服でいいにゃ。」
「わかった。なら猫型でついてきてくれ。服屋で服買ったら人型になって、服を着て、それからギルドに向かおう。」
予定通り、カインは服屋に行って、自分よりも少し小さめの女の子の服を複数購入した。
(まさか俺が女の子の服を買うなんて思っても見なかったな。)
無事にラックの服問題が解決すれば、次に行くのは冒険者ギルドだ。ギルドマスターのバニーは、カインの話を普通に信じてくれた。というか、ラックがどうせバニーに変身の瞬間を見せるんだし、そこで着替えると言ったので、バニーの目の前でラックは猫型から人型になった。
いきなり姿が変わったラックを興味津々の目で見つめていたバニーは、人型になった12歳の猫の獣人を目にするとすぐに駆け寄り、抱きしめた。
「かっわいい~~。ラックちゃんなのね。え~。いいじゃない人型も。ふふ。可愛らしくてカイン君にピッタリね。お似合いの2人だわ。」
「バニーもそう思うにゃ。実はアタシも同じことを考えてたにゃ。」
嘘つけとは突っ込まない。しばらくラックとバニーのやり取りを眺め、一通り落ち着いた所で、要件をバニー伝えた。
「それでバニーさん。ラックの冒険者登録って可能ですか?できればラックの登録をしてパーティ申請もしておきたいんですが?」
「もちろん大丈夫よ。ただまあランクは最初だからEになっちゃうけどね。」
「まあそれはしょうがないですね。」
「アタシはずっとカインとパーティを組んでたにゃ。ならアタシは当然カインと一緒のCランクからスタートするはずにゃ。」
「ラック。お前はレベル1の能力DなんだからEから始まるのは当然だろ。俺だってEからスタートしたんだぞ。」
「わかったわ・・・」
「あらあらカイン君はラックちゃんの能力を知ってるのね・・・もしかして・・・」
(あっ・・・鑑定できるのってバニーさんにはまだ伝えてなかったんだった。バニーさん鋭いな・・・)
「はい・・・実は俺は自分の能力もそうですが、他の人の能力も鑑定する事が出来ます。」
「やっぱりね。鑑定にアイテムボックス、ほかにも色々と随分便利なギフトがそろってるわね。これから先も新しいギフトが増えるんでしょ?」
「まあ・・・多分」
(さすがにお金を寄付すると、ギフトが増えるとは言えないよな。でもまあ、今まで応援してくれてたし、この街を離れてもこれから先どこでバニーさんと再会するかわからないもんな。伝えれる事が伝えておいた方がいいよな。)
そうして、ラックは無事に冒険者ギルドに登録し、カインとパーティを組んだのだった。
「そういえばカイン君。この街を出るって言ってたじゃない?次に行く場所って決まってるの?」
「いえ、まだ全然決めてないです。王都とかは行ってみたいと思いますけど、さすがに遠いので・・・」
「たしかに王都は遠いわね。でもそれだったら丁度いい依頼があるわ。この街から王都に向かう途中にある街で、フロリダって街があるの。丁度そこにいく商品の方が護衛を依頼しているのよ。よかったらカイン君。この依頼受けてみない?フロリダなら歩いて3日程で着くからカイン君でも受けれると思うし、冒険者なら依頼を受けて他の街に行くのもいいでしょ?」
(たしかにバニーさんの言う通りだな。近場の街までの護衛依頼か・・・受けてみるのも面白いかもしれないな。街道なら出てくるのは、ボアとかゴブリンの魔物か、盗賊とかだよな。ラックを守りながらでも今の俺ならなんとかなるか。)
「わかりましたバニーさん。その依頼俺とラックで受けさせて頂きます。」
バニーの提案を二つ返事で引き受けたカインは、護衛対象である商人と顔合わせし、二日後に出発する事となった。出発まで余裕ができたカインは、その日までに必要なモノを購入するのと、ラックの戦闘訓練及び、多少のレベル上げに挑むのだった。
そして、護衛依頼当日カインは朝早くオルスタインの街の入り口にいた。
「ようやくこの街ともオサラバだな。12年住んだ街を離れるのは少しさみしいけど、この異世界の事もっともっと知りたいもんな。」
「アタシがついてるからどこに行っても大丈夫にゃ。」
「ああ。ラックこれからもよろしくな。」
「まかせるにゃ。」
こうしてカインとラックは、広い世界を見る為に、オルスタインの街を出るのだった。
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