第二章 シフォン子爵領とダンジョン事情
第44話 フロリダの街を目指して
カインとラックは、長年住んでいたオルスタインの街から出てフロリダの街を目指した。Cランクの冒険者になったカインは、バニーから紹介を受けたオルスタインからフロリダに向かう商人の護衛依頼を受けた形だ。
カインが住んでいたオルスタインの街は、アルプス王国の中にあるシフォン子爵領の中にある街だ。カインが目指すフロリダの街も同じシフォン子爵領の街なのだが、オルスタインよりも大きな街だった。
「カイン君とラックちゃんはオルスタイン以外の街に行くのは初めてなんだって?」
オルスタインの街を出て、しばらく移動した後に、丁度よい時間になったので、商人のネイル、カイン、ラックの三人で昼食を取っていた。
「はい。そうなんです。あっだけど護衛は任せてください。子供のでも腕っぷしはありますから。」
「そうにゃ。アタシとカインは強いから安心するにゃ。」
「そこは疑ってないから大丈夫だよ。ギルドマスターから説明してもらってるしね。」
(よくよく考えたら12歳の子供が護衛依頼っておかしいよな。ネイルさんが疑っていないのは、バニーさんがちゃんと話をしてくれてたからだろうな。全く話してくれてなかったら、普通は断るよな。実績も何もない12歳の男女なんだから。それでも、ギルドマスターからの説明だけで、俺達の事を信用してくれるネイルさんもかなりの良い人だな。)
「任せてください。しっかりと護衛はしますので。」
「ああ、頼んだよ。と言ってもオルスタインからフロリダの間は街道もしっかり通ってるから盗賊もあまり出る事はないし、魔物も出てこないから比較的安全なんだ。」
「そうなんですか?」
「ああ。僕は長年オルスタインとフロリダを行き来してる商人なんだけど、今までに襲われた事は一度もないよ。」
(なんだ。警戒して損したな。逆に安全な所だから俺達でも依頼を受けれたって事か。だからか。依頼料が金貨1枚ってCランクの依頼にしては安いなって思ったんだよな。比較的安全だから依頼料が安いんだな。まあそれでも俺だってCランクの冒険者だ。ネイルさんの言葉がフラグで今回襲われる可能性だってあるんだ。気を抜かないようにはしておかないと。)
「そうなんですね。ちなみにネイルさんはフロリダへは何を運んでるんですか?」
「僕かい?僕はフロリダでとれる果物をオルスタインに運んでるんだ。メインはフロリダなんだよ。それで今回はその帰りさ。まあオルスタインでも多少は皮製品とかを仕入れたりするけどね。」
「フロリダは果物が有名なんですか?」
「リンゴって食べた事あるかい?」
「あるにゃ。アタシはリンゴ大好きにゃ。」
「そりゃよかった。オルスタインで売ってるリンゴはほとんどがフロリダ産だよ。あそこはリンゴの産地だからね。」
(へぇ~。リンゴが有名なんだ。俺もリンゴは好きだから本場のリンゴはちょっと楽しみだな。食べ物で言えば後は魚か。王都に行くなら魚に出会うのは難しそうだけど、王都ならもしかして魚を取り扱ってる可能性もあるか?まあ行ってからのお楽しみだな。)
「そろそろ出発しようか。護衛頼んだよ。」
「「はい」にゃ」
商人のネイルが馬車の御者席に乗り、カインとラックは歩きで馬車を護衛した。そして一日目が終わり、夜営となった。
「夜の見張りは初めてなんだね。まあ初めてでもこの当たりは比較的安全だから大丈夫だと思うよ。ほら僕達以外にここで寝泊まりしてる人もいるだろ?」
「そうですね。でも依頼を受けてますのでしっかり護衛はさせていただきます。」
「はは。そうかい。じゃあ頼んだよ。」
「カイン?順番はどうするにゃ?」
「先にラックが寝てていいよ。俺が先に見張りをするよ。」
「わかったにゃ。」
(ダンジョンじゃ魔物避けの香を使ってたから見張りの必要がなかったもんな。それにあの魔物避けの香ってダンジョンでしか使えないんだな。知らなかった。ラックが人型になったのが最近だからしょうがないけど、少しは夜営の練習もしておくべきだったな。それに今考えると一人じゃ護衛依頼受けれないじゃん。寝ずに夜の見張りなんてできる訳ないし・・・。ラックがこのタイミングで人型になれるようになったのは本当に助かるな。でもまあ2人でもきついと言えばきついよな~。仲間か・・・どこかで新しい仲間って見つかるのかな?)
そんな事を考えながら一人、焚火を眺めながら見張りの時間を過ごした。ラックとの休憩の時間を迎えるが、少しでもラックの負担を減らそうと少し長めに見張りをした。
カインの後は、ラックだ。ラックも見張りをするのは初めてだが、焚火の前で火を絶やさずにしていればいい。と言われていたので言う通りにしていた。
盗賊や魔物が襲ってくる事もなく、無事に見張りを終えたカインとラックは、翌日も引き続き、護衛を続ける。
(見張りを伴う夜営は頑張って二日だな。今日見張りして明日にはフロリダにつくから、フロリダについたら今後の事をラックと話さないとな。あんまり遠くへは今の俺達じゃ行けそうにないし、近くの町を経由しながら王都を目指す感じになるか。いやここって子爵領だったよな。子爵領の領都がこの辺りじゃ一番でかいはずだ。そこに行って情報を集めるのも一つの手だな。フロリダについたらまずはその辺の地理について聞いてみるか。)
そうして、カインとラックはフロリダを目指して進んで行くのだった。
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