第24話 異世界お風呂生活開始
目が覚めると目の前には大きな土の山があった。
「目が覚めたかにゃ。」
「ラック・・・っておお!?俺は何でここに・・・いやそうか。魔力枯渇で気絶したのか?」
「そうだにゃ。土山ができたと思ったらそのままカインが倒れたにゃ。」
「布団まで運んでくれてもよかったのに。」
「無理にゃのはカインもわかってるはずだにゃ。起こそうと思って何度か顔を叩いたけど全く起きなかったにゃ。」
(土山を作った所で魔力枯渇か・・・何日かに分ける必要があるな。浴槽を作って、地面を固めて、水を抜く穴とかも考えないといけないな。いや土だからほっておけば抜けていくか。いや抜けて行ったらまずいだろ。そうならない為にも魔法で土を固めて水がたまるようにしないと。ならやっぱり水を抜く穴を作る必要があるな。)
それから、カインは毎日、午前中は森でゴブリンを討伐し、午後からはお風呂づくりに精を出した。
80㎝程の高さに長さが約1.5m程の浴槽を作り、水が土に溶け込まない様に魔力を込めて土を固めていく。その作業だけで3日はかかった。
浴槽ができてからは、水を抜く穴をあけて、それに合う蓋を作成したり、部屋全体の地面をうまく水が外に流れるように傾斜をつけながら、歩きやすいように土を固めて行った。水をすくう桶や体を洗う布を買うのも忘れない。もちろん大事な石鹸もだ。
風呂づくりで一番苦労したのは、土を固める事だった。魔力を込めれば込める程、土はどんどん、ドンドン固くなっていく。どこまで固めれば良いかわからなかったカインは1週間、ひたすら出来上がった風呂場の土を固めて行った。
そして・・・
「ラックできたぞ。念願の風呂だ。」
「カインにしては上出来だにゃ。ちゃんと風呂に見えるにゃ。」
(やればできるもんだな。やり始めた時はやっぱ無理かもって思ったけど、あきらめずに1週間頑張ったかいがあったな。どこかの監督も言ってたもんな。諦めたらそこで試合終了ですよ。ってまさにその通りだな。)
「よし。ラック。早速風呂に入ってみようぜ。」
カインは風呂の中に水魔法で水を入れようとしたが、水魔法を発動すると同時に魔力枯渇で気絶したのだった。
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そして翌日
「起きたかにゃ。」
「あれ俺は・・・又気絶したのか?」
「そうにゃ。カインはバカにゃ。風呂場の土を固めるのに魔力を散々使った後で風呂に入ろうとしたにゃ。魔力が枯渇するのは当然にゃ。」
(言われてみればそうだな。風呂が完成したうれしさですっかり忘れてたわ。)
「悪い。悪い。たしか風呂に水を入れようと思って水魔法を使ったら気絶したんだよな。でも見てみろよラック。昨日つかった水魔法がしっかり風呂の中にたまってるぞ。土を固めて正解だったな。」
(時間があるときに水さえ溜めておけば、火魔法で温めたら風呂に入れるな。魔力が残ってる時は水を溜めるのを忘れない様にしよう。)
風呂に水を溜めてから、いつものように森でゴブリンを10体倒し、家に戻ってきたカインとラックは、風呂場に来ていた。
「よしラック。今日は念願の風呂だ。準備はいいか?」
「もちろんだにゃ。アタシは熱いのは苦手にゃ。ぬるま湯ぐらいが丁度いいにゃ。」
「そうなのか?俺としては熱いお湯の方が風呂に入ったって感じで好きなんだが・・・。まあ今日はラックが丁度いいぐらいの温度にしておくか。」
「さすがカインなのにゃ。」
「とりあえず水に向かってファイアーボールを使ってみて何回使えば丁度良い温度になるか調べるか。回数がわかれば明日からは楽になるからな。」
「カインは毎日風呂に入るのかにゃ。」
「当然だろ。日本人と言えば風呂だ。風呂に入らないと一日が終わらないだろ。その為に火魔法と水魔法が使えるようになったと言ってもおかしくないからな。」
「絶対使い方まちがってるにゃ。でもアタシもお風呂は好きだから全然かまわないのにゃ。」
カインは、水の溜まった浴槽に向かってファイアーボールを放って行く。1回、2回と数を重ねていき、10回ファイアーボールを使った所で、
「これぐらいの温度でどうだラック?」
「丁度いい湯加減にゃ。」
「了解。じゃあ10回ファイアーボールを使えば丁度良い温度になる感じだな。覚えたぞ。」
風呂に入る前にしっかりと体を洗い、ラックは自分で洗えないのでカインが石鹸で入念に洗って、二人でお風呂に入った。
「「は~」にゃ」
「これはいいな。風呂は命の洗濯とはよく言ったもんだ。久々に風呂に入ったのもあるが、癒されるな。」
「そうだにゃ。お風呂はカインにとっての癒しにゃ。もちろん一番の癒しはアタシにゃ。」
「そうだな。ラックがいてくれて助かってるよ。ありがとな。」
「どうしたのにゃ急に。」
「いや、単純にそう思ったから言っただけだ。」
「アタシもカインのお陰で毎日が楽しいにゃ。呼んでくれてありがとうにゃ。」
しばらくお風呂を堪能した二人は、
「カイン、ミルクを出してほしいにゃ。お風呂上りにはやっぱりミルクにゃ。」
「おっラック。よくわかってるじゃないか。よしちょっと待ってろ。俺の分も出すから一緒に飲もう。」
二人して風呂上りのミルクを豪快に飲むのだったが、
「冷えてないからいまいちぷはーって感じがしないな。ミルクに氷ってちょっと変だけど、氷魔法で氷を出せば冷たいミルクになるか。」
カインは指先から氷を出して、自分のコップと、ラックのお椀に氷を入れた。
「ありがとうなのにゃ。冷たくなったにゃ。やっぱ風呂上りのミルクは最高にゃ。」
「ああ。そうだな。」
こうしてカインのお風呂生活は始まったのだった。
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