第23話 お風呂を作ろう

「ラック、早速だが今日も森に行くけどゴブリン退治は午前中だけにする。」

「どうしたのにゃ。急に。」


「昨日料理をしながら思ったんだ。このままじゃいけないって。」


「どういう事にゃ。」


「今後神の奇跡を開放したら、キレイな女性が現れるかもしれない。そしたらきっとこの家に一緒に住むだろ?俺は親がなくなって以来、家なんて住めればいいと思ってたから掃除もろくにしていない。家に来た女性が、カインさんの家汚いわ。なんて言われてみろ。俺は生きていけない。」


「10歳のセリフじゃないにゃ。だけど、家が汚いのは同意にゃ。」


「それだけじゃない。昨日石鹸を買って身体を洗っただろ?久々に石鹸を使えたのはいいが、やっぱり水浴びじゃダメだ。風呂が欲しい。日本人は毎日湯舟に浸かるもんだ。風呂は命の洗濯なんだ。」


「そのセリフはどこかで聞いた事があるにゃ。」


「なんにせよ。俺は考えた。まずは家をキレイに掃除して、風呂を作ろうって。水の魔法や風の魔法を使って掃除をすれば魔法の鍛錬にもなる。風呂だってそうだ。使ってない部屋の床をぶち破って地面の土をうまい具合に固めれば、後は水魔法と火魔法でお湯を貯めれば風呂に入れるはずだ。」


「まあ何にせよカインがするならアタシも手伝うにゃ。だけど、キレイになっても神の奇跡で女の子はきっと出てこないにゃ。」


「それはわからないだろ。現にお前だって神の奇跡で現れたんだから。それに神の奇跡を使わなくても今後、女性と仲良くなって家に招待する可能性だってあるだろ?」


「まだ少ししかカインと生活してにゃいが、カインには女っけが全くないにゃ。アタシ以外と親しく話してる所なんて見た事ないにゃ。」


「いやあるだろ。ギルドのバニーさんなんか親しく話してるだろ?」


「あれは向こうが仕事だからにゃ。」


(クソッ!!ラックの言う事がいちいち正論だ。むかつく。たしかに俺は見た目は10歳だ。だけど中身は前世と合わせて40歳を超えてるんだ。昨日だってようやく目当ての石鹸を手に入れたから念入りに体を洗ったんだぞ。バニーさんにカイン君臭いわなんて言われてみろ。自殺したっておかしくないぞ。)


「ま、まあ綺麗にするのはいい事だろ?生活の為にも金は稼がないといけないから、午前中は森でゴブリンを狩って、昼からは家の掃除と風呂づくりだ。」


「昨日買った魔法書は試さなくていいのかにゃ。」


「それも様子を見てからだな。家の掃除で魔法を使えば魔力を消費してしまう。家の中なら魔力が枯渇して気絶しても安心だけど、掃除した後で魔力がまだ残ってたって感じだな。」


「わかったにゃ。」


掃除する事と、お風呂を作る事をラックにつげ、カインは森へと向かった。ゴブリンを倒す為だ。カインの今の実力なら、ゴブリン以外も難なく倒せるだろうが、元が慎重派のカインは、より安全策を求め、今日もゴブリンのみを狙っていた。


午後からの掃除を考えて魔法を温存して、剣のみでゴブリンを倒していくカイン。剣もそろそろガタがきていた。


(そろそろ新しい武器も考えないといけないな。手入れはしてるけど、毎日毎日ゴブリンを倒してたらそりゃガタはくるだろうけど。は~。又金がかかるな。何にしても金、金、金。何かあった時の為に貯金もしておきたいし、節約しなきゃな。)


ゴブリンを10体程倒したところで、森での探索を終了した。


「もういいのかにゃ?」


「ああ、10体倒せば金貨3枚になる。普通に生活するなら十分だろ。先に家の事を片付けておきたいからな。」


(というか風呂に入りたい。今日で風呂が完成するとは思わないけど、俺の考えならできるはずだ。入れ物を作って水を入れて温めるだけだもんな。)


「わかったにゃ。」


ギルドでゴブリン討伐の報酬である金貨3枚を受け取り、家に帰ったカインは早速掃除を開始した。必要ないものはアイテムボックスに入れていき、風魔法を使って埃を取る。水魔法で汚れを洗い流して、汚いところを順番に掃除していった。


ここで、無詠唱魔法が大活躍した。詠唱魔法なら決められた形で決められた威力の魔法になってしまうが、無詠唱魔法ならイメージで威力も形も変える事ができる。魔物が出てこない家の中なら集中してイメージを固める事ができるので、指先から水を出して汚れを流す事も、壁全体に風を起こして埃を落とす事もカインの無詠唱魔法で実現できた。


「これぐらいでいいだろ。よしじゃあメインイベントの風呂づくりに移るか。」


「待っていたのにゃ。」


「そういやラックは風呂って入れるのか?」


「もちろんにゃ。アタシはキレイ好きにゃ。朝風呂に昼風呂、夜風呂までドーンとこいにゃ。」


(いやいや昼風呂って初めて聞いたけど・・・)


掃除と並行して部屋の中の床は全てはがしてあった。部屋に入ると床がなくて土の地面が見えていた。


「まずはこの土を浴槽の形にする必要があるな。とりあえず土に触りながら土魔法を使うイメージでやってみるか。」


カインは両手を地面につけて体内の魔力を土属性へと変換していく。


(イメージは地面にある土を増やす感じだ。形を作る為にもそれ相応の土がいる。とりあえず浴槽が作れるだけの土を生み出すイメージでっと。)


カインのイメージした通り、地面から土が現れてドンドン土が増えていく。部屋の真ん中に1m程の土の山ができたのを確認したカインは・・・


そのまま魔力枯渇で気絶するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る