第21話 ラックとのデート

ゴブリン相手に無双したカインは、ラックとの約束通り、翌日を休みにして街ブラする事にした。生まれてからこの街に住んでいたカインは街について詳しいが、前世の記憶が蘇ってから街を散策した事はなかったのでゆっくり街の中をブラブラする事にしたのだ。


「カインとデートにゃ。楽しみだにゃ。」


(デートというけど、俺はあんまりデートの経験なんてないぞ。まあ結婚してなかっただけで童貞ではないから皆無という訳ではないけど。デートか・・・普通なら服とか身に言ったりカフェでお茶したりって感じなんだけどラックって服着てないもんな。しょっぱなから躓いた感じだけどどうすればいいんだ?)


「とりあえずどこに行く?ラックの場合は服とかには興味ないだろ?市場に行って食料でも探すか?」


「それはいいにゃ。カインは肉しか食べないにゃ。野菜も果物も色々食べないと大きくならないにゃ。」


(たしかに家で料理をするときは専らホーンラビットの肉だし、急いでいる時は屋台の肉串ですます事は多い。野菜な~・・・たしかに異世界の食事には興味はある。今までは金がなかったから仕方なく毎日毎日AセットだのBセットだの、Cセットって言った感じで飯屋のパンにスープにシチューだったが、自分で色々料理するのも楽しそうだし、他の飯屋に行くのも良さそうだな。今の俺は10歳だから酒は飲めないから酒場とかにはいけないけど、その分美味しいモノを食べるっていうのは良い案だな。)


「わかった。まずは市場に行ってみるか。気になった食材は一通り勝って行こう。アイテムボックスがあるから買ったモノは制限なく入れれるからな。」


「やったにゃー。アタシもミルク以外に美味しいモノを探すにゃ。」


(ミルク以外だと魚か?そういや~転生してからこの世界で魚はまだ見てないな。まあいるのはまちがいないんだろうけど、近くに海とかがなければ魚なんて手に入らないよな。車も電車もない世界なんだ。海でとれた魚を運ぶ手段がなければ魚なんて手に入らないよな。)


カインは、ラックとともに市場で、気になる食材を購入していった。購入すると言っても簡単なモノばかりだ。前世でずっと一人暮らしをしていたと言っても凝った料理は作った事などない。切ったり傷めたり、茹でたりするのはできるので、簡単に調理できそうなモノを購入していった。


そして、果物の皮むきはできるので、いくつかの果物を購入した。この世界でもリンゴやナシ、ミカンに桃など、日本と同様の果物が売っていたのだ。もちろん野菜も玉ねぎやイモは普通に売っていた。


「たくさん買ったから今日のご飯は楽しみにゃ。」


「そうだな。俺の家にはあまり調理器具がないから、その辺を見に行くか。」


「わかったにゃ。エスコートを頼むにゃ。」


「はいはい。お任せくださいラック姫様。」


「くるしゅうないのにゃ。」


今日ぐらいは贅沢を。という事で、気になったモノはドンドン購入していった。途中アイスクリームを売っている店があったので、金額は高かったが、ラックと二人分購入しておいしく頂いた。ラックはアイスクリームを気に入ったみたいだ。


ブラブラを歩いているとふと今までに入った事のないお店が目にとまった。


「魔法屋・・・なんだここは?」


「魔法屋は魔法書が売ってるお店にゃ。ここで魔法書を買って詠唱文を覚えるにゃ。」


「なんでラックはそんな事知ってるんだ。」


「これぐらい常識にゃ。」


(いやいや常識って言ってもお前がこの世界にきてからまだ1週間ぐらいしか立ってないだろ。しかも来てからはほぼほぼ俺を一緒にいるのになんでお前が魔法屋の事知ってるんだよ。)


心の中で盛大にラックに突っ込みを入れるが、ラックには伝わらない。


「入って見るにゃ。カインに必要な魔法書があるかもしれないにゃ。」


「・・・そうだな。たしかに魔法書は興味ある。」


カインとラックは、見つけた魔法屋に入って行く。中に入るとカウンターがあって、その奥には、真っ黒な本が棚に並んでいた。


「おやおや可愛い棒やだね~。おつかいかい?」


お姫様に毒入りのリンゴをあげそうなおばあさんがカウンターには座っていた。


「いえ、魔法書に興味があったんで入ってみました。おばあさんの後ろにある本が魔法書ですか?」


「おやおや坊やは魔法に適正があるのかい?そうだよ。ここにあるのは全て魔法書さ。でも坊やにはちょっと高いかもしれないねぇ。なんせ初級魔法の本でも1冊金貨10枚はするからねぇ。いっひっひっひ。」


(このおばあさん微妙に怖いな。なんか悪い研究してる魔女って感じだ。それにしても金貨10枚か・・・今の俺なら3冊までは買う事はできる。できるけど、買えばこの後教会に行って、次の神の奇跡を開放しようと思ってたのができなくなる。さて・・・どうするか・・・まあどんな魔法書があるか聞いてみるか。)


「お金なら大丈夫です。それでどんな魔法書があるんですか?」


「そうかいそうかい。魔法書は初級から上級まで色々あるけど坊やの属性は何なんだい?」


(そうか・・・そりゃそうだよな。自分の適性じゃない属性の魔法書を買ったところで魔法が使えないんじゃ始めに属性を聞かれるよな。どんな属性があって、どんな魔法書があるのか色々聞きたい所だけどどうしようか?)


自分の知らない魔法を覚えようと入った魔法屋でいきなり、ピンチに陥るカインであった。



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