第18話 黒猫のラック
「カイン。朝にゃ。起きるにゃ。」
目を覚ますと布団の上に黒猫が乗っていた。
「うぉ。なんだなんだ!?」
「何寝ぼけてるにゃ。もう朝だにゃ。」
「猫がしゃべってる・・・」
「昨日もしゃべってたにゃ。」
(そうだ。昨日新しい神の奇跡が解放されて黒猫のラックが仲間になったんだった。)
「ご飯はどうするにゃ?」
「ああ。ラックのミルクも買いたいから準備して外で食べようか?ラックはやっぱりミルクがいいんだろ?」
「そりゃそうにゃ。ミルクさえあれば他には何もいらないにゃ。猫にミルクにゃ。」
(折角の仲間だ。仲良くしたい所だな。それに、神の奇跡によって現れたんだから何かしらチート能力を持ってる猫かもしれないし、現にしゃべってるしな。そうか。鑑定してみればいいのか。)
「ラック。ちょっとお前を鑑定してみてもいいか。どんな能力を持ってるか知りたいんだ。」
「かまわないにゃ。」
カインはラックを鑑定した。
名前:ラック
年齢:1歳
種族:猫
能力:C
成長率:A
レベル:99
体力:C
魔力:E
筋力:E
知力:S
敏捷力:S
耐久力:E
精神力:E
運:S
「レベル99!!それに知力に敏捷力に運がSだと・・・。」
「どうにゃ?すごいにゃ?アタシは役に立つにゃ。」
(いやまてまて、神の祝福もないからこれだけじゃラックが何ができるのかわからないぞ。魔力はEだから魔法なんかは使えないよな。それに筋力もEって事は、攻撃も期待できそうにない。えっ?どんな役に立つんだ?)
「すまんラック。鑑定しただけじゃお前がどう役に立つのかわからん。具体的に何ができるんだ?」
「しゃべる事ができるにゃ。アタシは狩りは苦手にゃ。すばしっこいから逃げるのは得意にゃ。」
(いやいやそれじゃ今の俺にとったら何も役に立たないのと一緒じゃん。一緒に森に行って魔物を狩ってくれたりはしないのかよ?例えば魔物のいる場所が分かるとか。いやすばしっこいならラックに魔物を釣ってきてもらう事はできるか・・・それでも釣り役か~・・・嫌がるだろうな~。)
「そ、そうか。今日は昨日と同じで森に行ってゴブリン討伐をしようと思ってるんだけど、一緒に来るよな?」
「もちろんにゃ。カインはアタシの相棒にゃ。相棒の行く所にはアタシももちろんいくにゃ。」
「わかった。それと外ではしゃべるなよ。俺もこの世界の事を詳しく知らないけど、しゃべる猫なんて見た事ないからな。普通にしゃべる猫がいる世界なんだったら問題は無いけど、もし違うなら見つかったらヤバいからな。」
「わかってるにゃ。そんなヘマはしないから安心してほしいにゃ。」
カインは冒険者スタイルに着替えて、ラックと共に家を出た。いつもはいかない市場に向かい、ラックの為にミルクを購入し、自分用に肉串を5本購入した。
「やっぱりミルクは最強だにゃ~。カインのアイテムボックスに入れておけばいつでもミルクが飲めるにゃ。ミルク飲み放題にゃ。」
「おいラック。しゃべるなよ。まわりに気付かれるだろ。」
「大丈夫にゃ。今は周りに誰もいないにゃ。」
「おっ!?もしかしてラックは周囲の人の気配がわかるのか?」
「違うにゃ。ただ単に周りを見て誰も人がいないから言っただけにゃ。」
カインは周りを見渡した。ラックの言うように、カインの周りには誰もいなかった。
「なるほど・・・。」
(ただのしゃべる黒猫じゃねぇか。たしかにボッチで寂しいから話す相手がいるのはうれしいが・・・うれしいができれば猫じゃなくてキレイな女性ならもっとうれしかった。それに人なら一緒にパーティを組んで冒険もできるのに・・・)
「そういえばラックでしゃべるだろ?人型になれたりしないのか?獣人とかもこの世界にはいるみたいだし、アニメだったら月が出てたら人に戻ったりするのもあるじゃんか。」
「カインはアニメの見過ぎにゃ。あれはアニメだからできる事にゃ。現実にそんな事不可能にゃ。」
「いやいやお前しゃべってるじゃん。」
「アタシがしゃべってるのは普通の事にゃ。何にもおかしな事じゃないにゃ。」
「そうなのか・・・」
(俺の方がおかしいのか・・・いやいやそんなはずない。まさか!?レベルが上がれば人型になれるようになるのか。いや、でもラックのレベルは99だ。この世界のレベル上限が99ならラックはすでにレベルカンストだ。これ以上レベルは上がらない。限界突破みたいな事も異世界なら普通にある気がするが、俺のレベルが5っていうのを考えると、ラックがレベル100になったとしてもそれは遠い未来の話だ。まあラックが仲間になったのは昨日なんだ。すぐにどっか行ってしまう訳じゃないんだし、気長にラックの事を知って行けばいいか。)
「さて食事も取ったし、早速森に行くか。昨日はゴブリンを10体倒した。昨日と同じように俺は魔法を使ってゴブリンを倒そうと思う。10体倒せば金貨3枚手に入るしな。ラックは、それを見ながらできる事があるならサポートしてくれ。」
「わかったにゃ。」
朝ご飯を食べながら、ラックと話した事で、少しだけ、ほんの少しだけラックの事を理解した・・・ような気がするカインは、今日もレベル上げとお金稼ぎの為に森へと向かうのだった。
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