第6話 頭領から申し込み
-二人が剣の稽古を始めてから何日も経ち、二人のいる森では穏やかな時間が過ぎて行きました。
しかし、二人の見えない遠い場所では、長く異種族間の争いが続き、次第にそれが大きくなっていきました。
その話は二人とその仲間達が知る事となり、不安が募って行きました。
しかし、その争いは予想外な形で幕を閉めたのです。
どこからか現れた巨大な『マモノ』が現れ、人々を襲い始めたのです。
マモノは争い合う人々だけでなく、無関係なヒトまでも襲い、世界は混乱しました。
そんな混乱の最中、赤毛の人間の家族がマモノに襲われ、命を落としたと報せが届きました。-
花泥棒の主犯と
廊下は薄暗く、窓はあるがほとんど日が入って来ず、それが単純に方角や日の高さが関係しているといものではないと察した。微かにだが、魔法の力を感じた。それが結界だと気付くのは容易かった。
俺はそこまで魔法の力に敏感ではないが、それでも感知出来るとは、それ程強い結界魔法が掛けられているのだろう。それが進むほどに強くなる事から、この奥にはそれだけのものがあるのだろう。
とは言え長過ぎる。頭領の部屋を出て階段を下り、廊下を歩いで大分経った。一体何時になったら目的の場所に着くのか。好い加減に装飾の施された天井や床に壁という光景は見飽きた。
「スパイン、我慢してください。やっと事件が解決出来るところまで来たのです。辛抱しなくては全て無駄になってしまいますよ。」
生真面目なベリーは、ただ廊下を歩いているという現状に不満を漏らさず、黙々と前方を歩く頭領の後を着いて行った。珍しくいつもの張り上げた声を出さずにいる。なんだかんだ、この雰囲気に少し飲まれているのか?
「あの、カロンビーヌさん。失礼ながら、戦いを終える事はうれしいのですが、私た…を連れてどちらに行かれるのでしょうか。せめて目的地をおしえて」
「黙って着いて来なさい。」
喋っている最中のベリー言葉を遮り、また黙り込んでしまった。きつい言い方だな。こっちは何も分からないまま歩かされているというのに、勝手な展開が続く。
とは言え、現状戦わずに済んではいるが、未だ事件は解決しておらず、話を進めるにはこの頭領の言う通りにするしかないだろう。何より、今向かっている場所に何があるのか気になるし。
そうして俺が思考していると、廊下の先の壁に突き当たった。その壁には壁や天井まで届くほどの大きな両開きの扉があった。頭領は扉に近づくと、見た目から重みを感じる古めかしい
開かれた扉の先には、広大な庭が広がっていた。この屋敷に入り口前にも庭があったが、それよりも広い、だが花の数はそれ程多くは無かった。入り口前の庭の方が花の量も色の鮮やかさが際立って見える。
咲いている花は見える範囲で白い薔薇と、見た事の無い小さな花が咲いており、やはり庭の広さに反して質素に感じる。
庭の中に水が行き渡る為の水路が引かれ、小さな橋も架かっていてそこは広い庭ならではでろう。しかし、それ以外の装飾品は置かれてはいなかった。
花や蔦が絡んだアーチ状の置物などの庭を彩るものが見当たらず、そこには少しだけ違和感があった。これだけの広さの庭ならそういった装飾も置かれる余裕があるだろうに、どこか広さに似合わずそこも質素な作りだ。
そんな風に庭に感想を抱いていると、頭領がベリーの姿を確認しないまま庭の奥へと歩いて行く。置いて行かれるぞと促して、ベリーは頭領の後を引き続き着いて行った。
相変わらず頭領は不満顔で速めの速度で歩いて行く。庭の地面には石畳が敷かれ、歩く度に石の上を軽く叩く音が響き、少し心地良く感じた。そんな心地良い音が暫く続くと、歩く先に建物が見えた。
建物の上、屋根は円形をしていて、その屋根も壁も透明な素材で造られていた。これはサンルームと呼ばれるものだろうか。他の建物とか隔離されて、独立した建物らしいが、強度の方はどうなんだろうか。最低でも魔法で強度を補強している可能性があるな。でなければこんな如何にも叩けば壊れてしまいそうな建物、こんな庭の片隅でも建っていられる訳がないと思う。
頭領は自分の所有物同然にサンルームらしい建物の扉を片手で開け、中へと入った。ベリーも続けて入ろうとしたが、頭領が中に足を踏み入れた瞬間止まり、驚き動きを止めたベリーの方へと頭領は振り返り言った。
「暫しここで待っている。勝手にこの中に入るな。庭も勝手に歩き回るな。」
ベリーにきつく、厳しく言いつけてから扉を閉めてしまった。一瞬だったから中がどうなっていたかよく見えなかったが、ほんの一瞬だけ、中にも床というか地面一面に花が咲いているのが見えた。それも本当に見た事の無い真白な花だった。
「閉め出されてしまいました。」
自分がされた事を正直に口に出し、ベリーは茫然と時間が過ぎていくのを待った。当然だが俺も待ったが、この時間は本当に苦手だ。何もせず待つだけなど、時間を無駄にしていて胸の下あたりがむずむずする。
ベリーだってただ待つだけの現状に思う事があるはずだ。ヒトの為に動き、ヒトの為に時間を削って来たベリーは、何もしない日が無いと言う位動く姿を見てきたから、動かずにいるベリーの姿は異様だ。
そんな姿のベリーが今どんな心境化は知らないが、10分程の時間が経つとようやく扉が開き、未だに不満を含みつつどこか憂いも感じた。
入って良いという事なんで、ベリーは遠慮なく開けられた扉の先へと進んだ。中に踏み入れた瞬間、草を踏んだ時の乾いた音がした。更に扉が開かれた瞬間から流れて来た香りが一層強くなり、ベリーの鼻に届いたのを感じる。
見た事の無い白く大きな5枚の花弁の花が地面一面に広がり、どこからか小さな光が複数漂って見えた。これは姿が見えない程力を持たない花の妖精が周囲にいる証拠だろう。
力を持たない妖精は、その生態故に自然の多い場所からは離れられずに人工物の多い場所には近寄らず、警戒心が強いから、その妖精がいるのは相当この場所が心地良い環境なのだろう。
「この奥だ。」
建物の中の光景にベリーが圧倒されている中で、頭領はそんなベリーの様子をひたすらに顧みずに先へと進んで行く。恐らくこの建物の奥に、目的の人物がいるのだろう。ヒトなのかは定かではないが、行けば分かる。
草の乾いた音を立てながら、周囲を伺いつつ奥へと進んだ。そして建物自体が小さく狭い為、直ぐに着いた。
そこには、白い花が更に多く密集する様にして咲いており、その中心にヒトがいた。そのヒトは遠目から見ても花と同じく白い色をして儚い印象を受けた。
髪はかなり長く、
その人物が此方に目を向け、大きな紅色の目を視認した。最初は確かに儚いと印象を受けていたが、その顔つきは儚いと言う言葉とは感じず、逆に凛とした印象を受けた。
だが、そんな見た目だけの儚さと色素の薄さ、目の色の鮮やかさよりも特に目を引くものがあった。それはその人物の頭上から生えているのだろう、短い蔓草と大きな一つの花の
最初こそ人工的な頭飾りかと思ったが、質感が作りものとは思えず明らかに生花の類だった。体に草花を生やし、妖精種の住む森に存在するヒト型。その事で俺はある事を思い出す。
こいつは、樹木人という植物と共生した体質の種族とは異なり、妖精種の上位種とされる樹花族だ。
魔法の力が命そのものとされる妖精種の中でも、魔法の力が特に強く、それ故に繊細で少しの穢れで命を落とすと言われる程の虚弱体質だと聞いた。見た目の儚さもそこから来ているのだろう。
俺の絞り出された知識が当たっていたのか、突然その樹花族は咳をし、傍に立っていた頭領が焦り顔でその樹花族に駆け寄り支えながら背をさすった。
正直あの頭領が焦り顔を見せたのには驚いた。ベリーは目の前の人物が体調不良に見えた事に驚き焦っていた。頭領が駆け寄ったのを見て落ちついたらしい。
「…良い、大丈夫だ。自分から話す。」
頭領に支えられていた人物、恐らく樹花族は頭領の助けを穏やかに断り、目の前に立つベリーの方へと向き直ってこちらを見つめた。やはりその目つきは、儚いというには弱々しさが全く感じられない。むしろ目が合うと、こちらの背筋まで真っ直ぐに伸びる様な心地だ。
短く聞こえて来た声からも、その目つき同様の印象を受けた。
「初めまして。突然の訪問だった為に、こちらからは何も御もてなし事も出来ず、失礼した。
自分がこの森の頭領である、アスター・ガーデンだ。」
「べっ、ベリー・ストロです!」
しっかりと聞こえたその声は思っていたよりも中性的で、聞いただけでは声の主が儚い見た目をしているとは思えない通った声だ。ベリーも緊張しつつ自己紹介をするが、声が上ずってしまった。
そしてアスターと名乗った樹花族の言葉に俺と同じくベリーも疑問符を浮かべた。考えた先は同じだろう、今さっき樹花族の肩書だ。
「頭領?失礼ですが、そちらのカロンビーヌさんが頭領なのでは?」
思った疑問をそのまま口にしたベリーに俺は同意しつつ、頭領と名乗った樹花族の反応を待った。返事は直ぐに来た。
「ロビ…カロンビーヌが頭領であるのは間違いない。自分は森の木々や草花を統治し、カロンビーヌが屋敷と妖精達を統治する。自分達は二人で統領となるのだ。」
つまり二人で役割分担しているという事か。そんな上司二人の内一人がもう一人の頭領、というより俺らをここに連れて来る様に言って来た様だ。
一体どんな用で呼んだのか、結局来る前に確認出来なかったから当人に聞くしかない。あちらもそのつもりで、改めて説明する態勢となった。
2
「この度は、この屋敷の主によって森に近隣するまちで迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳なかった。自分自身今回の事を全く把握していなかった、と言えば言い訳になるが、確認を怠ったのは自分の落ち度だ。」
「いえっ!こちらも無理矢理屋敷に入りこんで、泥棒どころか強盗の様な…いえ、そのものでしょうね。屋敷で働く妖精達に危害をくわえてしまい、大変失礼しました!」
樹花族の頭領とベリーが互いに謝罪を言い合い、顔が全く見えない位に頭を下げ、深い詫びを見せるベリーに、樹花族の頭領は口元を緩ませてくすりと笑った。
「君がそうするのは当然だ。大事な物を盗まれれば、居てもたってもいられなくなるのは当たり前の事。むしろ、こちらが勝手にした言の方が問題だ。」
ベリーと俺の行動も確かに無理があるが、元を質せば妖精共が事の発端な訳だし、こっちは自己防衛の為に動いたのと同じだ。侵入云々までは言い訳も出来ないが、そこは大目に見てくれるらしい。
そんなベリーと樹花族頭領の会話を、もう一人の頭領は何も言わずに来ていた。表情は依然と険しいままで、敵意を持った目でベリーを睨んでいた。
「カロンビーヌ。君も好い加減今回の事を詫びたらどうだ。君の言いたい事も、理由だって自分は理解しているつもりだ。しかし、だからといって関係の無い者まで巻き込んでやる事では無いはずだ。」
樹花族の言葉を聞いて、もう一人の頭領は眉を
「関係無い、なんて事は無い!ヒトは等しく同じ、この土地に住む人間であれば関係無い訳があるはずがない!『あの時』だって、もっとヒトが警戒していれば防げた事だ!それを同種、同族だからと信用しきって、結果あんな事になったんだぞ!」
激昂し今までずっと思っていたであろう、会った時から戦っている最中も胸に秘めていた言葉を吐き出した。その言葉を聞き、様子を見た樹花族の頭領は、溜息を吐いた。それは呆れではなく、理解しつつも半ば諦めを含んだ憂いだ。
「君がまだ『あの時』の事を思っているのは分かっているいる。しかし、その思いはいつまでも抱えて生きて行くものではない。君は少しだけでも、赦さねばならない。」
俺は話について来れず、ベリーと一緒になって二人の頭領の会話を蚊帳の外で見ている状態になった。
妖精種というのは全てとまではいかないが、ほとんどの妖精種は他種族との交流を拒む。特に人間に対して強い嫌悪をいだいている。
それは他種族との交流を禁じる妖精の里での教えだったり、資源を他の種族よりも多く搾取していると言われる種族故の性質からもきているだろうが、大本は大昔に起きた戦争が由来だ。
大昔の最も長く続いた戦争の発端は、人間だったと言われる。真実かどうかは定かではないが、結果人間は戦争で多くの資源を搾取し、多くの生き物、森や植物が絶滅に瀕したとされる。
人間は他の種族と比べても弱い、故に多くの事を道具で補うしかない。そしてその道具を作るために大量の資源が必要となる。結局は人間も生きる為に搾取しなくてはいけない種族なのだ。
そして自然と共に生き、自然を愛する妖精という種族故に、理由があろうともそんな人間の行動に嫌悪し、永く交流を断つのは当然の事だろう。
しかし今回の件、妖精の頭領が言っている事は、別の事が由来らしい。
「赦せる訳が無い!あなたが今の状態でいられるのは奇跡でしかない!庭園の花だって、私一人では今の様にはいかなかった!それだけ酷い状況になったのに、誰が赦すというんだ!」
余程強い憤りがあるのか、樹花族の頭領の説得に聞く耳を持たず拒絶ばかりする。一体過去にどんな事が遭ったのか。しかし、このままでは話が終わらないと感じ、樹花族の頭領は顔を伏せつつベリーの方へと向き直った。その表情は何かを決めたと言う強張った表情だ。
「本当に当然で申し訳ないが、ベリーとやら。もう一度勝負をしてはくれないか?」
本当に突然の申し出に、この場にいる全員が驚いた。何の
「見ての通り、カロンビーヌは納得がいかない様子だ。考えてみれば勝負の方もちゃんと決着の着いてないまま、自分が呼び出した為でもあるからな。ここは互いに納得がいく結果を出す為に、実力を出し切って決着を着けるべきだろう。」
確かに、実は俺もその件には納得が着いておらず、ベリーの行動で引き伸ばされた形ではあった。しかし、ここはちゃんと勝負をし、命を奪うまではせずとも勝ち負けははっきりと分けなければいけない。
勝負を引き受けたベリーには悪いが、相手の様子からもうベリーの手段は使えないだろう。そもそも話をする為の勝負ではあったし、今度は最後までやり通す勝負をしよう。
そしてこの勝負は、俺がやるべきだ。相手ももう俺の存在は気付いているだろうし、ベリーに言って替わってもらう事にする。
「…分かりました。しかし、出来れば血を流す事のないようお願いします。」
そこは重々承知でしている。相手の方も花を汚す事の無い様にと言う。それも分かっていた事だ。それぞれが勝負中のあれこれを確認し合い、ベリーから俺へと意識を入れ替えた。
「んじゃ、さっさと勝負しようぜ。場所は変えるんだろ?」
「…確かに口調もだが、気配も変わったね。いや、『入れ替わった』のかな?本当に変わっているね、君は。」
さっきまで話していたベリーの様子が変わり、その事に動じる事無く様子を観察してきた。こちらも気付いている事は察していたから問題無い。
妖精の頭領は既に臨戦態勢で待機しており、こちらも準備良しという事で向き合ったその時、何故か妖精の頭領ではなく、樹花族の頭領の方が前に出た。その行動に俺だけでなく妖精の頭領も意味が分からないと言いたげな表情となった。
「今度戦うのはカロンビーヌではない。今度君と戦うのは自分だ。」
自分、と言って手を自身の胸に当てた。それは間違いなく樹花族の頭領自身を刺しているという事だ。
樹花族の頭領からの再び突然の申し出に、またこの場にいる全員驚いた。特に妖精の頭領の表情は仲間に裏切られたかの様な衝撃を受けた険しさだ。
「なっアスター!何故あなたが前線に出る様な真似を!?」
「ここは頭領である自分が責任を持って落とし前を付けるのが道理。何よりカロンビーヌ、君は一度戦って体に疲労が貯まっているだろう。ここは休んで待っていたまえ。」
「しかし!…あなただって体が!」
樹花族の頭領の言葉でも引き下がらない妖精の頭領に業を煮やしたのか、樹花族の頭領は目を細め、鋭くして妖精の頭領を見た。
「カロンビーヌ、お前の『仕事』は何だ?」
今まで聞いた中でも低い声を出し、言った言葉自体は質問であるのに、まるで叱りつけるかのような威圧感をこちらにも感じた。
聞いた妖精の頭領は、一瞬肩を弾ませ、冷や汗を流して項垂れながら口をゆっくり開く。
「…花の言葉を聞き、花の気持ちに寄り添い、花の望みを叶える。」
まるで呪文でも唱える様に語る言葉。その言葉を妖精の頭領が言うと、満足げな表情で樹花族の頭領は頷き、樹花族の頭領は前へと出て、妖精の頭領は後ろへと下がった。本当に叱りつけられ、落ち込む子どもの姿に重なる。
妖精と樹花族、二人は揃って頭領だと名乗ってはいたが、こうして見ると実質樹花族の方が立場が上に見える。妖精の頭領の仕事と言うのが何かは知らないが、その仕事が関係して、樹花族に逆らえないのだろう。
樹花族が話す中、妖精の頭領が黙って見守っていたのは、樹花族の頭領からの見えざる圧力があっての事か。
とは言え、やっと戦いで決着が着けられる。事件自体は広範囲の花泥棒という、実際は大規模なものではない。しかし、ベリーを含んだこの場にいる者達にとっては、まるで世界の存亡が掛かっているかの様な事態。
そんな大きくも小さいこの危機的現状をさっさと片付けるべく、戦う場所へと移る為に歩く。その間、俺は気になっていた事を樹花族の頭領に聞いた。
「正直、またあっちの頭領と戦うものと思っていたが、あんたって戦えるのか?」
樹花族は強い魔法の力を持つと同時に虚弱体質であるのは、種族に関しての知識を持つ者としては良く知られる情報だ。確かにこいつ自身の精神は強いだろうが、体の方は着いて来れるのか、そこは少し不安ではある。
だが、そんな俺の心配を他所に、樹花族の頭領は笑った。
「心配しなくても、自分はちゃんと動けるし、あれは過剰に心配性になっているだけだ。気にしないでくれ。何よりも」
言うのを途中で止めたと思うと、俺と正面に向き合い、笑った表情のままに言った。まるで怯えて体を振るわず兎から、突如獲物を見つけ舌なめずりする狼に変化したかの様に。
「未だ本調子とは言わないが、折角の機会だ。遠慮せずに本気を出してくれ。その方が自分にとっても『面白い』。」
言ってから、自分だけ颯爽と戦う為に指定した場所へと移動してしまった。
本当に、儚いのは見た目と雰囲気だけだ。声を言葉を聞いてから感じていたが、あの樹花族は俺と同類だ。体を動かす事、特に戦う事に積極的で、相手が強ければ強いほど悦びを感じる、こういう種類の奴だ。
俺だって、本音を言えば樹花族の魔法がどれほどの物か気になるし、出来るなら戦って確かめたいと思っていた。そして、その機会が訪れた。樹花族の頭領が言った通り、俺は今楽しみで仕方無い。
ベリーの方はただ俺と樹花族の頭領が怪我をしないか心配している様子だった。こっちはこっちで呑気なものだ。
何にしても、恐らくこの屋敷での戦いはこれが最後だ。樹花族の頭領の言った通り、存分に力を出そう。
場所はサンルームの外、比較的自生しているは花が少ない広場。所々に草のしたの地面の茶色が見えている。見ていると庭としてまだ手入れをされていない場所に見えた。
「先に言っておくが、こっちは火属性の魔法を使うが、あんたはそれで構わないか?」
「あぁ、問題無い。先手はそちらに譲ろう。」
手を差し出す様に俺の方へと向け、手番を譲ると言って来た。それが油断から来ている物では無いと分かってはいるが、やられると結構腹が立つ。
こっちから見て明らかに植物に関係した地属性を使うだろう相手に、弱点である火属性の魔法を使うと正直に言ったが、一切焦る様子を見せない。あれだけの啖呵を切った相手だから、焦らないのも当然か。
俺は妖精種の様に魔法の力を視認する妖精の目の様な力は無いが、戦闘経験があり、気配や言動から相手の強さをなんとなくだが計れる。そしてその結果は、手強い相手と感じた、という事だけだ。
肌から感じる魔法の力の流れ、魔法の素人でも感じるであろうその大きさと強さに体が震えた。これは世に言う武者震いと言ったか。どこかの国の言葉だったはず。
無詠唱魔法を使う頭領を威圧で押さえる様な見た目詐欺頭領がどんな戦い方をするのか、ベリーの心配を他所にすごく楽しみだ。
そして同じ気持ちであろう同類と睨み合う中、審判役を
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