第33話 配信をしよう!
月曜日の早朝。
物音で目が覚めたので、リビングに降りると、そこには荷物を持った兄貴がいた。
「起こしたか?」
「んー、うん」
「ははっ、ごめんな。俺はもう寮に戻る」
「うん、次はゴールデンウィークとか?」
「どうだろうな。まあたまに帰ってくるから」
兄貴はそう言ってリュックを背負う。この時間に家を出るって事は朝から授業なんだろうなぁ。
「あれ、昨日の夜帰れば良かったのに」
「……朝型なんだよ」
「どう言う意味?」
兄貴は頬を赤くしながら玄関に向かう。靴を履き、扉を開けた。
「じゃあな、クソガキ」
そう言って兄貴はイジワルな顔で笑った。
…………
………
……
「配信をしよう!」
放課後、熊谷先生に印鑑の押されたプリントを手渡せたと思えば、新星先輩が急に身を乗り出してきた。
「心の準備はできてます」
「俺もいつでもいけますよ」
蛍井と顔を見合わせ、頷き合う。
「収益化するタイミングで初配信。投げ銭も期待できるぞ!」
「初配信は注目されがちだからな。それに生でR2Oの特異点を視聴出来るんだからな、同時接続者数1万も夢じゃない」
「同接が1万って、キラちゃんレベルですよ?」
「初配信バフ込みでの話だ。これから配信を続けることでキラを超える事はあるかもだがな」
配信をあまり見ないので良く分からん。配信見ててどのくらいの人数が見てるとか意識した事なかったなぁ。
「それじゃあ配信日を決めよう。それを元に告知して、待機場所も作るからな!」
「いつにする?」
「そうね、今日はキラちゃんの配信があるし、早くて明日、とかどうかしら」
「おっけ明日ね。配信のネタ何にしよっかな〜」
「告知はどっちのアカウントでするんだ?」
「俺SNSやってないんすよね」
「私はFPS時代のがあるけど、それでも良いのでしょうか」
「良いと思うぞ。アカウント名をR2Oの動画を出してるホタルって事がわかるよう変えてくれ。そうしたら––」
経験者主導の元、配信のための準備が執り行われていく。
この感じは、どこか部活動に似ている気がしたが、そもそもゲーム同好会なのでこの感覚は間違ってないのか。
「––っとまあ後は当日を迎えるだけだな。今日の夜は私の配信でも見てイメトレでもしておくといい!」
「そうします。蛍井、一緒に見るか?」
「ええ。バーチャル部室に集合しましょう」
******
「なんか、あんまり実感がわかない」
『確かに、ここまで来るペースは異様に速く感じられたわね』
放課後の時間帯、R2Oにログインしてボロ小屋の天井を見上げる。
ヴォルが腹の上に乗っかり、尻尾をブンブンと振っているのは、もはや見慣れた光景だな。
『それで、配信のネタはどうするの?』
「とりあえず師匠を紹介したいかな。後は視聴者の人たちに聞きたい事がそれなりにあるから、逆質問コーナー的な」
『なるほど。それならお師匠さんにアポを取りに行かないとね』
「だな。あの広場にいると良いけど」
ベッドから起き上がり、ヴォルを抱き上げる。そのまま外に出て、師匠と出会ったあの広場へと向かった。
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