第17話 バーチャルライバー、ホタルちゃん!
「バーチャルライバー?」
「アバターを画面に映して配信する配信者の呼称だよ。アニメから出てきたような配信スタイルで、2.5次元とでも言うのかな、人気な配信スタイルだ」
「それをホタルがなるってことっすか?」
「キラはそう言ってるな」
キラ先輩はホタルの顔や体をジロジロと眺め、手で触れていく。その手は肩から胸を通り、腰を撫でてお尻を揉んだ。
「ひゃっ……」
「ひゃっだと!? 可愛いなぁ!」
「こら、普通に犯罪だぞ」
クマちゃんチョップがキラ先輩の脳天に直撃し、チョップされた箇所を両手で撫でている。
「うっうん。で、どうかな?」
わざとらしい咳払いをしてキラ先輩はホタルに確認する。ホタルはと言うとジト目でセクハラしてきたキラ先輩を見つめている。
それにキラ先輩がちょっと興奮してるっていう……救えない感じだ。
「でも私自信ないですよ。配信も初めてなのに……」
「いやいや、ホタルちゃん可愛いぞ! アバターが秋葉ちゃんそのままなのは少しまずいがそこは衣装と髪型でカバーできる」
「可愛いなんて言われた事ないですけど」
「なに!? 鏡見たことないのか? 可愛いよな、ドーンくん」
「……え?」
突然振られたのでびっくりして声が出なかった。クマちゃん先生はと言うと話を振られないように空気と同化している。
「可愛い、のかしら……?」
「そりゃ、可愛いだろ」
「……そう、ありがとう」
ホタルはそう言って俺から顔を逸らした。キラ先輩に隠れて表情は見えないが、不快に思ってなければいいけど……
「その表情最高だぞ!」
「バーチャルライバー、やってみようと思います……!」
そう意気込んだホタルは胸を張り、キラさんのような存在感を感じさせた。
…………
………
……
「ホタルちゃんの衣装決めタイムだ!」
「はぁ、俺は会議があるから抜けるが、あとは任せるぞ」
「わかってますとも!」
クマちゃん先生は疑いの眼差しをキラ先輩に向けながらフレンドルームから退出した。
バーチャルライバーとして活動することを決めたホタルだが、アバターを画面に映すことで懸念されるのが身バレだ。
VR機でアカウントを作成する際、アバターも同時に作成できるのだが、クマちゃん先生のようにマスコットのようなアバターにも出来る。
俺はアバターにこだわりがないため髪色こそ変えているが、顔に至ってはデフォルト、つまりリアルそのままだ。
ホタルも俺と同じなのか、リアルとアバターがそっくりそのままで、蛍井を知っている人であればすぐに見分けがついてしまう。
「身バレはまずいからな。衣装や髪型で雰囲気を変えよう」
「はい」
「よしではこっちに来てくれ」
キラ先輩は手招きをしてフレンドルーム内にある更衣室に案内する。キラ先輩が衣装を選んでホタルが着る。俺は見てるだけで良いらしいけど……
更衣室内からは女子二人の話している声が聞こえてくる。あの中に入れるのは女性のみなわけで、性別の壁を感じるなぁ。
「まずはこれだ!」
「おお」
「あんまり見ないで……」
更衣室から出てきたのはミニスカメイド服を着たホタルと満足そうなキラ先輩だった。
「これはR2Oのイメージとは合わないのでは?」
「でもえっちだぞ! な、ドーンくん!」
「ノーコメントで」
キラ先輩はハイテンションで更衣室に戻ると、ホタルも中に連れ込む。しばらくしてもう一度外に出てきた。
「次はチャイナ服!」
「もう、こんなのばっかり……」
えっちだ……
その後もキラ先輩の欲望に塗れた衣装選びが展開され、ホタルは出てくる度に恥ずかしそうな顔をしていた。
見ているだけの俺からしたら役得でしか無いのだが、クマちゃん先生がいないとキラ先輩の暴走は止められそうにない。
「次はどうしようか!」
「あ、俺も選んでいいっすか?」
「おお、ぜひ選びたまえ!」
そこでようやくキラ先輩とチェンジする。ぐったりとしているホタルの今の衣装は着物になっていて、和風美人なホタルには似合っているが、R2Oに合うかと言われれば微妙だよな。
「それじゃあ〜、これかな」
「真剣に選んでくれるわよね……?」
「信頼しろって、相棒だろ」
俺の選んだ衣装を確認し、一人更衣室の中に入る。しばらくするとシンプルな白いワンピースを着たホタルが出てきた。
「なるほど、これはこれで……」
「イメージは湖の精的な。R2Oってかファンタジーな作品なら違和感少ないんじゃない?」
「うん、これにしようかな。ありがとうドーンくん。あとは髪型もそれっぽく……」
ホタルは普段髪をおろしているけど、後ろで結んでポニーテールにする。長めの前髪も少し横に流して綺麗な目がよく見えて眼福だ。
「どう……?」
「めちゃ可愛い」
キラ先輩が何故かニヤニヤしているが、それは無視してこれで衣装は決まった。次の動画からホタルがバーチャルライバーとして登場し、俺と会話する形式で進んでいく事になるのかな?
「次の動画はダイジェスト形式で、起こったことを私が説明していく形式にしようと思うの。どうかな」
「それが良いと思う。編集大変だろうけど、頑張って!」
「ええ」
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