第11話 え、そんな事ある?
「先生が顧問なんですか?」
「まあな。半ば無理やりだったが……」
熊谷圭介先生は数学の教師でうちの担任をしている強面な先生。そんな先生が遠い目をしている。
「遅かったですね!」
「ドタバタしてたんだよ。それで、どこまで説明したんだ?」
「私がキラってとこまでです!」
元気だなぁあかね先輩。先輩と熊谷先生の温度差で風邪ひけそう。
「どうやって活動費を稼いでいるのかも説明したって事か」
熊谷先生はプリントを4枚机の上に、それぞれが手に取れる近さに置く。
プリントには活動概要が書かれていて、同好会においてのルールが書かれていた。
「読み合わせするからプリントを確認してくれ」
「「はい」」
見事に蛍井さんとハモっってしまい、あかね先輩がニヤニヤしながら俺たちを見ている。
「まず第一に、配信の強制はしない。同好会としてなるべく何か活動してほしいが、必ず配信をしろと強制はしないという事だな」
「もちろん配信するってなれば手伝うぞ!」
「そして放課後の部活動時間内に配信はしない。配信する日は顧問に伝え、基本的に1時間前後。配信内容によって時間の延長をしたい場合はこれも必ず報告すること」
「この前黙って3時間配信したら強制的に配信を落とされてめちゃくちゃ怒られたわ!」
「反省してるのか、お前は……」
熊谷先生は頭を抱えているが、あかね先輩は楽しそうにプリントを読んでいる。去年から先輩に振り回されて来たんだろうなという苦労がわかってしまった。
「他にもバーチャル空間にいる間はアカウント名、まあ新星だったらキラと呼ぶ。とか色々あるがわからない事があったらプリントを読むか俺に聞いてくれ。それじゃあ後は新星に任せるぞ」
「いつもみたいにあかねって呼んでも良いですよ?」
「呼んだ事ないだろ!?」
あははと笑うあかね先輩に、めちゃくちゃ焦っている熊谷先生。教壇の上ではあんなに厳しそうで落ち着いているのに……。
ふと横を見ると蛍井さんも遠慮気味に笑っている。笑った顔も可愛いな〜なんて考えていたら、あかね先輩がヘッドセットを四台持って来た。
「二人はSunnyのアカウント持っているだろう? 今日はフレンド登録して解散だ!」
「わかりました」
ヘッドセットを装着し、瞳の虹彩認証によってアカウントのロックを解除。すぐさまホーム画面に移動する。
「春馬くんのアカウント名を教えてくれ!」
「えっと、ドーンです」
「え?」
ん?
「送ったぞ!」
隣の蛍井さんの反応が気になるが、ホーム画面にキラと言うアカウントからフレンドリクエストが来たので迷わず許諾。
するとフレンドルームに招待されたのでそこに移動。フレンドルームとはフレンド同士だけが入れる仮想空間。課金などで手に入れられるアイテムで自分だけの空間を作れると言ったもの。
俺もたまにヤッさんのフレンドルームでだらだらとだべったりしている。
「じゃあ次は秋葉ちゃん!」
「えっと……」
「どうしたんだ?」
「……ホタルです」
それを聞いて俺の配信にコメントをしてくれたホタルさんを思い出す。
でも流石にそのホタルさんじゃないだろ。それこそどんな確率だよって話で……。
「ああ、やっぱり……」
フレンドルームに入って来た蛍井さん、アカウント名ホタルさんは俺を見てそう呟いた。その反応、もしかしてそのまさかなのか?
「いつも配信見てます」
「え、そんな事ある?」
「なになに、どうしたんだ?」
硬直する俺とホタルさん。その周りをあかね先輩、じゃなくてキラ先輩がうろちょろしている構図は中々にシュールだった。
「え、教えてくれないのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます