第12話 配信やってみないか?
…………
………
……
「何だそれは!? 運命じゃないか!」
俺の配信を唯一見てくれていたのがホタルさんだった、と言う事を伝えると、あかね先輩(キラ先輩)は目を輝かせて興奮している。
「こんな偶然あるのね……」
「凄いよな」
「ええ」
R2O内で会話していたホタルさんが、同じクラスの蛍井さんだったなんて、とんでもない確率だな。
え、ラブコメ始まる??
なーんて。
「三人ともフレンドになれたみたいだな」
「お、クマちゃん先生も来たな!」
「「え?」」
クマちゃん先生、もとい熊谷先生がフレンドルームに現れると、格好はスーツ姿のクマさんだった。可愛い。
「アカウント名クマちゃんなんですか?」
「新、キラに無理やりアカウントを作られたんだ」
腕を組んでしかめっ面をしているのだろうが、可愛いが勝つ。もし叱られることがあったらクマちゃん先生の状態で叱られたい。
「クマちゃん先生、この二人運命です!」
「何をいってるんだ……?」
キラさんは俺たちが説明した内容をそっくりそのままクマちゃん先生に伝える。最初こそ驚いた様子だったが、キラ先輩とは対照的に冷静な様子だ。
「……運命だな」
「ですよね!」
「それで、今日はもう解散なんですか?」
ホタルさんがこれ以上脱線しないように話を修正してくれた。ありがとう、俺だったらあの二人の会話に入り込めなかった。
「ああ、そうだな。放課後はここに集まるようにしてくれ。私が数十万かけて作ったバーチャル部室だからな!」
「わ、わかりました」
「あとは同好会での活動だな。今すぐに決めろと言うわけじゃないが、何をしたいとかあるか?」
「俺は R2Oをやる目的で入ったんすよね」
「私はキラちゃんに誘われたので……」
ホタルさんはキラさんファンなんだな。
「ホタルちゃんも R2Oやろう!」
「それが今ゲーム制限かかっちゃってて」
ホタルさんが言うには、以前プレイしていたFPSゲームでチーターである疑いがかかってしまいBANされてしまったのだそう。
チートを使ってないホタルさんは抗議したが、ゲームを運営している会社から報告を受けたVR機の開発元であるSunnyは、四ヶ月間のゲーム制限と言う対応をしたのだそう。
「制限をかけられたのが2月下旬なので7月まではゲームをプレイ出来ないんです」
「なるほど、そうなのか。もちろんチートは使っていないんだよな?」
「当たり前です! 確かにヘッドショット率高かったけどあれは人力ですし、プレイ映像を確認すればチートじゃないってすぐにわかるのにこれだからOCは……」
ホタルさんがぶつぶつと文句を言っている姿になんだかギャップが見えて面白い。OCと言う会社のFPSゲームをやっていたのか。
「なので配信を見ていて、その中でも一人異様な状態だったのが柊木さん、じゃなくてドーンさんの配信だったんです」
「異常ってのはなんだ?」
クマちゃん先生が足を組んで椅子に座っている。もふもふしてそうな足が地面についてなくてとても可愛らしい。
「森の中にいるんです」
「クエストを受けてたんじゃないのか?」
「いや、最初から森の中でした。スタート地点選んでたら落とされて」
「ゲームが落ちたのか?」
「ああいや、物理的に……」
このやりとりヤッさんともしたな。でもそれほどまでにスタート地点から物理的に落とされる事が意味わからんのだろうな。
「……ちょっとドーンくんの映像を見ても良いか?」
「もちろん」
俺は R2Oにログインし、いつもの小屋の中で目覚める。配信にはホタルさんとキラ先輩、そしてクマちゃん先生の三人がいる。
「ここがスタート地点だったんですよ。そして外に出ると」
鬱蒼とした森、気味の悪い鳴き声に、素早く動く大きな物影。いつも通りの風景に、俺はすぐに扉を閉じた。
「そこはどこなの?」
「俺が聞きたいっす」
「……えっと、今すぐ配信をフレンド限定にしてもらっていいか?」
「あ、わかりました」
設定欄を開き、配信設定を通常から限定に切り替え、フレンドのみを選択する。これでこの三人以外は俺の配信をアーカイブ含めて見ることが出来ない。
「……単刀直入に言おう。二人とも、配信やってみないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます