第5話 祝レベルアップ




『スタートと同時に死んじゃうって聞いたことないです』


「ですよね。だからバグかな〜って」


 ある程度木を集めたのでヤリに出来ないか試してみる。先ほど拾った石で先端を鋭くするイメージで削っていく。


「できた」


【不恰好なヤリ】

 木で出来た不恰好なヤリ。攻撃力3


「……」


『まあ初めてなので!』


 ホタルさんのフォローがありがたい。でもこれで武器は出来たし、リーチも伸びた。木の上の実も取れるようになったはず。


『今度は何をするんですか?』


「えっとね、取り敢えずは食糧の確保。水はこれで出せるんすよね」


 そう言ってステータス一覧から【清水】の魔法を表示させる。分かってくれたのか、ホタルさんはコメントから動くスタンプで反応してくれた。


 モンスターに注意しつつ、上も確認しながら進んでいくと、


「んっ!?」


 小屋から100メートル程離れた場所まで来たところで、目の前に大きいトカゲのようなモンスターを発見する。


 コモドオオトカゲをモチーフにしているのか、大きな口から出る舌の動きなどもとてもリアルだ。


『大きいですね…!』


「倒したら食糧になるかな?」


『それは倒してからのお楽しみです!』


 おっけ、ホタルさんもテンション上がってるし、ここはあのモンスターを仕留めたいところ。


 隠密のスキル、【小音足】で足音を小さくしつつモンスターの背後に近づいて行く。装備のおかげもあってか、全く気づかれていない。


「よいしょお!」


 間合いに入り、ヤリを目に突き刺す。どんな生物も目は大体弱点なはず!


「ギェェッ!?」


 目に刺さったヤリを離さず、モンスターの背に乗り、さらに奥まで突き刺す。すると、尻尾をバタバタと暴れ回った後、静かになった。


「倒した!」


『見事なバックスタブです!』


「あれ、バックスタブってなんだっけ?」


『簡単に言えば不意打ちですね。攻撃力にボーナスが加算されます』


 だから攻撃力3のヤリでも倒せたのか。って言うか結構グロかったな。ちゃんと生き物を殺した感覚が残ってる。


【レベルが上がりました Lv1→Lv2】


「お、レベル上がったな」


『おめでとうございます!』


 おお、祝われるの結構嬉しいな。確か今はレベル上限が設定されてあって、マックスは10レベだったかな。そう考えるとまだまだ先だね。


 レベルポイント(LP)も貰ったし、これはSTRとかに使おうかな。どれがどれとかよく分かんないし、一番上のに全振りで。


『え!?』


「どうしました?」


 LPを全振りすると、ホタルさんがコメントで驚きの声をあげている。


『いま全振りしました?』


「あはい、よく分かんなかったので」


『じゃあ聞いてくださいよ! 私に!』


「ご、ごめんなさい……」


 その後のホタルさんからの説明によると、

STR:力の値、DEX:器用さの値、AGI:素早さの値、INT:賢さの値、VIT:生命力の値、LUK:運の値らしい。


 俺が全振りしたのはSTRなので、確かに持っていた荷物が軽くなっている。


『職業によってステ振りは変わりますけど、全振りは……』


「なるほど、じゃあ次からもう少し考えます」


 しばらく間が空き、ホタルさんのコメントが来る。


『ごめんなさい、ゲームをプレイしているのはドーンさんなのに指示みたいなことをしてしまって。ゲームはプレイしている本人が一番に楽しめるべきなのに––』


 まだまだ長文でコメントが続いていたが、要約すると指示厨みたいな事をしてしまってごめんなさいという事だった。


「気にしてないんで大丈夫っすよ。俺もホタルさんのコメント無かったら意味わからんステ振りになって詰んでたかもなんで」


『はい、ありがとうございます』


 スキルを使って倒したモンスターを解体していく。こんな大きなトカゲを解体した事は無かったので、スキルがあって助かった。


『そういえば、鑑定スキルは使ってますか?』


「あ、忘れてた」


【グリーンリザードの肉】

 筋肉質なグリーンリザードの肉。調理可能。


 解体した肉を鑑定してみると倒したモンスターの名前がグリーンリザードだと判明した。そして肉も食べれるらしい。


【解体のレベルが上がりましたLv1→Lv2】


「食糧確保してスキルのレベルも上がった」


『おめでとうございます!』


 おお、やっぱり嬉しいな。まだまだ続けたいところだけど、明日の入学式に遅刻するわけには行かないからな。


「ホタルさん、俺明日入学式なのでそろそろ終わりますね」


『わかりました。でも不用意に個人情報は晒さない方が良いですよ』


 言われて気づいたが、俺もテンションが上がっていたせいでそこんところに頭が回っていなかった。


『実は私もなんですよ』


「え」


『お互い新生活頑張りましょう!』


 優しい人で良かった!





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