第4話 配信ってなんだ?
「お兄ちゃん、R2O面白い?」
夕飯の準備をしていると、弟の夏樹がお皿を並べながら聞いてくる。
うちは今俺と弟の二人で暮らしている。兄は大学の寮、父親は仕事の出張、母親はそれについていくと言った感じ。
元々出張が多く、俺が小学生の頃なんかは引っ越しが何回もあった。
「まだ始めたばっかりだからあれだけど、これから楽しくなるんじゃない?」
「僕も始めようかな〜」
「お前今年から受験だろ?」
「大丈夫でしょ」
夏樹は生意気にもそう言うが、こいつは頭が良い。勉強方面でも、社会生活方面でもだ。
コイツならどんな場所でも、どんな環境でも成り上がっていくんじゃないかという謎の自信がある。
「明日入学式じゃん。クラスでの自己紹介とか決めといたら?」
「もう決めてるよ。いくぞ? 柊木春馬です。好きなラジオ体操は深呼吸です」
「……」
俺のおもしろ自己紹介に声すら出ないのか、夏樹は箸を手渡してくる。
「めちゃくちゃスベッてるよ……」
「え?」
…………
………
……
「よし、じゃあ外に出るか」
R2Oにログインすると、やはり街中ではなく小屋の中だった。小屋にあったベッドに寝ることでここがセーフゾーンだと言うことが証明された。
セーフゾーンの中かつベッドなどで寝ることでHPやMPが回復。セーフゾーン外で寝ずにログアウトすると回復しない。
「セーフゾーン以外でログアウトすると……襲われたり装備を盗まれたりされる」
怖すぎ。
小屋の扉を開けて隠密スキルの【小音足】を発動させる。これでモンスターから見つかりづらくなるはず。
ひとまず目標は食糧の確保。水は魔法基礎で手に入った【清水】でMPを使用こそするが安定している。
「木工と石工は簡単に手に入る木材とか石を加工するスキルとして取ったけど、そうじゃなかったらどうしよう」
隠密のローブに付いているフードを被り、森の中に入っていく。スキルの【罠設置】を取っているので、それで安全に狩りをしたいけど。
「まずは生態系を調べないとだな」
この森には何がいて、何が捕食者としてトップにいるのか。それを知る必要がある。
「罠設置ってなんの罠を設置するんだ?」
レベル1の状態では一つしか表示されていない。ワイヤートラップというものらしい。ロープか何かで獲物を捉える罠だ。
「……俺ロープ持ってないな」
今この罠設置がゴミスキルへと変化した。この先ロープを入手してから使っていくとして、どうやって食糧を確保しようか。
野草や木の実を中心に……。
【ホタルが視聴を開始しました】
急にそう表示されたかと思えば、視界の端に文字が映し出される。
『初見です。こんばんは』
「こんばんは……」
あ、そうだ配信機能。VRが発展していくと共に配信業界も比例して大きくなって、ゲームによっちゃデフォルト設定で配信するようになってるんだっけか。
『これは、 R2Oですか?』
「あ、そうです」
『どこですか、ここ』
「俺が聞きたいっす。どこここ」
コメントをしてくれるホタルさんと会話しながら、地面に落ちている木を回収していく。この木でどうにか武器を作りたい。
「あの、木工スキルって木を加工して武器に出来ますかね?」
『どうなんでしょう…』
配信を見てるだけでプレイヤーじゃないのかな。
『調べてきますね』
「え、いや大丈夫で……」
静止する暇もなく、視聴者が0になる。自分で試してみろって話なんだけどなぁ。ごめんさい。
しばらく木を集めていると、視聴者が1になり、ホタルさんがコメントをしてくれる。
『木工スキルで加工するみたいですね。木の棒だったり板だったり』
「なるほど。木の棒にしてみようかな」
『そう言えば武器は持ってないんですね』
「スタートしたと同時に死んで全部無くなったんだよね」
『えぇ…?』
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