第2話 初めの一歩




「おい話が違うぞ!?」


 VRヘッドセットを外し、俺はこのゲームを進めてきた友人に通話をかける。

 すぐに通話に出た俺の友人、真藤保仁しんどうやすひと。小学校からの付き合いで、俺はコイツの事をヤッさんと呼んでいる。


『どうしたんだよ……』


「どうしたんだよ……じゃない! スタート地点選ぼうとしたら落とされたぞ!?」


『ゲームが落ちたのか? なら再起動すればいいだろ』


「いや落ちるってそう言う意味でじゃなくてだな。物理的に落ちて死んだんだよ」


『はあ?』


 確かに「はあ?」となる気持ちもわかる。わかるが俺が一番「はあ?」と言いたい。と言うか実際ヘッドセットを外した瞬間に言った。


『よくわかんないけど、死んだとしてもリスポーンするから、もう一回起動してみたら? バグだったらそっから報告すりゃ良いだろ』


「……まあ、それもそうだな。じゃあ、R2Oであったらよろしく」


『あいよ』


 そうして通話を切り、もう一度ヘッドセットをつける。虹彩認証によりアカウントにログインすると、もう一度R2Oを起動する。



 瞳を閉じて2、3秒待機して急に景色が変わる事による脳のパニックを抑える。


「……いやどこやねん」


 目を開けるとそこはやはり王国などの街ではなく、どこかの小屋の中だった。天井には俺が落ちてきたであろう穴がぽっかり空いており、雨風は凌そうにない。


「とりあえず外に––」


【ワールド初の墜とされし者を獲得】

【ワールド初の魅入られし者を獲得】

【ワールド初の到達者を獲得】


【合計30SPを獲得しました】


「……なんだ?」


 ゲームアナウンスと共に称号の獲得だろうか、文字の羅列が数秒浮かび上がった。


 ステータスを確認すると、手に入れた称号を見ることが出来る。


「墜とされし者、魅入られし者、到達者。いや、俺まだ何もしてないけど」


 ただスタートした瞬間に死んだだけなのに何故か称号を三つ獲得した。それに伴ってスキルの獲得などに必要なSP《スキルポイント》を30もゲットしたけど……。


 ゲーム開始時には10SP貰えるので、その倍以上のポイントを持ってスタート出来るのは嬉しい。


「外出る前に装備やらステータスやら確認するか……」


******


プレイヤー名 : ドーン Lv.1


HP : 100 MP : 50


STR:12 DEX:12 AGI:12

INT:12 VIT:12 LUK:10


残りSP40 残りLP0


******


「あー、なんだっけこのSTRとかって」


 確か腕力とかスタミナとかのステータスだったと思うけど、ちょっと良くわかんないな。


 ヤッさんにでも聞こうかと思ったけどさっき通話した手前すぐにはなぁ。こういう時街スタートだったらすぐ人に聞けるのに。


「まあ良いや。取り敢えずスキル取ろう。マストになるヤツはまあ大体鑑定だろ」


 SPを1使って【鑑定】を取る。他にも無数にスキルが存在していて頭がパンクしそうになるが、今はステイで。その都度必要になったスキルを取る方向で行こうかな。


「よし、外でよう」


 小屋の扉を開け、初めの一歩を踏み出す。


 外は鬱蒼とした森が広がり、木々の隙間からは、モンスターだろうか、気味の悪い鳴き声が聞こえてくる。


「……おっけ一旦作戦会議」


 開けた扉は10秒で閉じた。

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