Ⅵ
数多の蹄が大地を蹴る音で、ジェイコブは飛び起きた。音のする方を見ると、草原の彼方から大勢の騎手がこちらに向かってやってくるのが見える。遠すぎて、どの陣営の者かは判らない。死に物狂いで走り、近くの森に身を潜めた。
大木の
どうしてこうなってしまったのかと、歯軋りする。王が死に、もう裏切り者のパトリックを追う理由は無くなった。目的を失い、自分が何処にいるのかも分からないまま、ジェイコブは怯え、惑うことしかできないでいた。
自らを奮い立たせようと、ジェイコブは歯を食いしばり、祖国の景色を思い浮かべようとする——石造りの高壁。炎の絶やされぬ見張り台。贔屓にしている酒場の——なんだったか。
そこから先の景色は、まるで霧の中にあるかのように朧げで、陽炎のように曖昧だ。日増しに、故郷の景色が薄れていく。暗闇に裸で放り出されたような心細さに、ジェイコブは歯を食いしばったまま泣いた。
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